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タイトル(仮)

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始まりはいつもの閑古鳥が鳴く万事屋だった。

「もう、銀さん!いい加減に仕事しないと冷蔵庫には何もないんですけど!」
「マヂでか。やべーなオイ、じゃあ、お前ん家の門生になるわ」
「いや、マカダミアナッツあんたにだけはやらねぇよ!?」 
「銀ちゃんー、たまにはお腹いっぱい食べたいヨー」


当たり前だが、ハァと溜息を吐いてもそれが食えるモノになるわけでは無く、あと数時間して時計がてっぺんを回れば、神楽のお腹から大きな虫の鳴き声が聞こえるのは目に見えていた。


「銀さん…」
「……っつってもそんな都合よく依頼なんかこねぇよ!朝飯はあっから、昼はババアんとこ行ってなんか食わせて貰ってこいよ!」

ジト目でこちらを見てくる子供達を視界の端に避けて銀時はテレビをおもむろにつけた。


【──で、真選組が調査を開始した模様です。では、続いて結野アナのブラック占いのコーナーです。結野アナー?「はーい」】
「あー、やっぱり結野アナは癒やしだわ!」
「占いでお腹は満たされませんけどね」
「そうアル」


子供達の嫌みを我関せずに太陽のように眩しい笑顔で銀時が愛するお天気お姉さんは言った。

【今日のブラック占い。一位はてんびん座の貴方!とくに天然パーマで死んだ魚のような目をしてる貴方には今日は懐かしい人との再会が訪れます!それではみなさん、今日も元気にいってらっしゃーい!】

いつものように敬礼をしてブラウン管の彼女にいってきますと元気に告げる銀時に新八が、小さくどこにだよ、とため息混じりに零した。


「ほら、神楽ちゃんも顔を洗っておいで」
「ふぁい…わかってるヨー」
「新八、飯よそっとくぞー」
「あ、銀ちゃん!私の昔話盛りにして!」
「だが断る!ほれ、早く顔洗ってこい。涎ついてんぞ」


まだ夢の中が恋しいのか瞼をこする神楽に視線だけ洗面所へと見送ってから、新八は新聞を取りに玄関へ向かった。


──カサッ


新聞を引き出したときに玄関に落ちた真っ白い封筒を拾い上げて、宛先や後ろの名前などを確認してから新八は封を開けた。

「新八ー、早く食べたいアルー」
「なに、玄関に突っ立ってんだ?一面でお通の電撃結婚記事でもやってんのか!?」
「そんなの許しませんよ!!って、そうじゃなくて依頼です!」


悲しいことに閑古鳥の鳴く万事屋にとって、ただの封筒が札束にも思えた。(新八談)


「まじでか!で、内容は!?」
「家出息子の捜索願いです」
「…そんなもん警察に頼めよメンドクセー」
「そんなこと言える余裕がどこにあるんですか」
「めんどくせーアルナ。ケッ、ご飯食べたらとっとと探しに行くネ!」


ぶつくさと文句は言うが、彼女も一応家計の苦しさはわかっているので素直に頷き、再度新八を見上げた。


「うん、ご飯食べよっか」
「いただきます!」
「「いただきまーツとご飯を食べていく神楽を横目に銀時は受け取った依頼の手紙を訝しげに見つめた。


──万事屋さんへ──


「新八、お前今日、稽古の日だろ。大丈夫なのか」
「今日は姉上にお願いしておきますよ」
「…そうか」


いつもと様子の違う銀時に違和感を感じたが、食べ終えたのか咀嚼しながら顔を洗いにいった神楽に気を取られ、再度銀時を見ればそこには普段の彼がいた。


「結野アナ曰わく、今日は洗濯日和だとよ」
「あ、ほんとですか?来るとき雲が多かったんで少し不安で」
「またあのバカ共が術の掛け合いしてなければ天気は崩れねぇだろ」
「ですね。じゃあ干してから家でますか」


