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【サンプル】このあと滅茶苦茶セックスした(今回のオチ)

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「で、具体的には誰に聞きに行くの?」
 自室から廊下に出た私たちではあるが、まずはどこに行くかを決めなければ話にならない。
「うーん……」
 愛宕は人差し指を頬に当ててしばし考えた後、口を開いた。
「こういうときはやっぱりまずは提督かしらねぇ?」
 うちの提督はいわゆるエリートコースの人間ではなく、新兵の頃から今に至るまでの数十年を海の上で過ごした叩き上げである。数多の戦いに参加し、授けられた勲章はいったいいくつか。その勇猛な戦いぶりは民間人にも知られているほどだ。
 そんな軍神のごとき活躍ぶりとは裏腹に、提督は私たち艦娘をむやみに怒鳴りつけたりなどは決してしない。もちろん訓練ともなれば厳しく叱りつけることもあるが、普段は温厚そのもので、私たちの相談などにも乗ってくれるとても気さくな人だ。
 普通の女の子になりたいなどというぼんやりした悩みでも提督ならきっと嫌な顔一つせず聞いてくれるだろう。
「でも提督なら昨日『メガネっ子ばかりが増えてボクっ子が増えないのは納得がいかない』って言って軍令部に出張してしまったわよ」
 しかし、軍艦の中でずっと過ごしてきた反動だろうか。提督は極めてフェティッシュな一面を覗かせるときがある。セクハラまがいのボディタッチなども日常茶飯事だ。本人がいい人なのであまり気にしている艦娘はいないが、これがなければ完璧だとは多くの艦娘が思っている。
 先月は確か『スカートばかりでなくホットパンツも増やすべき』だとか言って出張したんだっけ……結果的には『陸軍としては海軍の提案に反対である』と言われて断念したはずだ。きっと今回も同じ結果に終わるだろう。そのうちしょんぼりとしながら帰ってくるに違いない。
「そっかぁ……じゃあいかにも普通の女の子って感じなら、やっぱあの子かしらね」
 どうやら愛宕には提督の他にも行くあてがあるらしい。
「あの子って?」
「うふふ、それは会ってからのお楽しみよ」
 愛宕は含み笑いを浮かべながら歩き始めた。
 なんだか妙に意味ありげだが、何を考えているんだろう? 何も考えていないような気もするけど……まあいい、とりあえずついて行こう。
 そのまま愛宕について廊下を歩き、階段を降り、玄関から出て数分後。
「愛宕、お邪魔しまーす」
 たどり着いたのは駆逐艦寮だった。
 ってことは駆逐艦娘の誰かに聞くってことね。
「お邪魔します」
 私も愛宕に続いて駆逐艦寮の中に入った。
 しかし私たちの相談に乗ってくれるような子が駆逐艦娘にいただろうか? 逆に相談に乗ったことなら何回かあるんだけど。『どうやったら髙雄さんみたいに胸が大きくなりますか?』とかね。そればっかりは私ではなくイラストレーターか田中Pに聞いてほしい。
「あ、いたいた。おーい、漣ちゃーん」
 愛宕は早速お目当ての子を発見したようだが……漣さん? 提督をご主人様と呼んじゃうような子が普通の女の子だとは思えないけど、最近の子にとってはそれが普通なのかしら?
「おや、こんにちは、愛宕さん。髙雄さんも。珍しいですね、重巡のお二人が駆逐艦寮に来るなんて」
「ええ、実は私たち、漣ちゃんに教えてもらいたいことがあってね」
「漣にですか? いったい何を?」
「それはね――」
 愛宕がこれまでの流れを漣さんに説明した。
「はあ、なるほど、普通の女の子ですか……でも、自分で言うのもなんですが、漣って普通の女の子に見えます? もっと他に適任がいるのでは?」
 あんまり普通っぽくないこと、自覚してたのね。
 それはともかく、確かに漣さんの意見はもっともだ。普通の女の子っぽい子なら他にもいそうだけど、どうして愛宕は漣さんを選んだのかしら?
「そういうところがいいのよねぇ」
 愛宕は満足げにうなずいて、続ける。
「自分は変わり者だと思っている漣ちゃんだからこそ、普通の女の子がどういうものなのか、他の人よりわかっているはずよ」
 なるほど、愛宕の言い分には確かに一理ある。
 人は誰しも自分にはないものに憧れるものだ。だからこそ、変わり者だと自覚している漣さんは普通の女の子というものに憧れているのではないか。普通の女の子がどういうものなのか、他の人よりもはっきりとしたイメージを持っているのではないか。愛宕はそう考えたのね。
「さあ、教えてちょうだい。もし漣ちゃんが普通の女の子だったらどうしたい?」
「うーん……漣が普通の女の子だったら……」
「普通の女の子だったら?」
「学校の……同じクラスの男の子に恋しちゃったり、彼とちょっと目が合っただけでドキドキしちゃったり」
「うんうん」
「でも告白する勇気が無くて、それでも好きな気持ちはどんどん抑えきれなくなって」
「それでそれで?」
「文化祭の最後に一緒にフォークダンスを踊ったときに『この後、大事な話があるの』って言って」
「ついに!?」
「人気の無い校舎裏で彼に想いを!」
「告げさせると思ったかぁ!」
 パァン! と乾いた音が響いた。突如として愛宕が漣さんの頬を平手打ちしたのだ。
 何やってんのこの子!?
「あ、愛宕さん!? 突然なにを……」
 うろたえる漣さんに追い打ちをかけるがごとく、愛宕は声を荒げる。
「そんな普通の女の子みたいなことを言ってて、ただでさえ数が多くて競争が激しい駆逐艦業界で生き残っていけると思っているの!?」
 いや、普通の女の子だったらどうしたいのか聞いたのはお前だろ。つーかなんだよ駆逐艦業界って。
「もっと自分のキャラを貫き通しなさい! キャラが薄すぎて話題にすら上らない(検閲)みたいにはなりたくないでしょう?」
 おいやめろ。(検閲)のファンに刺されるぞ。
「愛宕さん、漣のことをそこまで考えて……ありがとうございます! 目が覚めました!」
 漣さんは目に涙を浮かべている。
 そんなに感動的なシーンだったかな……?
「漣はこれからもぶれずに痛い子キャラを貫いていきます!」
「ええ、精進なさい」
 そんなキャラ、貫かない方がいい気がするんだけど……本人がそれでいいなら、私からは何も言うまい。正直ついて行けないし。
「では私たちは次の目的地に向かうわ。私の教え、ゆめ忘れないようにね」
「はい! 肝に銘じます!」
 力強く敬礼する漣さんに見送られて、私と愛宕はその場を後にした。