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はろ☆どき
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輝ける水の都【夏コミ86新刊】

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§§ Due §§




「君が無事に戻って来るのを待っているよ」
脳裏にあの時のロイの眼差しと言葉が蘇る。
「待っているよ……」
これは夢だ。目を覚まさなければ。
エドワードは夢の中で必死に目を覚まそうともがいていた。
ロイのあの眼差しから逃れるために。
ぱしゃん、と耳の奥で水の跳ねる音がする。この音は夢だろうか現だろうか……。



「おう、坊主ども。そろそろ見えてくるぜ」
船頭に声をかけられ、エドワードとアルフォンスは揃って進行方向へと目をやった。
船が行く手に張り出している小山をゆっくりと回り込むと、だんだんと目指していたものが二人の視界に映り始めた。
湖水地方へ向かうため、二人は連なる山々の一番麓の村まで丸一日かけて列車で辿り着いた。そこから先は馬車か歩きかと考えていたのだが、かなり入り組んだ山が連なっているため目的地まで行ってくれるような馬車などなく、ましてや徒歩ではかなり日数を要してしまうと判明した。
村人達は行商などで奥の村や町へ行く時は、湖と湖を繋ぐように流れる川を船で行くのが一般的だという。そこで一番奥のヴィエナーレまで荷を運んで行くという船の船頭に、荷物の片隅でいいから乗せてもらうよう頼み込んだのだ。もちろん礼の金は多分に前金で払った。国家錬金術師に与えられる特権の一つである過分な研究費がこんな時に役立つ。
最初はこんな子供が何故そんな大金をとか、あんな山奥の町まで行くのに積荷以外のものを乗せる余裕はないとかあれこれ渋っていた船頭も、最終的には欲に負けたのか首を縦に振った。とはいえ、元来人が悪い質ではないらしく、この辺りが初めてだという二人にあれこれ指差しては解説してくれるというサービス付きだった。
船旅を始めた最初こそ、この一帯が湖水地方と呼ばれる所以である山間に点在する湖の数々に、二人して物珍しく右を左をと指差したり覗き込んだりしていた。しかし、かれこれ数時間も変わり映えのない山の連なりと蛇行した緩やかな水の流れの繰り返しという景色に、二人とも話すこともなくなり黙って座り込んでいる状態だった。
あまりの長閑さに、時々うつらうつらと首を傾けていたエドワードだったが、船頭の声に最初はぼんやりと向けていた目をぱちりと瞬きして大きく見開くと、思わず船縁から身を乗り出して前方を覗き込む。
「うわぁ。これはすごいね、兄さん」
さほど大きくもない荷運び用の船上で、目一杯積まれた行商用の品々の隅に行儀よく身を寄せていた弟が、遠慮気味に身体を傾けて船首の向こうを覗き込みながら感嘆の声をあげた。
「ああ――。聞いてはいたけど想像を超えてる……百聞は一見に如かずってやつだな、こりゃ」
彼らの行く手に現れたのは、巨大な湖の真ん中に浮かぶ町だった。円形の外壁の至る所から水が流れ出ているその上に建物があるので、文字通り水に浮いているように見えるのだ。そここそが今回のエルリック兄弟の目的地、湖水に浮かぶ町ヴィエナーレの姿だった。
「おいおい、あんまり同じ方向に寄るなよ。船が傾く。特にそっちの……鎧で重そうな方」
船頭は辛うじてエドワードの禁句に触れることなく、目の前の光景をぽかんと眺めている二人に注意を促した。そう言われて一応体勢を元の座位に戻し、しかし目は前方を見つめたままの二人の姿に、船頭は笑いながら陽気に言った。
「中に入るともっと驚くぞ。ようこそ美しき輝ける水の都、麗しのヴィエナーレへ!」



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La storia segue un libro…