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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 19

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 これまで話していた時よりも、シンはその表情に暗い影を落とした。
「今更何を改まる事があるの? あたしは何を言われても平気よ」
「……その言葉は本当だな?」
「もちろんよ、聞かせなさい」
 シンは、全てを話すといいながら、この事だけには口を噤んだ。しかし、すぐに決心し、ヒナへ告げることにした。
「リョウカの、事だ……」
 心を決めたとはいえ、やはり重苦しい心地である。
「リョウカがどうしたの?」
 ヒナは訊ねてくる。
 シンは堅く目を閉ざしながら顔を背け、そして言い放った。
「リョウカは……、死んだ。いや、死んだというよりも、存在そのものが、消えてなくなったと言うのが正しい……」
 ヒナが驚かないはずがなかった。
「嘘、でしょ……?」
「オレだって嘘だと言いたいさ。けど、事実なんだ。そう、全部がな……」
 シンはリョウカについて知ったことを話し出した。
 リョウカには、人ならざるものが依代として、その身に存在していた。
 そもそもリョウカは、シンとヒナの親からこの名前をもらい、育てられる前、赤子の時に死亡していた。
 しかし、彼女は常人ならざるほどのエナジーを持っており、その力は、神の依代として十分足り得るほどであった。
「リョウカからは確かに、並みじゃない力を感じていたけれど、まさか本当に神様だったなんて……」
 ヒナの鋭い眼力によって、リョウカは人間ではない、とヒナは考えていた。しかし、彼女の並々ならぬ眼力の前であっても、その存在を完全に定めることは叶わなかった。
 故に、ヒナはリョウカを神、もしくはそれに等しいものと考えていた。
「それで、リョウカが消えて、あの子の中に存在していたものは、どうなったの?」
 ヒナは驚きを見せながらも、リョウカに宿る存在を予見していたため、少し冷静さを取り戻し、訊ねる。
「やっぱり姉貴には分かっていたか。リョウカに宿っていた存在が……」
「あたしにだって、本当に少ししか分からなかったわ。だから力を見破った、というよりは、リョウカの事を色々推測しただけよ。それで、その存在はどうなったの?」
「互いに消えそうになりながら、何とか本体の方は生き延びた。リョウカに生きる力を与えて、十数年間力を蓄えていたのは、イリスという女神様だ」
「リョウカが女神……」
 ヒナは言葉を失ってしまった。
「そして、イリスはあの大悪魔、デュラハンに浚われた……。イリスは天界で最強を誇る神の一柱で、以前にも奴と戦い、辛くも勝利したらしいが、今回は、そうは行かなかった……」
 シンはつい一週間前の事を思い出し、奥歯をかみしめた。あの日、イリスをデュラハンから守ることは愚か、その手下にすらまるで歯が立たなかった。
「……正直なところ、あたしは今混乱してるわ。リョウカが女神様で、世界を脅かす悪魔に浚われているなんて……。しかも天界で最強ですって? そんな神様が負けたんなら、もう……」
 ヒナは完全に意気消沈していた。
 最早悪魔に対抗できる存在は消え、世界は残り三週間で終末を迎える。
 しかし、そんな彼女とは対称的に、シンは諦念の感情はいっさい抱いていなかった。何としてでも世界を、そしてイリスを救う。この思いだけがシンに宿っていた。
「姉貴、確かに状況は絶望的と言ってもいい。けども、オレは諦めちゃいない。あらゆる方法を使って、奴の息の根を止める!」
 シンはヒナの両肩を掴み、自らの顔と彼女顔を合わせた。左右対称の彼らの顔は、まるで互いに鏡を見ているようである。
「……だから頼む、姉貴。あんたの力をオレ達に貸してくれ!」
「ちょっとシン! 痛い……」
 ヒナが抗議すると、シンはすまない、と手を離した。
「……あたしの力が必要って、あたしなんかが加わった所で、なんの足しにもならないわよ。天界最強の女神様も簡単にやられたんじゃね……」
「どうしてそんなに弱気なんだよ!? オレ達の妹がデュラハンに連れ去られたんだぞ、助けたいと思わねえのか!?」
「妹……。でももう、リョウカは……」
「リョウカだろうがイリスだろうが、オレ達はあいつと一緒に暮らしてきただろ!? 例え人間じゃないにしろ、イリスはオレ達の家族、違うか!?」
 シンの言葉に、ヒナは揺り動かされた。シンの言う通りである。血もつながっていなければ、種族さえも違うが、イリスとは確かに、長い間共に暮らしてきた。家族と言っても、間違いなどない。
「頼む、オレは、もう家族を失いたくないんだよ。そして旅してきて出会った仲間達も大切な友達だ。オレはみんなとも、別れたくないんだ……!」
 シンは頬に涙を伝わらせていた。それほどまでに必死の思いであったのだ。
「……分かったわ……」
 ヒナはシンの頬をさすり、涙を拭ってやった。
「あなたがそこまで必死になるんですもの。これ以上あたしの方がごねてるようじゃ、どっちが年上か分からないわよね……」
 遂にヒナはシンに押し負け、手を貸すことにした。
「……ありがとう、姉貴! 本当に、ありがとう……」
 ヒナは咽び泣くシンを、しばらく抱き締めてやるのだった。
    ※※※
 ロビン達に残された時間は、三週間を切っていた。これだけの時では、デュラハンを討伐できるだけの力を得ること可能性は、途方もなく低いものであった。
 しかし、ヒナの登場により、悪魔の集団を討ち果たすことができる可能性が、僅かながら上がったのである。
 それは、彼女の持つ特殊能力、力通眼によるものであった。
 レムリアの町外れにて、ロビン達は一人ずつ、ヒナと戦っていた。いや、戦うというよりは、稽古に打ち込んでいるとした方が近い。
 今、ヒナと戦っているのは、ガルシアであった。
 戦いは命を懸けるようなものではない。ただ純粋に、ガルシアがヒナへとぶつかっていき、それをヒナが受け止めている、といった具合のものである。
 ガルシアとヒナの刃がぶつかり合う。ギチギチ音を立てながら、ガルシアは一歩退き、表紙の黒い本を取り出した。
 エナジーを黒魔術へと転換し、ガルシアは呪文を唱える。
「死神の一閃、『デスチャージ!』」
 ガルシアは死神を呼び出し、魂を吸い取る効果のある大鎌を振るわせた。
 しかし、死神の刃は外れ、同時にヒナは、ガルシアの側面に立っていた。
「……ここまでね、だいたい分かったわ。ガルシア、あなたの適性がね……」
 ヒナは、ガルシアから離れ、構えを解く。
「ガルシア、あなたはその黒魔術を鍛錬なさい。剣と魔術を同時に極めてる時間はないわ、どうやらあなたは、黒魔術の方が合っているわね。どんどんエナジーを鍛えて、更に魔術を覚えなさい」
 ガルシアは指摘を受けると、剣を納め、黒魔術書を繰った。まだまだ読めるほどの字は表れていないが、少しずつ新しい呪文が表れようとしている。
「ありがとうございます、ヒナ殿……」
 ガルシアは、魔術書を閉じ、ヒナに礼をした。
 ヒナは、ロビン達を相手に一人一人戦う事により、力通眼を使い、力を読むことで、その人に最も効果的に力を上げる為の指導をしていた。