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凌霄花 《第四章 身をつくしても…》

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「へ? なんで? どうする気?」

「お孝と新助に頼んで住む場所探してもらうんだ」

「なんで? ここに居ればいいじゃない」

「ダメだ。こんな色男がいたら、助さんの身体の毒になる。そうだよな?」

 助三郎は盛大に頭を縦に振った。

「悪いがそのとおりだ。俺の身が持たん。由紀さんが早苗って呼ぶだけでなんか、もう……」

「よし、早苗。お前のためにあの奥手を焦らせてやろう」

「へ?」

「俺に任せとけ」

 そう言うと由紀は早苗の肩を抱き寄せた。
早苗は言われた通り、由紀に身を任せた。

「早苗! 離れろ!」

 早苗はこの時、以前お孝に聞いた『焦らす』というのがこういうことなのだと学んだ。

「奥手男がいっちょまえに嫉妬したぞ。よし、早苗、いまだ! 今晩のおねだりだ!」

 早苗はその場のノリで助三郎の手をぎゅっとにぎり、精一杯可愛く言った。

「今晩、おねがいしてもいい?」

 初めての妻からのおねだりに、助三郎は真っ赤になって固まってしまった。

「よし、上出来だ。頑張れよ」





 由紀の出立の準備を手伝う早苗は、何度も同じことを聞いた。

「本当に出ていくの?」

「あぁ。邪魔ものは消えなきゃね。お前はやっとこさ幸せを手に入れたんだ。無駄にするんじゃない」

「でも、やっぱりわたし、与兵衛さんと話してくるわ。何かの誤解かもしれないし」

 いままで付き合ってきた与兵衛を見れば、由紀を裏切るなどあり得ない。
 なにかあるはず。それを知りたい。由紀を助けたい。
 しかし、由紀はその申し出を断った。

「ありがとな。でもいい。余計傷つくのが落ちだ」

「由紀……」

「昼にはちゃんと出ていく。だから、早苗」

「なに?」

「格さんに、下帯の締め方教えてくれって伝えてくれねぇか?」

 早苗は恥ずかしさと怒りの余り男に変わり、由紀の胸ぐらをつかんだ。

「なんだと?」

「何怒ってる? いいから、早速教えてくれよ。な?」

「絶対に嫌だ! お前俺の裸見たいだけだろ!?」

「おっと、見てほしいなら見てやってもいいぜ」

「黙れ! ドスケベ!」

 早苗はとうとう由紀に手を上げた。
相手が男の姿だからと容赦しない早苗。一方、男になったからと面白がって喧嘩を買った由紀。
 二人の取っ組み合いの喧嘩が始まった。

「おい! 何やってる!?」

 騒ぎを聞きつけた助三郎、止めに入った。
しかし、両人に拒まれた。

「お前は黙って見てろ! このドスケベ女に目に物見せてやるんだ!」

「そうだ助さん。俺はこのいつまでたっても男に慣れないふりしてるかまとと女に制裁を下してやるんだ!」

「もう意味がわからん! 勝手にしろ!」

 結局、水戸一の使い手である早苗が勝利し、下帯の付け方指南は助三郎がすることとなった。
 しかし昼には二人ともしっかり仲直りし、気持ちよく由紀を送り出したのであった。


 夕餉の後、早苗はあるものを眺めていた。
それは、義姉からもらった夫婦円満に効くという秘薬。
 せっかく由紀が気を利かせ二人きりにしてくれたのだ、自分自身も努力せねば。
そう決心した矢先に思い出したのがこの秘薬だった。

「えっと? 半分にすればいいのね?」

 普段ならば説明書はしっかり読む性格の早苗。
気が急いていたのか、義姉の贈り物ならば安心だと気が緩んだのか、なぜかこの時、最後までしっかり読まずに放ってしまった。

 湯飲み二つに秘薬を分けて入れ、湯を注いだ。
甘い優しい香りに嬉しくなった早苗はにっこり笑った。

「今夜こそ!」

 この秘薬が少々厄介な事態をことを引き起こすとは、早苗はこの時夢にも思わなかった。