朝の片付けを終えれば、主夫の鏡のように家事をこなしていく新八を横目にジャンプを広げた銀時は先程の封を乱暴にズボンのポケットに突っ込んだ。



──依頼人、谷潜蔵ねぇ──


覚えはないが、どこか喉元に小骨が引っかかったような僅かなもどかしさがあった。





***


「無事、万事屋に届けました」
「ご苦労さん…」


朝っぱらから閉め切られた部屋はまだ薄暗く、文を届けたという男は褒美をねだるつもりなのかへこへこと笑いながら部屋の主に近付いた。


「前、あんたに買い取ってもらったあの会社も工場も何に使うつもりかは俺は知らねぇよ。けど、真っ当な使い道じゃねぇことは寺子屋通ってねぇ俺でもわかるんですぜ」
「だからなんだ?」
「いえねぇ…」
「ククッ…この俺を脅すってか」
「へへっ、滅相もない!そんなつもりじゃねぇですよ!」


調子のいい男を冷めた目で見つめてから、部屋の主はスッと立ち上がって襖を僅かに開けた。


「帰りに持たせてやるよ」
「!なんか悪いね旦那ぁ」


機嫌良さそうに帰って行く男の背中を見送ってから、男と入れ違いで入ってきた女が楽しそうに笑った。


「誰も【金を】持たせてやるなんて言ってないのに…バカな男ッスね」




***


黄色のテープを潜ってから土方は鼻をすんっと吸って眉をひそめる。

「下手人は」
「それが相当の手練れのようで太刀筋は迷いがなく…手がかりも…」

報告をする山崎も辺りを漂う死臭のせいか険しい顔をしてから、視線を遺体に移した。

そんな二人に普段の人を小馬鹿にしたような笑みはどこぞにいったのか眉間にしわを寄せたまま沖田が近付いてきた。 

「殺害された人物がわかりましたぜ。名前は、坂上伊作。こないだまで町外れにある会社の経営者だった男でさァ」
「なにかその男に変わったことは?」
「特に。周りの証言を聞くと、かなり金の亡者だったらしくて毎晩金庫の金数えるのが日課だったらしいんですが…数ヶ月前に経営してた会社を工場ごと売り渡してますねィ」
「会社の買い取り人は」
「谷潜蔵っていう不動産経営者でさァ。ところが買い取ってから何にも手をかけてねぇから今じゃ不良どもの巣になってるそうですぜ」


─谷潜蔵─


「総悟はそれをそのまま近藤さんに伝えろ。山崎は四番隊と十番隊に周辺の捜査徹底するように言ってこい。まだ犯人は近くにいるかもしれねぇ」
「わかりました」
「土方さんは?」
「俺は遺体をもう一度調べてから近藤さんと合流する」


各々が散ってから、土方は仏となった伊作を見下ろして煙草に火をつけた。

「谷潜蔵……」


土方の記憶にある真選組内の資料を振り返っても、そんな名前は見当たらない。片栗虎との接待で顔合わせた覚えもない。


「嫌な予感ほど当たるもんだ…」



***


「そうか…」
【桂さん…】


部下たちの報告に桂は険しい表情をしてから、昇りゆく日の光に目を細めて小さく笑った。


「お前たちは関係のない問題だ。俺だけがゆく」
【桂さん!!】
「俺らも戦いますよ!」
「そうですよ!」


ざわつく部屋に桂が鞘をコツンと床に当てれば、一瞬で静まった辺りを見渡してから桂は言葉を続けた。


「そろそろ決着を着けねば、申し訳が立たんのだ。…このままでは、あちらで会わす顔がない」


それが誰かは言わずとして、部下たちはなにかいいたげな何か言いたげ表情に桂は苦笑してから、刀を抜いた。


「この刀に誓おう。生きて戻ると」



***



万事屋が息子の捜索を開始してみれば、最終的に一つの会社が浮き出てきた。

作品名:タイトル(仮) 作家名:遊兎