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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 19

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第67章 悪魔討伐への希望


 レムリアの時間で一日、外界で一週間、という約束通り、シンはロビン達仲間の元へ帰ってきた。
 加えて彼は、まるで自らの分身でも作り出したのか、とでも錯覚してしまう人を伴ってきた。
「シンが二人じゃと!?」
 余りに酷似している二人の人間に、スクレータが現実には有りもしない事を口走ってしまった。
 実際、その人物とシンの両方同時に面識のない者は、スクレータのような事を考えてしまう。
「ヒナさん、どうしてここに……」
 ロビンはシンと瓜二つの外見を持つ女を、ヒナ、と呼んだ。
 ロビンはかつてオロチとの戦いの際に、ヒナと刃を交え、そして共闘した。白の振袖に赤い刺繍の入った着物に、緋袴という巫女装束に加え、白鞘の刀を腰に差す姿は、懐かしささえ感じた。
「久しぶりね、ロビン。それから初めてお会いする方は、初めまして」
 ヒナは、相変わらずトーンの低い声で、ロビン達に軽く挨拶した。
「簡単な挨拶しかできなくて悪いけど、誰かこの子の怪我を治してあげてくれないかしら?」
「僕がやりましょう! シン、どうしてこんなになるまで放っておいたんですか!?」
 ピカードが買って出、シンの腕を掴み、茶色く汚れ、固まった包帯を急いで解いた。このままにしておけば、雑菌により患部が化膿する危険があったからだ。
「いてて! そっと外してくれよ……ったく」
「化膿する寸前じゃないですか!? 他にも、その胸のさらしは何ですか? まさかそこもひどい傷なんじゃ……」
「こっちはもう塞がってる、余計なことはするな。それより腕の手当してくれるなら、早くしてくれ」
 ピカードはシンが平気だと言うのにも関わらず、さらしを引っ剥がした。
 大きなひっかき傷らしきものが露わとなる。
「ここもひどいことになってます。いったい何をしていたんですか!?」
 シンは面倒臭そうに顔をさすり、なかなか話し出そうとしなかった。
「言ったって答えやしないわよ、青い髪のお兄さん。経緯はあたしが話すから、その子の手当てしてちょうだい」
 ヒナは頑なに口を閉ざすシンに代わり、レムリアまでやって来た経緯を話し始めた。
「まずは改めて自己紹介するわ……」
 ロビン達の視線が、ヒナへと向いた。治療に当たるピカードも、横目でシンとよく似るヒナに向ける。
「あたしはヒナ。ロビン達は知ってるだろうけど、初めましての人はよろしく。シンはあたしの弟で、母親代わりもしていたから、姉と言うより、母親かも知れないわね」
 物静かな話し方であるが、シンのように、話に軽く冗談を交えている。そのような所はやはり、容姿並みに似ている。
「話は全部、このバカ息子……、もとい、弟から聞いたわ。なんでも、デュラハンとかいう悪魔に仲間を浚われたんですってね……」
 シンがヒナをレムリアへと連れてきたのは、デュラハンとその手下を打ち倒すための、戦闘要員とするためだけではなかった。
    ※※※
 ヒナは目を覚ました。
 朧気な記憶のまま布団から抜け出すと、巫女装束で寝込んでいた事に気付く。そして、何故この姿で寝ていたのか記憶を探った。
 なかなか記憶が蘇らない。何かの催眠術でもかけられたかのように、覚えていることが極端なまでに少ない。
 ふと、廊下から、とかとかと人の足音が聞こえた。足音は近付いていき、やがてヒナが眠っていた部屋に、足音の主が姿を現す。
「やっと起きたか、全く、この寝ぼすけ巫女が……」
「シン、どうしてここに!?」
 ヒナは飛び上がらんばかりの驚きを見せた。
 対称的に、シンは説明しなければならないらしい面倒さに、ただ頭を掻いている。
「さすがに術が効き過ぎちまったか……。まあいい、時間がない、手短に話すぞ。オレはあんたと戦ってたんだよ」
「シンと、戦っていた……? っう!」
 その瞬間、ヒナは頭に電撃が走った。そして何かに塞がれていた記憶の流れが再び流れ出し、これまでの記憶が瞬く間に蘇っていく。
「……そうだったわね……、あなた、妙な変装して毎日あたしに挑んでたんだった。そして今日決着を付けることにして、勝負はあたしの負け……」
 シンは説明の手間が省け、すこし安心した様子を見せた。
「さすが天眼巫女、オレに術をかけられていながら、少し話しただけでそこまで思い出すとは」
 シンの大きな力の前に、ヒナが気絶する前に、目的はヒナの命ではないとシンは言っていた。
 ヒナは全て思い出すことができた。
「オレとの約束も思い出してくれたようだな。それじゃあ、オレの頼みを聞いてもらうか」
「負けといて言うのもなんだけど、随分偉そうね。まあいいわ、頼みって何かしら……?」
 シンは、布団の上に座すヒナへと近付き、膝を付いた。
「……シン、あなたまさか、……あたしを抱きたいの?」
 今はヒナの冗談に付き合っている暇など無いので、シンは無視した。そして頭を下げ、自身の望みを告げる。
「姉貴……、一生のお願いだ。オレに、いや、オレと仲間達に力を貸してくれ!」
 頭まで下げてきたシンに、内心驚愕しながらも、ヒナは冷静に返す。
「力を貸す? あたしが? 一体何のために」
「ロビン、て奴を知っているだろ? オレは今、そいつと世界を救う旅をしているんだ」
 ロビンの名を聞いて、ヒナは魔龍オロチを討伐に当たった日の事を思い出した。
 イズモ村の反逆者となり、討滅の使命を担った、ヒナとシンの妹、リョウカにより、その時シンは討たれていたと聞いていた。
 しかしシンは、生きているどころか、ロビンと行動を共にしており、リョウカと手を結ぶような事をしていたのだ。
 ヒナの頭の中は、分からないことだらけで埋め尽くされた。
「ロビンなら、あたしの知る限りでは、あの金髪に碧い眼をした子なら分かるわ。そのロビンの事でいいのかしら?」
「ああ、その通りさ。順を追ってオレがここまで来た理由を説明する。信じられない事ばかりかも知れないが、全て事実だ。無理にでも分かってくれないか?」
 シンの目に、偽りの感情は一切なかった。更に言えば、命を懸けた戦いをした後に、嘘を言ったところで、彼に得になることも全くない。
「分かったわ、聞かせてちょうだい。あなたの思うこと全てをね……」
「ありがとう、姉貴。それじゃあ、聞いてくれ……」
 シンは全てを語り始めた。
 ヴィーナス灯台での、リョウカとの最終決戦にて、シンは妹の手を汚すまいと、頂上から自ら身を投げた。
 その時を同じくして、世界にある全ての灯台を解放せんとする者も、その命を亡くした。これにより全ては終わったはずであった。
 しかし、シンを含め、灯台解放を目指していた者は、プロクスの民二人を除き、奇跡的に生存していた。
 その後、紆余曲折を経て、シンは四つの内の三つ目に当たる、ジュピター灯台を灯す事に成功する。そしてその後であった。リョウカとシンが、和解を果たしたのは。
 そして、レムリアにて、レムリアの王から灯台を灯さなければ、世界は滅亡する、と知らされたシンと仲間達は、最後の灯台、マーズ灯台解放へと向かうことになったのだった。
 ここまで話したところで、シンは口を閉ざし、黙り込んでしまった。
「シン、どうかしたの?」
「……姉貴、ここであんたに、伝えなきゃならないことがある」