空想の戦場
一四〇〇。術士を中心としてイシュヴァールへの総攻撃が始まった。
ロイの隊は南側から街へ入った。向かってくる全てのものを焼き、その背後にぴたりとついたヒューズが、無防備になるロイの背中を守った。
「面倒だ、一度に片付けるから兵を下がらせろ」
「はいよ」
ヒューズが後退の指示をする間、ロイは瓦礫の詰まった広場まで突っ切って、巨大な光を作り出したそれが次第に形を現すと、光は炎の龍となって空を舐めながら地上へ落ちかかった、その時。
がら空きになった彼の背後から敵兵が二人、躍りこんで発砲した。一つは反れたが、一つはロイの左脚に当たり、血がしぶいた。唸るような声を上げて横倒しになった所へ、走り寄った敵兵はロイの頭に狙いをつけた。撃鉄を起きて、恨みのこもった眼がロイを見据え、引鉄を
「ロイ!」
銃声はあったがロイには当たらなかった。代わりに、敵兵の血が目に入った。間一髪でヒューズのナイフが敵兵二人を仕留めたのだ。助け起こそうと伸ばされたヒューズの腕を掴み、自分の方へ引き倒す。コントロールの崩れた炎が落ちてくる。逃げている暇はない。
「そのまま伏せろ、耳を塞いで息を―」
詰めろ。そう言う前に、ヒューズはロイを体の下に抱え込んた。
「ばか、どけろ、危」
「うるさい」
轟音。
体が千切れるほどの衝撃。
風。
そして …雨。