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綾瀬しずか
綾瀬しずか
novelistID. 52855
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あゆと当麻~嵐のdestiny~

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普通の女の子なんだ。亜遊羅なんて人間じゃない。俺のたった一人のあゆなのに。当麻は亜由美をこんな風にしてさらに追い討ちをかけるような仕打ちをしたジジ様という人物が憎いと思った。
静かに泣く亜由美に当麻は手を伸ばして抱き寄せる。
およそ負の感情と縁がなかった亜由美が嫌というほどそれにさいなまれている。甘えて助けてと言って泣けばいいのにただこらえようとする。ひたすら自分の課せられた運命を受けようとする。
亜由美は当麻の胸に顔をうずめて必死に嗚咽をこらえる。必死に涙を止めて当麻の問いに答える。
「私が亜遊羅だから。・・・最後の長だから・・・。これが私の生まれてきた理由なの」
そんな理由でお前は生まれてきたんじゃない、そう言いたいのに問い返されたら答られないのがわかって当麻は言葉を飲む。
ごめんね、と言って亜由美は身を引こうとする。
「泣くつもりなかったんだけどなぁ・・・。うまく皆に話せるように当麻で予行練習したつもりだったのに。失敗しちゃった・・・」
次も失敗するかな、と一人呟く。
身をひこうとする亜由美をひきとめ守ろうとするかのごとく当麻が強く抱きしめる。
「そんな事、俺がさせない。一人になどさせないっ」
こいつは俺が絶対に守って見せる。
ありがとう、と亜由美が呟く。
「当麻に言ったらすっとした。でも、やっぱり皆にうまく伝えること出来ない気がするから、当麻から上手く皆に伝えてくれる?」
腕の中で亜由美が言う。
わかった、と当麻が答える。こいつの涙を止めるためならなんだってしてやる。
「やっぱり、当麻って頼りになるな。ありがとう」
何度も何度も礼を呟く。
その度に腕の中の亜由美が消えていってしまいそうで当麻は一層強く抱きしめる。
生きている証を確かめる様に。
「迦遊羅、私の双子の妹として現世にとどまってもらうことにしたの。仲良くしてね」
ああ、と当麻がただ答える。
腕の中の亜由美が体の力を抜いて当麻に体を預ける。
とくん、とくんと二人の生きている証が重なる。
「一人で抱えるのって大変だよね。智将としての当麻もいっぱいいっぱい、一人で抱えてきたんだね。
当麻はすごいね。尊敬しちゃう。私は抱えきれずにしゃべっちゃった。だめだね・・・」
「だめじゃない。そんな重過ぎる事実一人で抱えるほうが間違っている。俺がずっとついててやるから洗いざらい全部ぶちまけてしまえ。お前が黙っていて欲しいことは黙っててやるから・・・」
当麻、と言って亜由美が黙り込む。亜由美の小さな体が小刻みに震える。こらえた涙がまた頬をぬらす。
「時々、こうして亜遊羅の昔話聞いてくれる?」
小さくしゃっくりあげながら亜由美が言う。
「いくらでも聞いてやる。好きなだけ話して好きなだけ泣けばいい。俺はずっとお前の側にいるから」
かなわない約束を当麻が呟く。
かなわないと知りつつ亜由美が答える。
「うん。ずっと、ずっと側にいてね」
亜由美がおずおずと当麻の背中に手をまわす。
凍てつく部屋の中で少年と少女はずっと抱き合っていた。
二人を引き裂く運命に抗う様に。