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こらぼでほすと 二人12

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「はいはい。じゃあ、ハイネだけカレーな? それ、夜食? おやつ? 」
「夜食。午後から出て、そのまま仕事して三蔵さんたちと戻って来る予定。」
「了解。・・・なあ、ロックオンは、そろそろかな? 」
 かれこれ二週間になる。予定では二週間とニールは聞いている。こちらの用件は終わっている様子だから、そろそろ出発するのだろう。
「そうだな。もうミーティングも終わってるから、あいつ次第だと思う。それほどタイトな予定じゃないから延長するかもな。」
「それはないだろう。さっさと仕事をこなして刹那のところへ帰りたいんじゃないか? 」
「そうかもしんない。」
 ロックオンの携えている仕事も一筋縄ではないから、あちらに時間はかかるだろう。そうなると、こっちでゆっくりしていることもないか、と、ハイネも思い直した。



 夕方、キラたちと入れ替わるように実弟は戻って来た。予定を尋ねると、明後日には出発するという返事だ。
「あっちでミーティングやら何やらあるから、そろそろ休暇は終わりだ。」
 カタロンとの情報交換やら企業体の調査やら、いろいろと案件があるので、そうゆっくりともしていられない。実兄とデートはしたし、言いたいことも言えたから、ロックオンとしては予定通りに動く。次に誰が降下するかまでは確認していない。順当に行くと、次はフェルト辺りのはずだ。
「また、誰か降りて来るとは思うけど? 」
「そうだろうな。・・・・いつもは梅雨時分はティエリアが降りてたんだけど、今回はどうかな。」
「ん? そんなルールあったか? 」
「再始動前の話だ。俺の具合が悪いから、看病がてらに降りてきてくれたんだ。でも、今年からは、それもないはずだしな。」
 気圧変化に身体が対応しなくて、梅雨時分は本宅に監禁状態だった。それで、刹那かティエリアが、その時分に降下して看病してくれていた。それを話すと、ああ、と、実弟も納得する。今年からは、それも酷くないはずだから、心配はされないだろう。
「雨季ってことか? 」
「そう、特区の六月から七月前半が雨季でさ。起き上がれなくなってたんだ。」
「まあ、細胞異常は完治したから、そこまでは酷くないんだろうぜ。そういうことなら、アレルヤたちが様子を見に来るかもしれないな。あいつらは、長期休暇を満喫してるから。」
「連絡つくなら、こっちは元気だって言っておいてくれ。割と雨でも動けるようになったから。」
「了解。」
 以前ほどのことはないので、雨でも動けるようにはなっている。疲れていると、発熱したりするが、それも酷くはなくなった。再々始動まで、どれほど時間があるのか、ニールは知らないが、余計な手間は省いて欲しいとは思っている。今のところ、死ぬこともないから、帰りたくなったら帰ってくればいい、と、考えている。夏にはフェルトが降りて来るらしいから、寂しいということもないし、来月はプラントへ旅行することにもなっている。
「来月、あんた、プラントへ行くんだろ? 」
「ああ、その予定だ。どうしても、レイとシンがプラントを見せたいんだってさ。俺も行ったことがないから楽しみにしてる。」
「そうだな。あそこは鎖国状態みたいなものだったから、俺も行ったことがない。せいぜい、最先端技術の世界を楽しんで来いよ。」
「一般エリアは、こっちと変わらないらしいけどな。トダカさんも行くから多少、軍事エリアにも入るかもしれない。」
「軍事エリアねぇ。・・・あんた、民間人なんだからMSとか観察しなくていいからな? そういうのは関わるなよ? 」
「それは機密事項だから無理だろう。いくら、ギルさんでも、そんなとこは入れてくれないと思うぜ。」
「誰が? 」
「レイの親父さん。現役国家最高評議会議長さんだ。」
「はあ? それ、プラントのトップじゃねぇーか? 」
「ああ、そうだよ。あれ? 知らなかったのか? ライル。レイは、そのギルさんの養子なんだよ。だから、俺も顔合わせしたことがあるぜ? ちょっと変わった人だったけど、レイのことは可愛がってるんだ。」
「・・え・・・」
「『吉祥富貴』っていうのはオーヴとプラントが背後に控えてる。他にも、キラたちに賛同する国家から援助は受けてるんだよ。だいたい、カガリだってオーヴの国家元首だぞ? 」
「それは知ってたけど・・・そうか、そういう繋がりがあるからなのか。じゃあ、あんた、その最高評議会議長様と直接、話ができる立場なんだな? 」
「うーん、レイに頼めば繋げてくれるだろうけど、俺には用事がない。接触するつもりなら、レイかキラに頼めばいい。元々、再始動前に物資の援助とかは、どっちからも受けてたから、ティエリアなら連絡がつけられるはずだ。」
 それは、ロックオンが組織に参加する前の話だ。再始動後は、没交渉になっているが、カガリやレイとニールが繋がっているのだから、そこいらとの接触は簡単なはずだ。
「とんでもない人脈だな? 」
「それは、今更だろ? 刹那とキラが繋がった時点で、そこいらは全部繋がってるんだよ。」
 さらに、ヴェーダだ。組織のバックアップしている影の部分まではロックオンも知らなかった。よくよく考えたら、実兄は、そのキラに拳骨をかましているのだ。
「あんた、最強じゃないか? キラに拳骨してるよな? 」
「カガリにも見舞ってるぜ? あいつら、素だと、とんでもないからな。でも、うちに遊びに来る限りは肩書きなんて関係はない。うちの亭主だって、誰が来ても態度は変わらないし。ただの子供たちが遊びに来てるって認識だから。」
 寺では権威がどうとか、肩書きがどうとかいうことは一切考慮されない。寺の住人にしたら、ただ遊びに来る友人や子供たちという感覚でしかない。ニールにしたって、そういう感覚だ。

・・・だから、日常担当なんだな・・・・

 ロックオンも、それには納得だ。そういう区別や差別がないから、寺では自由に振舞えるし、小難しいことは持ち込まれないから気楽に過ごせるのだろう。刹那だって、おかんのところだと気が休まるというのも、そういうものだ。この世界で、たった一人のイノベーターだが、それを意識せずに過ごすには、寺は最適だ。なんせ、ニールにとって、刹那は、可愛い子供なのだから。脳量子波を使ったとしても、刹那に対する感情は、ただの子供に対するもので、イノベーターだと区別するものではないのだろう。
「晩飯にするか? それとも、風呂に入る? 」
「シャワー浴びてきたから、メシ。」
「はいはい、今日は肉じゃがにした。」
「お、アイリッシュシチューの特区版か・・・楽しみだな。なんか揚げ物が食べたい。」
「揚げ物? 天麩羅とかでいいか? それともトンカツとか? 」
「お、いいね。テンプラ。・・・それは食ったことがある。」
「特区の代表的な料理だもんな。わかった。用意しておくよ。」
 実兄は、台所に向かう。大概のものはリクエストすれば作ってくれるし、きちんと風呂も寝床も用意されている。実兄が、ここで得たものは、たぶん、ロックオンにとっても欲しかったものだ。十数年前に失くしたものが、別の形で眼の前に現れた。その中心で実兄は生きていて、実弟のことも大切にしてくれている。

作品名:こらぼでほすと 二人12 作家名:篠義