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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 19

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「悪足掻きは止せ、もう勝負はついて……」
「……まだ終わらない……」
 ジャスミンは恐らく、残るエナジー全てと思われるエナジーを目の前に展開した。そしてそれを波動とし、シンに向けて撃ち出した。
「なっ!?」
 高熱を持つ炎の波動は、とてつもない威力、攻撃範囲を持つ、極太の波動であった。
 これまでの炸裂する、小さな火炎弾とは比べものにならないほどの勢力であり、後ろの岩陰に避けたところで、その岩諸共粉微塵にされる。
 横に避けたとしても、やはり爆発に巻き込まれ、ただではすまない。空中に逃れたところとて同じ事である。
「きえてなくなれー!」
 ジャスミンは小児の如き嬌声を上げた。確実にシンを焼き尽くし、灰にできると確信しているようだった。
 ジャスミンが本当にそう確信しているかは分かりかねることだったが、この状況では、シンに生きる道はなかった。
 しかし、成功率は遙かに低いが打開する方法はあった。それはこの波動を真っ向から受け止めること。
 シンが生き残るには、もうこの方法を除いて他になかった。
 炎の波動は、シンに死を与えんと迫り来る。それを目の前にして、シンは波動の先端を、翡翠色の目で見つめていた。
 これは諦念からの行動ではない。どれほど強く、大きな力を誇っていようとも、物体には必ず弱点がある。シンは心を静め、迫り来る波動にあるはずの弱点を見つけ出そうとしていたのだ。
 シンの寸前まで、熱気は迫ってきた。見誤れば、シンに待ち受けるは死である。
「っ!? これは!?」
 シンは自らに突然出現した変化に驚いた。
 今まで、正確な力の読みがまだまだ未熟だったというのに、今この瞬間になって、全てが分かるようになったのだ。
 これまで淡い翡翠色にしか光らなかった、シンの力通眼ははっきりとした翡翠色に輝くようになり、迫り来る波動の弱点がよく分かる。
「見える……、見えるぞ!」
 波動の先端部分、左下が弱点である。そこを突けば、如何に大きな波動であろうとも打ち砕くことができる。
「見切った、そこだ!」
 シンは右手に白銀の刃を握り、居合いのように左腰に右手をあてがい、抜刀するかのように振り払いながら向かってくる波動に向かって飛び込んだ。
「おおおお……!」
 炎の凝縮された巨大な波動は、まるで鉈で真っ二つに割られる竹のように、一回りも二回りも小さな刀によって切り裂かれていく。
 受けた力をそのまま刃に乗せ、白銀の刃はジャスミンの炎を纏い、長く、そして赤く光る一振りの太刀へと姿を変えた。
「最終奥義……!」
 巨大な波動を割って飛び出してきたシンに、ジャスミンは仰天し、固まってしまった。
「破刃・衝返刃!」
 シンの姉、居合いの達人であるヒナですら一度として成功させた事のない最終奥義を、シンは成し遂げたのだ。
 相手の刃、ジャスミンの炎を打ち破り、その力を得て一振りの太刀へと姿を変えた剣を、シンは力を込めて振り下ろした。
「ぅああああ……!」
 無防備となっていたジャスミンはまともに受け、大きく後ろへ吹き飛ばされた。
 力を解放し、元の白銀の刃に戻った剣を納め、シンは一瞬にしてジャスミンに接近し、そのまま馬乗りになってジャスミンの動きを封じた。
 ジャスミンは必死にもがくかと思われたが、一切抵抗しなかった。
「シ、ン……」
 一言シンの名を呼び、ジャスミンは気を失った。それとほぼ同時であった。日が沈み、シンの術が解けたのは。
 シンはジャスミンの上から降りた。
「ジャスミン、本当、とんでもない奴だよ、お前……。今安全なところに運んで……」
 シンはがくっ、と膝の力が抜け、そのままその場に倒れてしまった。
「……くっ……、参ったな、もう、力が入らねえ……」
 シンは顔を歪めながら、震える手で懐を探り、小さく畳まれた土色の布を取り出し、ばさっ、と広げた。
 それは原始的な隠れ蓑であり、それをジャスミンとシン自身にかぶせる。これで何とか魔物の目から逃れようという算段であった。
「悪いな……、ジャスミン……」
 どうにか最後の力で、魔物から逃れられるようにしてから、シンは呟き、重たい目蓋を閉じてジャスミンと共に深い眠りにつくのだった。
    ※※※
 魔界と化したギアナの地に位置する神殿、アネモス神殿の地下牢に、金髪で紫色の瞳を持つ少女が囚われていた。
 鉄格子の牢には、僅かばかりのむしろが敷かれ、隅には排泄物を入れておける箱のような物が置いてある。
 金髪の少女、シバは、苦しげな表情を上げながらむしろの上に横たわり、腹部を中心に、全身へと伝わる痛みに耐えていた。
「う……、くっ!」
 月経が始まってからもう三週間近く経っている。普通、一週間、長くても十日で治まるはずの症状が、どういうわけか今日まで続いているのだった。
 症状も、これまで経験してきた中で一番酷い。気を失いそうになるほどの強烈な生理痛で、実の所、眠りにつくときは大体痛みで気絶していた時がほとんどだった。
 悪魔に浚われたのは、シバだけではない。
 かつて悪魔と戦った、天界最強の力を誇る女神、イリスも囚われの身であった。
 しかし、イリスはシバと違い、悪魔の魔力によって、その身を石板に封じられいる。その石版は、悪魔、デュラハンが所持していた。
 シバが苦しむ中、ずっと牢番をしていたのは野獣のような姿をした、デュラハンの手下、バルログであった。
「ふああ……、今日も牢番か。暇だなぁ……」
 地下牢の入り口に座して、バルログは大きな欠伸をしながら独り言を言う。
 バルログの牢番としての仕事ぶりは、とても良いものとはいえず、一日中居眠りをし、たまに食事をしに行くときも、鍵を適当に放って出て行くほどだった。
 シバがこのような状態でなければ、バルログのいない間に鍵を奪い、脱出しているところである。
 ふと、牢の入り口から野太いバルログの声と、ハスキーな、女性と思われる声が聞こえてきた。
「お? 交代の時間か?」
「ええ、しばらく私がアネモスの巫女様の様子を見ていますから、あなたはここから離れていなさい」
「全く、アネゴの侍女だかなんだか知らねえけど、なんでお前まで偉そうなんだ?」
「別にそのようなつもりはございませんよ。ただシレーネ様が、バルログさんは適当に扱って良い、と申しているのでその通りにしているだけです」
「くー、ムカつくなぁ」
「さあ、早々に立ち去ってくださいまし。わたくしは、アネモスの巫女様のお世話をしなくてはなりません。殿方のいる前ではできかねますので……」
 バルログは下心丸出しで訊ねた。
「なあなあ、いい加減教えてくれよぅ。おめーら、毎日二人して何してんだ?」
「……答える義務はありません」
「俺様を追い出さなきゃできねぇなんて、何か怪しいなぁ……」
「いい加減になさいませんと、シレーネ様に言いつけますよ」
「シレーネのアネゴに……!?」
 シレーネという名に、バルログはびくりとした。
 シレーネの侍女であるこの女から彼女に、バルログの下心から来る追求を知らせられようものなら、バルログの身に安全は保証できない。