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ガガーブその向こう側 後編

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※設定のためにキャラクターが一部(?)崩壊しています、ご注意ください。
ギャグです。


「こいっ、お前さんが計画に必要なんだ」
「ちょっと、やめてください!離して!」
臥ヶ武高等学校と中等部は広い敷地の東と西に位置していた。
その中央に、2階建てドーム型の建物がある。
中等部、高等部供用の書架施設、
普段は静寂が張りつめ、知の探究者たちの静かな喜びで満ちているその中で
今日はちょっとした諍いが起こっていた。
「おとなしくしろ、言うことを聞けば女に無体なことはしねえ」
「何言ってるの、もうすでに無理矢理じゃない!」
「っ、優しくしていればいい気になりやがって!」
「だーかーらー、こんなことしている時点で優しさには程遠いわよっ」
「いてっ、なんて乱暴女なんだ
仮にも巫女なんだろう!ありえん」
騒ぎの中心は、長髪を逆立てた男と背中まで伸びた巻き毛の少女。
今、腕をひっぱられている少女が男のすねを蹴飛ばしたところだ。

臥ヶ武高等学校の制服は、男子が詰襟、女子はブレザーという決まりであった。
もともと女生徒は伝統的なセーラー服を着用していたが、
セーラー服が不衛生であるという研究結果を受けて女子だけ制服が変わったのだ。
ただ、臥ヶ武高等学校は比較的自由な校風もあって、制服の規定はありつつ
それを逸脱しても大抵の場合は容認されていた。
スカート丈も然り。
巻き毛の少女はスカート丈をくるぶしまで伸ばしており
レースに彩られたブラウスと相まって、さながらどこかのご令嬢。
而して実際は『臥ヶ武の巫女殿』と呼ばれる学園のマドンナ、アイメル嬢であった。

「一体、私に何の用があるっていうの
あんまりしつこいとお兄ちゃんを呼ぶわよ!」
「そう、そうだ、その「お兄ちゃん」を今すぐ呼ぶんだ
そうすりゃ手荒なことはしねえよ」
にやりと笑った男の顔を見て、アイメルはピンときた。
アイメルの兄は、元々面倒事に巻き込まれやすい体質の上、お節介焼きだ。
大方誰かを助けた時に、やっつけられた連中が逆恨みにやってきたに違いない。
だとすれば、やることは一つだ。
「それがあなたの目的なの?」
「ああ、一部だがな」
「じゃあ呼ばない」
「はあっ?!」
「あなた絶対悪い人だもの、悪い人の思い通りにさせてなるものですか!」
「ふ・・・ふふっ」
「?」
「はーーーはっはっはぁーーーっ」
「!!」
「やめだやめだ、こういう面倒なのは俺様の性に合わねえんだ
あんたがそういう気なら、いつも通り力押しでいかせてもらうぜ」
そういうなり、男はアイメルを自分の肩にひょいと持ち上げた。
「なっっ・・・まって、待ちなさいっ、下ろして!!」

「あ、あれ・・・」
「まあ、担がれているのアイメルさんじゃない!」
丁度図書館のそばを通りかかったジュリオ少年とクリス女子は
その騒ぎの中心に知り合いの顔を見つけ、足を止めた。
「ねえクリス、見なかったことにして逃げようよ」
「何言ってるのジュリオ、早くお兄さん、アヴィンさんに伝えないと!」
「ええ〜・・・あ、誰か来たよ」

それは唐突にそこに現れた陽炎のような、そんな雰囲気を帯びた人だった。

「下ろして!下ろしなさいっ!!」
「そう言われて素直に聞くと思うかよ」
「このーーーーっ、下ろせーーーっ」
「うっ、痛えな、ここで暴れるな、大人しくしてろ!」

「すみません」

「ああ?」
「?」
書架にいた人たちは、皆この騒ぎに巻き込まれまいと遠巻きにしていたのだが
ここへきて、その二人に声をかける人がいた。
シャツにゆったりめのローブを纏ったその人は、
一見教師風だが、眼鏡の下の表情は伺いしれない男だった。
「ねえクリス、あんな人学校に居たっけ?」
「うーん、見かけない人よね、新しい用務員さんかしら」

