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タイトル(仮)

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「聞いた話だと、今じゃ不良たちの溜まり場になってるらしいです」
「ハム子のときみてぇにややこしいことになってなきゃいいけどな」
「アレは本当に面倒だったアル」
「いや、普通に会話してるけど公子だから」


江戸の町外れにある此処は近々取り壊しが決まっているのか建物の周りにはフェンスが立てられており、無理やり開けられた穴や伸びっぱなしの雑草が自然と目に入った。
大きな工場と隣接させている会社だったために、その広さを思えば頭痛がした銀時だったが深い溜息を吐いてからおしっ、と気合いを入れて先に工場から調べようと中に入っていった。

「谷潜蔵さん!どこですかー」
「お家でパピーが待ってるヨ~」
「とっとと出てこい!親不孝息子!」

口々に叫びながら数時間ほど工場内を捜索するが、潜蔵どころか人っ子1人おらず銀時たちは会社の入り口に目を向けた。


「こんだけ探してもいねぇんだ。ガキ共がシコシコやってやがんのはビルの中か」
「そこまで高いビルじゃないのが救いですかね」
「なんかムカつくから潜蔵殴ってもいいアルカ」
「よし」
「よし、じゃねぇよ!」



繋がる扉は不良たちのせいだろうかドアノブが無惨にも破壊され、風がキィキィと開閉を繰り返していた。


「なんか、お化けとかでそうアル」
「か、かかか神楽ちゅわぁん!?やめよう?そういうのやめよう?僕ら真剣に人探しに来てるわけだしさ!ね!」
「まぁ、こういう廃れたビルとか出るっていうもんね」
「し、新八くんまで!」
「「じゃ、行きましょうか(行くアル!)」」


ひきつった表情の銀時を2人して腕組みして逃げようとするのを止め、まずは地下から捜索しようと階段を降りていけば鉄の臭いが鼻を掠めた。


「ッ!?」
「お前ら、ちょっと待て」


錆びた鉄とカビ臭い部屋の空気に混じって僅かな金属音と澱んだ嫌な臭いがした。


「ガキ共の喧嘩場にでもなってんのか?」
「…血の臭いがするアル」


鼻をスン、とならして神楽が半歩足を引いて構えれば、銀時が眉間に皺を寄せた。


「この下の階か」


銀時が腰元の木刀を抜いてから下の階をのぞき込めば、見慣れた黒が目に入った。


「真選組…!?」



***


山崎が谷潜蔵について調べていく内に段々と浮き彫りになっていった問題をあげていくと、攘夷志士の一斉検挙に繋がる重要な情報が入ってきたため、真選組総員を出動させて、谷潜蔵のものである会社に潜入した。


「みんな、いつ敵が現れるか分からん。油断はするなよ」
「おう」


近藤が真剣な表情で告げれば、隊士達も各々に頷いてから腰にある刀に手を掛けていつでも抜けるように構えながらビルの捜索を開始する。


「戦いもビルの形状を理解して戦わねぇと不利になるぞ。頭んなかに入れとけ」
「トシ、情報は確かなんだろうな」
「嗚呼、山崎張らせて得た情報だ」
「はい。谷潜蔵を調べている内に掴んだものですが、出所から信頼できる情報だと」
「土方さん、奴さんの生け捕りは期待しねぇでくだせぇ」
「……あぁ」
「じゃあ、ここらで複数の部隊に分かれ…避けろォ!」
「!!?」


