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魔王父娘の魔獣狩り――ブダペスト郊外にて

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 女魔王は雄叫びを上げ、両手剣を叩きつけ、触手はおろか本体までも粉砕してしまう。
「ああもっと、もっと、私は戦いたい。魔獣どもよ、来い!」
 力を解放しすぎると闘争本能も異様に高くなり、必要の無い敵を呼んでしまうこともある。
 蝙蝠型の魔獣が十数匹、熊型の魔獣が一頭引き付けられてやってくる。
 エリザベータは熊に突進して両手剣を叩きつける。熊は一瞬怯んだ後再び突進してくるが女魔王の強烈な蹴りで背中から倒れ、両手剣で粉砕された。
 その間イシュトヴァーンは蝙蝠を倒そうとしなかった。なぜなら闘争本能をもてあました魔王は体力が続く限り戦おうとするからだ。
「鬱陶しい!」
 エリザベータの直接魔法で蝙蝠たちはハエのように粉砕されていく。その後、彼女はぐったりと膝をついた。

「っ……お父様、私のせいで」
 彼女は後悔していた。自分自身のコントロールが効かなくなるなんて、大人なのに情けないと。
 しかし力を解放していなかったら取り返しのつかない事態になっていたことも事実だ。
「早く後部座席に乗れ。ゆっくり休息をとってくれ」
 イシュトヴァーンは地面に置かれていた両手剣を手に取り背中に装備していた鞘に収めた後、エリザベータを支えて車の後部座席に誘導する(彼らは車でこの森まで来ていた)。
 エリザベータは車内に入るとぐったりした様子で後部座席に横になった。
 イシュトヴァーンはそれを確認した後、マッチで火を起こしてから燃焼の魔法を唱えて魔獣の残骸を燃やしていく。
 魔獣狩りとは、この後処理までを含んだ過程を言う。魔獣を倒しただけでは、魔獣狩りとは言えないのだ。
 火が消えたのを確認するとイシュトヴァーンはエリザベータが眠っている車に乗り、帰途へと向かうのであった。