二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

レイニーブルー

INDEX|2ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 

そうやって全てを切り離して頼るものもなく一人で立とうとする彼女はこの上も無く愚かだ。自分の鬼も、庇護翼も、友人も、親兄弟も――すべて捨てて、寄る辺も無いまま、助けなど求めず我を貫き通そうとする。何の根拠も無いのだからそれは虚勢に過ぎないが、しかし身を危険にさらしてもその虚勢を張り続ける。無謀で短慮で愚かな女。
「お前らしい」
響が差し出した林檎を反射的に受け取り、桃子は薄気味悪いぐらいきれいに皮を剥かれた林檎を手に眉を顰めた。
「で? じゃあ、これを突き立てたらどうなるんだ?」
ひらりとナイフを弄びながら桃子の眼前に突き付けると、彼女は眦を上げた。
「入院が伸びるわね」
意外な答えに先を促す。
「それが?」
「そしたらこれからもあんたのことを見張ることが出来るかな、と」
「何だそんなことか」
桃子から切っ先を逸らす。手首でナイフを投げるとくるくると小気味良い軌跡を描いた。天井近くまで浮き上がったナイフはあとは落ちるだけ。サイクロイドを描き、鈍く光る刃。響の腹へと。不審そうな表情だった桃子が声を上げた。
「――ぁっ――――」
あと十センチ。
「事はもっと単純だな。一緒に鬼ヶ里を出れば良い。そこで見張れば問題無いだろ」
苦も無く回転するナイフの柄を掴んで響は笑った。
そうだ。こんな男が自分を傷つけるはずが無い、と桃子は動揺したことを恥じていっそう表情を険しくしたが、響はどこか満足そうだ。
「同棲ならより良い」
「はあ!? 冗談じゃない!」
警戒を顕わにする桃子に、響は朗らかに返した。
「まあ、それはおいおい」

作品名:レイニーブルー 作家名:萱野