各部隊に分かれようと近藤が指示を下そうとした瞬間、視界にキラリと光るものが目に入り避けきれなかったそれのせいで体に無数の傷が入った。


「クッ…これは、!?」
「チッ…早速片が付くと思っていたのに、直撃は避けたでござるか」
「お前は…河上!」
「どうやら山崎の苦労は報われたってわけですねィ」
  
伊東のことを思い出してか眉間に深い皺を寄せて舌打ちをした土方と対するように万斉の口元は緩く弧を描いた。

「ここにお前が居ると言うことは、俺ら真選組も大物を捕まえるチャンスってことか」
「…今日の主役はお前たちではないでござる」
「……なんのことだ」

万斉の言葉で土方の脳裏に一人が浮かんだが、鍔の鳴る音で意識を相手に集中させた。

「奴は味方が傷つくほどに強くなる故、晋助は貴様らを生け贄に選んだのでござるよ」
「ッふざけんなっ!」


斬り掛かった山崎を軽く避けてから、万斉は土方らを見つめた。



「白夜叉─坂田銀時の戦いは拙者も楽しくくみで仕方がないでござる」
くく


***


万斉の合図で四方から現れた敵と対峙する内に自然と隊列がバラされ、土方は舌打ちをしてから志士をかっ斬った。


「っ畜生!斬っても斬っても減らねぇっ!どうなってやがる!!それに天人まで混じってやがる…っ」
「どうもこうも簡単な話だっつの。高杉晋助率いる鬼兵隊が宇宙海賊と手を組んだっつーだけだ」
「っ!!!…いつの間に…」


土方の背後に番傘で顔を隠しながら現れた男にもう一度構えなおせば、男は番傘を閉じて肩にトンと乗せた。


「宇宙海賊【春雨】。名前だけは流石に警察だから知ってるか?」
「春雨、だと…!」

最悪な組み合わせに眉間に皺を寄せると、その一瞬で男は土方の真横に来ていた。

「人生は重要な選択肢の連続だ。春雨だと理解した瞬間に構えるのでなく、距離を置くのが正解だった、なっ!!!」
「ッぐあっ!!」


思い切り鳩尾にねじ込まれた蹴りは常人のモノと比較できないほどで、バキバキと鈍い音と共に土方は壁に背中を打ち付けて血反吐を吐いた。


「…ゲボッ…ぉ前は…」
「ほぉ、動けるのか…こりゃ団長じゃねぇがワクワクすんな」
「…夜、兎…か」
「そうだ。…このまま相手してやりてぇが団長のとこにいかなきゃいけなくてな。精々別の敵にあっさりやられねぇこった」


面倒臭そうに頭をかきながら去っていった阿伏兎を霞む視界で睨みつけてから土方は口元を乱暴に拭った。
  

「奴ら…が、組んだ…、だと…」




***


「局長、すみませんでした!俺の調査が甘かったばっかりに罠にっ!」
「頭を上げろ。過ぎたことは仕方ねぇ」


土下座する山崎の頭をポンポンと撫でてから近藤が笑えば、山崎が申し訳なさそうに顔を上げて立ち上がった。


「無能な部下を持つと上司が苦虫を噛む思いをしなきゃいけないですよね。分かりますよ。私も猪女には毎度困らされていますからねぇ」
「!」
「…お前は変態謀略家武市変平太!!」
「…全く、その呼ばれ方は好きではありませんね」


刀を構えて対峙する近藤と山崎にわざとらしい咳払いをしてから、武市は無表情で彼らを見つめた。
 

「私、戦うのはあまり得意じゃないんですよね。しかも相手がゴリラとか力で勝ち目がないじゃないですか。私も侍ですけど、勝ち目のない勝負する芋侍とは違いますんで」


そう言って懐から何かのスイッチを取り出し、さようなら、とだけ告げて去っていけば辺りに仕掛けられていた爆弾が二人を襲った。


「ぐあっ!!」
「かはっ!」


瓦礫の破片や衝撃で身体中に痛みが生じるが、山崎は持っていた救急道具で近藤の手当をしつつ辺りの警戒をした。


「局長大丈夫ですか」
「あぁ、動脈の上切ったから血の量は多いが問題はない。ありがとう」
「いえ、局長に大怪我させたとあっちゃ俺が副長に殺されますからね」


隊服の汚れを払ってから立ち上がれば、爆撃による土煙もなくなり、視界がひらけた。

作品名:タイトル(仮) 作家名:遊兎