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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 19

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 ロビンは立ち上がり、怒りに満ちた赤黒い目でヒナを睨みつけた。ヒナも何とか疲労で重い体を、持ち上げる。
「まさか、これで仕損じるなんて……」
 ヒナは胸中で舌打ちする。
「この術は、最終奥義、破刃・衝返刃を使うに際して欠かせないもの……。けれど、これは使い方を変えれば、隙だらけの相手に連続攻撃を加えられる、時間を操る術……」
「時間を操るだと?」
 ロビンはヒナの未知の力に食いついてきた。
 ロビンは、破刃・衝返刃については知っていたが、時に干渉する力は全く知らなかった。
「っく……! まだよ、もう一度……!」
 ふらつきながらも、ヒナは先ほど同様人差し指を立て、全身の精神力を集中させた。
「秘技・止刻……!?」
 エナジーとも違う、特殊な能力を発揮しようとすると、ヒナは突然体が動かなくなった。
 ヒナの周りにだけ妙な現象が引き起こされている。まさか、と思い、辛うじて動く目だけをロビンに向けた。
 ロビンは口元をつり上げながら、ヒナへ指を指していた。
「そ……んな……!?」
 驚くことに、ロビンは一度受けただけで、止刻法を会得していたのだ。それもヒナのものよりも完成度が高い。ヒナでは三十秒が限度の所が、ロビンは一分以上の時を操るのも可能と思われるほどだった。
「己が技を以て散るがいい!」
 ロビンは、金縛りにでもあっているかのように硬直するヒナに、縮地法を使って飛び込んだ。
ーーやられる……!ーー
 今度こそ訪れようとする死を、ヒナは動かぬ体で十分に予感した。
 ガキンッ、と耳をつんざく金属音が、辺りに鳴り響いた。
「チィっ! 邪魔をしおって……!」
 ロビンとヒナの間に立ち、シンが両手の剣で、ロビンの一撃を防いでいた。
 同時に、ロビンの気がそれ、ヒナにかかった幻術は消え失せる。
「シ、ン……」
 ヒナはシンの背中に倒れ込んだ。
「……姉貴、交代だ。ロビンは、オレが止めてみせる」
 シンは首にかかる、ヒナの荒い吐息を感じながら、ロビンの剣を払った。そしてヒナを抱え、後ろに下がる。
「誰か、姉貴を頼む」
 シンは仲間達にヒナの保護を求めた。しかし、誰か、と言いながらシンは、ガルシアへヒナを預けた。
「シン!」
 ガルシアは呼びかけるが、シンは応じない。
 シンはゆっくりとロビンの元へ戻っていく。姉と瓜二つの結い方をした髪を揺らしながら。
「ロビン」
 シンは、ロビンから少し離れた所で立ち止まり、呼びかけた。
「どうやら、お前の力はとんでもないものらしいな……」
 ロビンは不敵な笑みを浮かべる。
「ふん、何を今更……。オレこそが本当のロビン。今まで貴様らと戯れていたのは仮の姿よ」
 シンは嘆息した。
「哀れだな。自らを偽者だと、どうして気づけないのか。まあ、仕方のないことか。お前は全てを破壊するだけの存在だと、認められないんだからな……」
 シンは心の底から哀れんでいるようだった。
 悲しい目を向けている。それはあたかも、大切な感情をなくし、虚勢を張る者を見るような瞳である。
「…………っ!?」
 突然の哀れみを受け、ロビンは赤黒い目を見開き、絶句した。
 シンの、まるで大人が子供に諭すような言葉は続く。
「破壊衝動しかないお前に、何か他に望むものはあるのか? 破壊し、殺し、そして血に染まって、あらゆるものを粉微塵にした後に、お前の欲望を満たせるものが、そこにあると思うのか?」
 ギリッ、とロビンは歯噛みする。
「……何もありはしないだろ? これで分かったろう、お前はロビンの力、心優しい奴には縁遠いが、誰しも持っている破壊衝動という感情が顕現してしまっているだけの存在だと……」
「黙れぇ!」
 ロビンは大声を上げた。
「それ以上何か口にしてみろ、真っ二つに斬り捨ててやる……!」
 赤黒い目でシンを睨みながら、ロビンは切っ先を向けた。
「やれるものなら、やってみればいい。絶対にお前の刃は、オレに届かない……」
 殺意をいっさい隠すことなく、シンへ向けるロビンと対称的に、シンは全く動じていない。
「うう……、があああ!」
 ロビンは獣のような雄叫びを上げ、ついにシンへ斬りかかった。
 ロビンに襲われかかっているシンであるが、武器はしまったまま、身構えることもなく、ただ棒立ちでいた。
「死ねぇ!」
 ロビンはシンの首を落とすべく、剣を振るった。
「シン!」
 彼らのやり取りを見守っていた仲間達の声が重なった。そして誰もが次の瞬間、シンの首が飛ばされるのを予感した。
 しかし、膝を付いたのはロビンの方だった。
「な……ぜだ……!?」
 シンの首すれすれの所で止まった刃は、からからと音を立てて、ロビンの手から零れ落ちた。
 そしてロビンは両手で自身の頭を抱え、そのまま完全に崩れる。
「オレは……、オレこそが……!」
 ロビンの破壊衝動の気は消え去り、そのままロビンは気絶してしまった。
「……終わったか」
 シンは少し安堵した様子を見せると、ロビンに肩を貸して起き上がらせ、仲間の元へ歩み寄った。
「ガルシア、姉貴の様子は?」
 答えは聞くまでもなかった。
「……一体ロビンに何をしたのよ?」
 自身の体調を窺うシンに対して、ヒナから放たれた言葉である。
「人がせっかく心配してやったのに、いらんお世話だったか。オレは何もしちゃいない、ただオレがロビンから読み取った事を言っただけさ」
「そんな事を聞いてるんじゃないわ。どうやってあのロビンを説き伏せることができたのかを聞いてるのよ」
 ヒナは納得がいかない様子であった。
 戦い、相手を殺すことしか考えない、悪魔はおろか、今世界を脅かすデュラハンさえも、恐怖するやもしれぬようなロビンを打ち負かす、ではなく、説き伏せ落ち着かせたのだ。疑問が浮かぶのも当然である。
「姉貴も力ばかりに拘るようになっちまったのか? あんたはオレなんかよりすごい力通眼を持っているからか、読んでそれで終わりにしちまう、違うか?」
 ヒナははっ、となった。まさか力通眼では勝る弟に、力通眼の違った使い方を知らされるとは思わなかった。
 シンの力通眼は、ヒナに比べれば遠く及ばないが、勝つことに専心した読みではなく、少ないならば、少ないなりの能力の使い方をしていた。
 相手の持つ力の本質を読みとり、そして、それを相手に突きつけるのである。
 このようにして、シンはロビンの心を乱すことに成功していた。心に乱れのある者の剣など、たかがしれている。
 口の上手いシンならではの、力通眼の使い方であった。
「ふふ……、あたしも、まだまだ修行が足りないわね……」
 ヒナは静かに苦笑する。
「時が惜しい。姉貴、ここから先は、あんたの仕事だ。最短で腕を上げられる修行法をオレ達に教えてくれ」
 ヒナは頷いた。
「みんなの力はどれほどで、どんなものか大体分かったわ。三週間じゃ付け焼き刃にしかならない。だけど、あたしの言うとおりにすれば大丈夫。付け焼き刃でも、最高のものをあげるわ。もちろん、デュラハン討伐にはあたしも力を貸すわよ!」
 こうして、ロビンとその仲間達による、激しく厳しい修行が、始まろうとしていた。