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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 19

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「お前が強くなる方法は、一度、マーズ灯台でお前自身が死の危機に瀕したほどの炎の力、『プロミネンス』の最終形態を自在に操れるようになることだ。だが、前にも言ったとおり、今のお前じゃ、炎を出すか消すかのどっちかしかできない。炎を剣や、投げ槍のような武器にする事、炎を一転に集中させて攻撃、なんてのは無理だ。断言する」
「そうね……」
 シンから言われたことは、例のエナジーを持つジャスミン本人がよく分かっていた。
 自らの中には、とてつもなく大きく、そして強い炎の力が宿っている。しかし、その大きさは、ジャスミンの力の範疇を超えており、とても細かく使用するなど無理な話であった。
「それじゃあシン、どうしたらあのエナジーが使いこなせるようになるの?」
 シンはきっぱりと答えた。
「無理だ」
「え!?」
 シンの回答は、あまりにもはっきりとしており、これ以上追求するのにも難しかった。
「そんな素っ頓狂な反応してるようじゃ、分かってないな。もう一度だけ言おう、今のお前じゃ絶対に無理だ」
「で、でもそのための修行でしょ? 練習すれば使えるようになるんじゃ……」
 シンは頑として首を縦に振ろうとしなかった。
「まだ分からないようだからはっきり言ってやる。お前が弱いからあのエナジーは使えないんだ」
「じゃあ、強くなれば……!」
 シンは人差し指をジャスミンの顔の前に突き立て、言葉を制し、黙って首を横に振る。
「それも無理だ。何故なら、お前の体は十分すぎるほど強いからな」
 弱いと言ったかと思えば、今度は強いと言い出した。シンの言葉は最早支離滅裂であり、ジャスミンは混乱のあまり、言葉が出なくなっていた。
「っと、ちょっとばかし難しい事言っちまったな、すまん。まあ、取りあえずもうごちゃごちゃ言うのは止めだ。ジャスミン、『プロミネンス』を使ってみてくれ。最大出力でな」
「う、うん……、分かったわ……」
 釈然としないながらも、頼まれたとおり、エナジーを発動する。
『プロミネンス!』
 ジャスミンを中心に、巨大な炎が渦巻いた。それは一瞬にして勢力を増し、周囲の枯れ木や岩石を吹き飛ばす。
「ふっ……、くっ……!」
 ジャスミンは、心の中で微調整を試みるが、抑えが効かず、炎は力を増すばかりである。
「ジャスミン! もういい、エナジーを切れ!」
 シンはいつの間にやら高台に登り、そこから大声で炎を収めるように叫んだ。
 ジャスミンは言われたとおり、エナジーを止めた。岩石をも砕き、吹き飛ばす勢いの巨大な炎は、少しずつ収まっていき、ついには消えた。
「相変わらずすごい威力だな……」
 シンは高台から飛び下り、一回転して着地した。とても高いところから下りたというのに、猫のように着地し、砂埃もほとんどあげなかった。
「シン、私の力を見て何か分かった? あるなら、何でもいいから教えてよ」
「何でも、か。じゃあはっきり言ってやる……」
 ジャスミンは、どれほど厳しい言葉が返ってきたとしても、落ち込んだり萎縮したりしないように、心に誓った。
「お前は十分に強い。手の施しようがない」
 シンは両手を広げ苦笑し、お手上げ状態であるかのように言った。
 その言葉に、ジャスミンは拍子抜けするしかなかった。
「私が強いって、それじゃあ一体何の為にこんな所に連れてきたのよ!?」
 シンも匙を投げるような強さを、ジャスミンが持っているというのなら、なぜ自分はこのような血生臭い所に連れられたのか。ジャスミンは疑念を持つよりも、シンに対して僅かな怒りを感じた。
「まあまあ、そういきり立つな。言葉が足りなかったオレが悪いが、お前も早とちりしてるぞ。オレは、お前の体は強い、といったんだ」
 体でも何でも強いのなら、強いことに変わりはないのではないか。ジャスミンは返した。
「あれほどの巨大なエナジーを発動していながら、お前は平然としている。お前の体の方は、あれを使えるほどに順応しているんだ。問題は心の方だ」
 ようやくシンは、ジャスミンの足りない部分を指摘した。
 この言葉に、ジャスミンは落ち着きを取り戻した。
「心に、問題が……?」
「ああそうだ。肉体は十分すぎるまでに強い、だが心は、精神の方は、はっきり言って弱すぎて話にならない」
 シンは自らの頭を指さし、ジャスミンの精神の脆弱性を指摘する。そして質問を投げかけた。
「ジャスミン、対象は何でも構わない。何かを壊す、あるいは殺すことに躊躇いはないか?」
 ジャスミンは驚きのあまり、血の気が引いていくのを感じた。
 シンは小さく笑う。
「ふっ、その様子じゃ、図星のようだな。そういう気持ちがあるうちは、あの炎を自分の思い通りにするなんざ、一生かかっても無理だ」
 シンの言うとおりであった。
 どんなに凶悪な魔物が相手であっても、ジャスミンはそれらを倒した時どうしてか、罪悪感や悲哀の感情が湧いてしまう。
 非情になりきれない所がジャスミンにはあった。どれほど悪い魔物を相手取っても、心の奥底では戦いを逃れたい気持ちがあるのだ。
「……でも、どんな悪い奴でも、殺してしまうことはないでしょう!? きっとそういうものには、何かあって悪いことをしている、私はそう思うの」
「そこが甘いんだよ、お前は!」
 シンは双刀の片方を抜き、ジャスミンに向かって投げつけた。
「ギャキィィィ!」
 ジャスミンに当たるかと思われた剣は、彼女の顔を僅かに逸れ、後ろからジャスミンに襲いかかろうとしていた鳥の魔物を刺し貫いた。
 ジャスミンは自らの背後から、耳障りな鳴き声が響いてから気がついた。ジャスミンの背後には、剣に刺し貫かれ既に絶命した魔物の死体が転がった。
 ジャスミンは死体を見ながらしばらく凍り付く。
「お前の気持ちは手に取るように分かるぞ。大方『殺さなくても、逃がせばよかったのに、可哀想』とか考えてるんだろ?」
 シンはジャスミンに歩み寄り、地面の魔物の死骸から剣を引き抜いた。剣が抜けた途端、魔物は霧散する。
「今の相手に話し合いなんか通じると思うか? 思うんだったら、お前はここで死ぬ、絶対にな」
 ジャスミンは驚きの余りか、顔をひきつらせたままである。
「ジャスミン!」
 シンが大声で呼びかけてやっと、ジャスミンは正気を取り戻した。
「シン……」
 ジャスミンは正気になってすぐに口を開く。
「確かに、あなたの言う通りよ。私は、シンが私を助けるために殺した魔物を可哀想だと思ってしまった……」
 シンは小さく、次第に大きく笑う。
「アハハハ……! まさか本当にそんな風に考えていたなんてな。こいつはお笑いだ!」
 一頻り笑うと、シンはまた質問を投げかけてくる。
「ジャスミン、もう一つ聞く。オレの行動はどう思った?」
「……私を助けてくれたんですもの、ありがとうって思うわ」
 シンはまた笑った。
「ハハハ……、ジャスミン。お前はどうやら、とてつもない、バカが付くほどのお人好しだな!」
 ジャスミンはすぐさま反論する。
「そんな、助けてもらったお礼を言うだけで、どうしてそうなるのよ!?」
「まあ、そう怒るな。それが道理だが、ジャスミンはあまりにも優しすぎるんだよ」
 シンは、いかったジャスミンの肩に手を乗せ、諭した。