「つかぬことをお聞きしますが、
あなた方がやっているのは痴話げんかですか?」

「「「「・・・・・・」」」」

寸の間4人が4人とも固まった。

「てめえ、ふざけてんのかっ」
「そうよ、私がこんな男好きなわけないじゃないの!」
「あ、そうですか、それは失礼しました」

「何あの人・・・」
得体のしれない雰囲気の人物に、淡い期待を寄せていた見物人たちはものの見事に裏切られ、
その一人であるクリスといえば、いよいよ自分たちの力でこの場をどうにかしなければ、という思いを強めていた。
「ジュリオ、あの人じゃダメそうだから、
もしものときは二人であいつをやっつけるわよ」
「えええ、絶対無理だよ〜あの人強そうだもん」
「だから助けるんでしょ、あんたはサポートしてくれるだけでいいから」
「あ、それならやる、頑張ってねクリス」

「ったく、変な奴に邪魔されたが、
手間取っている時間はねえんだ、校庭裏に急ぐぞ」
「っ・・・」

「いくわよ、ジュリオ」
「うん、わかった」

「痴話げんかでないのなら、彼女の言うとおり
無理矢理連れて行かれるところなのでしょうか?」

クリスがまさに今飛び出そうとしたところで、眼鏡の男が再び尋ねた。
「ずこっ」
「ん、もうなんなのあの鈍重な人は!」
イライラしたのは不良らしき男も同じだったらしい。
一瞬こめかみをひくつかせ、しかし応えた方が早いと思ったのだろう、眼鏡の男に返事をした。
「ああ、
そうだ、こいつはトーマスの舎弟が溺愛している妹だからな、人質だ」
「あっ、あなたもしかしてラモンね!!」
―ラモン―
臥ヶ武高等学校の不良の中の不良。
去年の春、隣町から臥ヶ武に転校してきたが、前々からその悪名は噂になっていたほどだ。
喧嘩相手から根こそぎ奪って、立ち上がれなくなるまで叩きのめすそのやり口から
海賊ラモンという二つ名までついていた。
「ふん、そうだ今頃わかったか」
「いっつもトーマスさんに負けるのに諦めないっていう」
「おい、おれがいつあいつに負けたっていうんだ」
「え?だってこの間もプールに呼び出されて、水泳勝負だとか言われたけど
25メートルのところで・・・」
「ああーーーーーーあ”あ”あ”ーーーーーーもういいから黙ってろ!」
「・・・やっぱり痴話げんか・・・」
「「ち が う!」」

「ふむ・・・痴話げんかじゃないんでしたら、少々問題ですね」
眼鏡の男の雰囲気が変わったのをラモンは見逃さなかった。
どう考えても自分の脅威にはなりえない者であったが、
自分の行く手を遮るというのなら、誰であろうと全力で相手をするのが海賊ラモンの流儀。
自身も気を戦闘モードに切り替えて男に応じた。
「へえ・・・止める気か?この俺を」
「ええ、そのつもりです」
「・・・ぶはははは、こりゃ面白い、はっはっは」
「何かおかしなことを言いましたかね?」
「だってよう、お前さんじゃ俺の相手は10秒と持たないと思うぜ」
「10秒、確かにそれはちょっと難しいかもしれませんね」
「っくくく、あんたおもしれえな、はなから負けるつもりなのかよ」
「ああ、すみません言葉が足りませんでした。
ええとあなたを負かすのに10秒は少し短い、という意味でして・・・」
「・・・おい、調子に乗るんじゃねえぜ?俺は弱い奴でも容赦しねえからな」
そう言って、ラモンはアイメルを床に下ろし、眼鏡の男に向き合った。