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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 19

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「頼もしくなったものだな、ジャスミン……」
 シンは呟きながら、視線を前に戻した。すると、前方に陸地があるのが目に入った。
 真っ黒な影に包まれた巨大な山が見える。あれこそが、エゾ島が滅びる原因を作った大火山である。
「ジャスミン、もうすぐエゾ島だ。腹くくれよ」
「ええ、もちろん!」
 二人は目配せすると、視線を遠い陸地に向け、地獄の島へと飛び去っていった。
    ※※※
 赤く、小さなボールのような球体が岩石にぶつかると、その球体は、元の形からは想像もできないような爆発を起こし、岩石を粉々にした。

 何かにぶつかれば、巨大な爆発を起こす、炎のエネルギーが集束された球体は一つに止まらない。数多の球体が辺りを粉微塵にしていく。
 爆発は岩を吹き飛ばし、砂塵が舞った。
 もくもくと爆煙の立つ中、影が高速で移動した。
 ジャスミンは影の移動した方向に、爆発球を投じた。切り立った岩に当たった瞬間、岩を打ち砕き、吹き上がる破片で影の動きを止めさせた。
「……ちっ……」
 影、シンが姿を現し舌打ちする。すぐさま移動しようとするも、彼の進まんとする道には既に、炎を身にまとったジャスミンが立っていた。
「……うふふ……」
 ジャスミンは不気味に笑うと、両手に炎を出現させ、それらを合わせ、火炎を放射した。
    ※※※
 エゾ島の地に降りた後、シンはすぐに修行を始めようと思っていたが、やはりというべきか、ジャスミンは体調を崩してしまった。
 エゾ島の空気は、空気中に漂うデュラハンの瘴気だけでなく、島の中心部に位置する大火山から飛んでくる火山灰、そしてあちらこちらから臭ってくる腐臭のせいで、最悪のものだった。
 風景も、とても人の住めるような所とは思えない。生き地獄とはまさに、この島そのものを言うのだろう、と誰もが想像するのに難しくなかった。
 取りあえずの塒として、シンは岩山に空いた洞窟を、塒にする事にした。
 その洞窟には幸いにも、地下水脈の流れる沢があった。外に流れる水は、火山灰によって汚染されており、とても飲めるものではなかったので、この水たまりはとてもありがたいものであった。
 食物は、携帯食を持ってきた。腐食を防ぐために、水気が完全に無くなるまで炊いて乾燥させた米である。これで数日は過ごせるであろうが、尽きてしまった時は、外にて喰い合いをしている魔物の肉を食すつもりであった。
「ん、うーん……」
 地に横たわっていたジャスミンが、意識を取り戻した。
「気がついたか、ジャスミン。寝起きの所すまないが、ここに火をつけてくれるか?」
 シンは外から集めておいた枝を、指差したようだった。昼間だというのに、洞窟の中は目が慣れないうちは、何も見えないほど暗かった。
「私、いつのまに……。あっ、ごめんなさい、今つけるから!」
 ジャスミンは体を起こしてから、エナジーで小さな炎を枝に向かって放った。小さな炎は一瞬ぱっ、と燃え上がり、枝に着火させた。
 パチパチと音を立てながら、炎は燃え盛り、暗い洞窟内部を淡く照らす。
「ふう、ついたか。薪を集めたはいいが、火がつけられなくて困ってたんだ。オレのエナジーじゃ、爆破しちまうだけだしな」
 シンは焚き火の前に座りながら苦笑した。
「シン、ごめんなさい……。私ったら、気絶しちゃうなんて……」
 ジャスミンは、瘴気の舞う空中を飛び、このエゾ島に辿り着いた途端、島中に漂う異臭にやられ気を失ってしまっていた。
 ただでさえ少ない修行の時間を、浪費してしまったことを、ジャスミンは詫びた。
 ふと、ぽんっ、とジャスミンの頭にシンの手が乗せられる。
「シン?」
 ジャスミンは叱られた子供のように、上目づかいでシンを見る。
 そこには怒るでも叱ろうとするでもない、笑みを浮かべるシンの表情があった。
「あんまり気にするな、ジャスミン。お前はオレみたいに、血を見るような修行はしたことないだろ? 普通の反応だよ、それが」
「シン……」
「それに、今日は移動だけでかなりのエナジーを食っちまった。修行はまた明日からだ。おっと、明日は倒れないでくれよ? さすがに時間がもったいないからな」
 シンはジャスミンの頭から手を離し、その手を懐に入れると、袋に詰まった、例の携帯食を取り出した。
「ほら、食っとけ。大して旨くないだろうが、栄養価が高くなるように作ってある。こんなものでも食わないよりはマシだ」
 ジャスミンは差し出された袋を受け取った。中をあけてみると、様々な色をし、乾燥した米が入っていた。
 シン曰く、それは忍が持ち歩く携帯食であるとのことだった。
 忍たる者、何日もろくな食事にありつけないこともある。そんな時、空腹を満たすというよりも、栄養不足で倒れないために、簡単に栄養価の高い物を食す必要がある。
 そうした目的のための忍者食が、袋に詰まった色とりどりの米であった。
 酷い光景をいくつも見て来たジャスミンは、心底食欲など湧く気分ではなかったが、これほど軽いものであれば多少は喉を通るだろうと思い、指に少量を摘み、口に入れてみた。
「ん、これ……」
「どうした? やっぱまずいか?」
 ジャスミンの答えは逆であった。
「……おいしい」
 しょっぱさの後に甘辛い風味が口の中に広がり、また、さくさくとした食感がお菓子のようである。後味は米本来の甘さがあり、少し体力が戻ったような感じさえする。
「マジかよ、こいつが旨いだって? 信じらんねえ……」
 シンは、この携帯食を何度か食べてきたが、旨いと感じたことがなかった。
 材料には滋養強壮の為に、トカゲやカエルの干物を粉にして混ぜ込んである。作った本人でも、口にするのは躊躇いが生じるほどである。
 故に、今も色付きの米を摘んでは喜んで口に運ぶジャスミンを見て、驚いていた。
「本当よ? おかげで何だか元気が出てきたわ。シンも食べたら?」
「い、いや、オレはさっき少し食ったから……」
「そうなの? あ、そうだ! もし余ってたらちょうだい!」
「ああ……、じゃあもう一袋やるよ。ああそうそう、あんまり一度に食べ過ぎるなよ? そんなに持ってきてないからな、無くなったら魔物どもの肉を食うしかなくなる」
 忍者食をもう一つ貰い、喜んでいたジャスミンは、魔物と聞いてぎょっとした。
「じょ、冗談じゃないわよ! 魔物を食べるだなんて、考えただけで気持ち悪い!」
「……オレはこいつを二袋も食う方が気持ち悪いがな」
 シンは携帯食を少し摘む。やはり、材料のイメージからか、まずくて仕方がない、ついつい顔をしかめてしまう。
「……まあ、とにかく……」
 シンは携帯食を懐にしまった。
「今日はもう休むぞ、明日から大変な修行が始まるからな」
 携帯食のおかげか、顔色がすっかりよくなったジャスミンは、強く頷いた。
「ええ、イリスとシバを助けなくちゃ。私もみんなとおんなじように戦いたい。シン、お願い、私を強くして!」
 シンはニヤリと笑った。
「その意気だ。みっちりしごいてやるから覚悟しとけよ?」
 二人は笑い合った。
 そして翌日、相変わらず灰色の空の下、シンとジャスミンの修行は始まった。
「さて、ジャスミン」
 まるで師のように、シンは言う。