ガガーブその向こう側 前篇
※設定のためにキャラクターが一部(?)崩壊しています、ご注意ください。
ギャグです。
「ちい、降ってきやがった」
住宅地の一角、学帽をくい、と上げて空を見る学ランの男がいた。
モスグリーンのシャツを中に着た、長ランの男が。
両手にはサポートのためか、包帯を巻いている。
その様子はさながら喧嘩番長であった。
「ん?」
男が家を出るときにはまだ明るかった空が暗く陰り
そこから小さな雨粒がぽつりぽつりと落ちてくる。
「折角登校時間に間に合うっていう日に、不運だぜ」
ふう、と小さなため息をつきながらも男は歩くペースをはやめなかった。
実は幼馴染に無理矢理折りたたみ傘を持たされていて、
通学カバンに花柄のそれが入っていたのだが、使うつもりもなかった。
そのうち、まばらだった雨量が増えて小雨になり、視界がけぶりだす。
男の学帽や学ランにも雨は降り注ぎ、肩のあたりに染みができていた。
「!」
狭めの路地、ここを抜ければ男の通う高校の門扉、というところで
男は何かに気が付いた。
「にゃ・・・」
それは小さな猫だった。
電柱の脇に置かれた段ボール箱に入って細く鳴いている。
どの位の間そこにいるのか分からないが、明らかに衰弱していた。
「お前、捨てられたのか」
「・・・みゃぁ」
「仕方ねえな」
男は肩に回した手を下ろし、カバンからいくつかのものを取り出した。
まず、花柄の折りたたみ傘。
名前のところに丁寧な字で「ルカ」と書かれている。
「なくしたって言ったら、怒りやがるんだろうな」
いつも自分のことを心配している3つ下の幼馴染が
傘をなくしたことよりも、喧嘩に巻き込まれたのではないか、とか
傘がなくて濡れてはいまいかと怒る姿が容易に想像できた。
幼馴染を心配させたくはなかったが、目の前の子猫を見殺しにするのも気分が悪いと
男は子猫のために傘を開いて段ボールにかけてやった。
次に、男は体操着を取り出して、ためらいもなくびりびりと破き始めた。
「ほら、拭いているんだ、おとなしくしろ」
「にゃ?」
破った片方で子猫を拭いてやり、残った方は毛布代わりに段ボールに敷き詰めた。
「よし、これで大体OKだろう」
「にゃあにゃあ」
「ああ?お前ここまでしてもらって餌までねだんのかよ」
「にゃおにゃお〜ん」
子猫は冷たい雨から逃れて、大分生気を取り戻していた。
自分に優しくしてくれる人間に、出来るだけ強請っておこうというのか、
段ボールから身を乗り出して男に鳴き続けた。
「はぁ、これは今朝ルカが持たせてくれた弁当だが・・・」
男がしぶしぶ弁当箱をカバンから出すと、子猫の鳴き声は一層大きくなった。
「わかった、そんなに欲しいならお前にやるよ」
男はピンク地に茶色の水玉模様の弁当箱をあけて、子猫の前に置いてやった。
「ああ、そんなにがつがつ食うんじゃねえ
のどに詰まったらどうすんだ」
子猫が弁当を夢中で頬張る様子を見て、男はかつての自分を思いめぐらせた。
(俺も弱かったときはこんな風に縋ったっけな)
男は天涯孤独で、気付いた時には同じような子供たちと孤児院にいた。
その後、運よく引き取られたが、それまでの数年間はこの子猫のような酷い暮らしだった。
(あの時おやじさんが来てくれなかったら、俺もまだここにいたのか?)
キーンコーンカーンコーン
「!!」
キーンコーン・・・・
「おいおい、もうそんな時間かよ」
そう言った次の瞬間、男は踵を返して風のように走っていた。
ギャグです。
「ちい、降ってきやがった」
住宅地の一角、学帽をくい、と上げて空を見る学ランの男がいた。
モスグリーンのシャツを中に着た、長ランの男が。
両手にはサポートのためか、包帯を巻いている。
その様子はさながら喧嘩番長であった。
「ん?」
男が家を出るときにはまだ明るかった空が暗く陰り
そこから小さな雨粒がぽつりぽつりと落ちてくる。
「折角登校時間に間に合うっていう日に、不運だぜ」
ふう、と小さなため息をつきながらも男は歩くペースをはやめなかった。
実は幼馴染に無理矢理折りたたみ傘を持たされていて、
通学カバンに花柄のそれが入っていたのだが、使うつもりもなかった。
そのうち、まばらだった雨量が増えて小雨になり、視界がけぶりだす。
男の学帽や学ランにも雨は降り注ぎ、肩のあたりに染みができていた。
「!」
狭めの路地、ここを抜ければ男の通う高校の門扉、というところで
男は何かに気が付いた。
「にゃ・・・」
それは小さな猫だった。
電柱の脇に置かれた段ボール箱に入って細く鳴いている。
どの位の間そこにいるのか分からないが、明らかに衰弱していた。
「お前、捨てられたのか」
「・・・みゃぁ」
「仕方ねえな」
男は肩に回した手を下ろし、カバンからいくつかのものを取り出した。
まず、花柄の折りたたみ傘。
名前のところに丁寧な字で「ルカ」と書かれている。
「なくしたって言ったら、怒りやがるんだろうな」
いつも自分のことを心配している3つ下の幼馴染が
傘をなくしたことよりも、喧嘩に巻き込まれたのではないか、とか
傘がなくて濡れてはいまいかと怒る姿が容易に想像できた。
幼馴染を心配させたくはなかったが、目の前の子猫を見殺しにするのも気分が悪いと
男は子猫のために傘を開いて段ボールにかけてやった。
次に、男は体操着を取り出して、ためらいもなくびりびりと破き始めた。
「ほら、拭いているんだ、おとなしくしろ」
「にゃ?」
破った片方で子猫を拭いてやり、残った方は毛布代わりに段ボールに敷き詰めた。
「よし、これで大体OKだろう」
「にゃあにゃあ」
「ああ?お前ここまでしてもらって餌までねだんのかよ」
「にゃおにゃお〜ん」
子猫は冷たい雨から逃れて、大分生気を取り戻していた。
自分に優しくしてくれる人間に、出来るだけ強請っておこうというのか、
段ボールから身を乗り出して男に鳴き続けた。
「はぁ、これは今朝ルカが持たせてくれた弁当だが・・・」
男がしぶしぶ弁当箱をカバンから出すと、子猫の鳴き声は一層大きくなった。
「わかった、そんなに欲しいならお前にやるよ」
男はピンク地に茶色の水玉模様の弁当箱をあけて、子猫の前に置いてやった。
「ああ、そんなにがつがつ食うんじゃねえ
のどに詰まったらどうすんだ」
子猫が弁当を夢中で頬張る様子を見て、男はかつての自分を思いめぐらせた。
(俺も弱かったときはこんな風に縋ったっけな)
男は天涯孤独で、気付いた時には同じような子供たちと孤児院にいた。
その後、運よく引き取られたが、それまでの数年間はこの子猫のような酷い暮らしだった。
(あの時おやじさんが来てくれなかったら、俺もまだここにいたのか?)
キーンコーンカーンコーン
「!!」
キーンコーン・・・・
「おいおい、もうそんな時間かよ」
そう言った次の瞬間、男は踵を返して風のように走っていた。
作品名:ガガーブその向こう側 前篇 作家名:なぎこ