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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 19

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 もしも話がややこしくなり、バルログがアネモスの巫女を汚した、という間違いが、誤ってデュラハンに知られれば、バルログは間違いなく消されてしまうことになる。
 野獣のようなバルログの頭でも、このくらいのことは想定できた。
「わ、分かったよ、出てきゃいいんだろ? 出てきゃ!」
 ぐだぐだ文句を言いながら、バルログはどすどす足音を立てながら、地下牢から出て行った。
 いつもこんなやり取りが行われた後ようやく、シレーネの侍女はシバの世話に回っていた。
 こつこつ、と足音のよく響く地下牢を歩き、侍女はシバの囚われている鉄格子の前に行く。
 シバは、痛みに顔をしかめながら、鉄格子の向こうにいる侍女を見る。
「お加減はいかがですか? アネモスの巫女様」
 長い、深緑色の髪を後ろで一つに纏め、白黒のエプロンドレス姿の、シレーネの侍女は訊ねた。
「……これが元気に見えるってんなら、あんたの目は節穴ね、アレリア……」
「これは失礼、愚問でしたね」
 アレリア、と呼ばれたシレーネの侍女は、小さく笑い、手に持っていた小さな箱を開けた。
 中身は、小さく丸められた沢山の綿である。
「代えの詰め物を持って参りました。これだけあれば十分かと。使用済みの物はわたくしが始末して参ります、こちらに渡していただけますか?」
 シバはむしろから起き上がり、茶色に固まった綿の詰まった箱と引き換えに、アレリアから詰め綿を受け取る。
 アレリアは驚いていた。
「これは……。この様子だと今渡した詰め物で保つでしょうか? それにしてもこれほど出血していては貧血になりますわ……」
「……くっ、他人事だと思って……!」
「申し訳ございません、一番お辛いのは貴女ですよね。毎日貴女のお世話を仰せつかって参りましたが、さすがに見るに堪えなくなりましたので、本日はこちらもご用意いたしました」
 そう言って、アレリアがエプロンのポケットから取り出したのは、紙に包まれた粉薬であった。
「……何よ、それ?」
「シバ様の体調が日々悪化しているのを見ているのがわたくし、堪えきれなくなり、シレーネ様にお願いして調合していただいたお薬でございます。曰わく、これを服用されれば、ひとまず痛みは緩和されるとの事です」
 シバは苦しみながらも怒りを露わにした。
「……そんなのがあるんだったら、どうしてもっと早くにくれなかったのよ!?」
 シバに、叫んだ弾みで痛みが増す。
「申し訳ございません。わたくし自身、何度もシレーネ様にお頼みしていたのですが、単なる女中の頼みと、なかなか聞き入れていただけなかったのです……」
 アレリアは深々と頭を下げ、シバに詫びた。
「いたたた……、もうなんでもいいわ! それを頂戴! もう痛くて痛くてここ数日ろくに眠れてないんだから!」
 大声を出す度に、シバに痛みが走った。
「では……」
 アレリアは、手のひらを上にかざし、念じる。すると、彼女の手が一瞬光り、簡素な料理が出現した。
 アレリアは紙に包まれた粉薬と一緒に、食事をシバに差し出す。
「簡単ではございますが、お食事をご用意いたしました。お薬は、食後に服用くださいませ。それでは、失礼します……」
 アレリアは地下牢を去っていった。
「ちょっと待ちなさい! 本当にこれを飲めば楽に、っく……!」
 シバが叫ぶ頃には、もうアレリアは地下牢から出て行ってしまった後だった。
 アレリアは自室まで戻ると、エプロンドレスを脱ぎ捨てた。同時に結った髪も解く。下半身だけを覆う、下着姿となった。
 アレリアは人差し指を、目の前に置き、念じた。
「ふんっ!」
 すると、ふくよかな乳房はなくなり、ごつごつと精悍な体へと変わった。
「……ついに、時は来てしまいましたね……。はてさて、デュラハンを倒す者は現れるのでしょうか……」
 女体化する魔法をも会得し、アレリアとしてシバに接触していた男、アレクスの思惑はほぼ成功していた。
 シバの体力が果たして、保つか分からなかったが、月経を極端に長くする薬を調合して食事に盛り、一ヶ月の時を稼ぐのに成功した。
 後はデュラハンを筆頭とする者達の、野望を阻止できる者が現れるのを待つのみである。
 デュラハン達は、ついに世界を破壊する次の行動に移っていた。
 アレクスは、野望が潰えるのを切に願うばかりだった。