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これはもしもの話です。

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そう、これはもしもの話。


俺が帝人さんと出会ったのは、桜も散り終わった春も終わりの少し暑い公園だった。
春にしては日差しの強い温暖化の進む日本に多少の苛立ちさえ感じながら、俺、折原臨也は歩いていた。
特に何もない日だ。返却されたテストはとりあえず平均点以上だし、科学部の活動も今日は休み。天敵とも言える他校の金髪にも今日は会わない。いや、敢えて会わないであろうルートで帰宅を目指す。
やることもない、暇で、つまらないただの一日だった。

「あ、あぁ、あ、駄目だってっ。駄目、コラっ。」

文字にすれば少しばかり如何わしいセリフだけど、俺が実際に耳にした声はなんとも情けない声だった。
音源の方へ視線をやると、烏と格闘する一人の男。
くたくたのスーツに使い古したカバンを小脇に抱え、手に持ったアンパンを烏に奪われまいと抵抗してる・・・。

あ、今奪われてった。

「あー、あぁ…。僕の、昼ごはん。」
がくっと肩を落としたその男があまりにも漫画のようで俺は思わず噴き出した。

だって、まさか烏にアンパン取られる人を目撃することなんて一生に何回あるだろう!
いい大人が、必死に手で追い払おうとバタバタして、でも烏のが一枚上手で上手いこと持ってかれてる。
袋だけその手に残されて、半分以上あったであろうアンパンを加えて飛んでいく烏!
後に残るは肩を落とした惨めな男。

絵にかいたような滑稽な状況にツボってしまった。

くっくっく、と肩を震わせていると、足元に影が出来た。
「・・・そんなに笑わなくても良いんじゃないかなぁ、君。」
少し頬を染めて照れくさそうにした惨めな男がそこにいた。
否、近づいてみると思った以上に童顔で、大きな黒い瞳が羞恥心で揺れている。


ぞわり、と初めての感覚が背中を駆け抜けた。


それが、俺、折原臨也14歳と、竜ヶ峰帝人さん25歳の出会いだった。



「みっかどさーん!」
えいっと飛びつくようにタックルすると、案の定帝人さんはすごいよろけた。
倒れそうになりかけたのは右足で堪えてどうにか踏ん張ってる。
「ちょ。飛びつくのは禁止だって!・・・臨也くんまた背伸びてない?」
「うん!だって俺成長期だから。」
無邪気に笑って答えると、帝人さんは「そのままで良いのに…。」と呟いた。

最近気が付いたんだけど、帝人さんて若干ショタコン入ってる。
だって俺が「ん、なぁに?帝人さん?」て、微笑んでみせたらすぐに顔を赤くして「なんでもない。」って俯いた。
今だけは美少年に産んでくれた両親に感謝したい。

だけど、帝人さん。俺は俯いて見えた貴方のその首筋に噛付きたいなぁ、とか思ってるよ。

一目ぼれなんて信じてなかったし、今でも別にあれを一目ぼれだとか思ってるわけじゃない。
でも、出会いはまさしく運命ってやつだ。一目ぼれじゃなくてきっと前世からの恋だよ。
だって「笑ってごめんなさい、お詫びに昼飯驕ります。」と中学生の制服を着た少年の誘いに「え、あ、はい。」なんて答える社会人が他にいる?いないね、絶対。

帝人さんも少なからず俺に恋をしたんだと思う。

「帝人さん?」俯いてる顔を覗き込むと、帝人さんは仰け反るように顔を上げた。
「い、臨也くん、ち、近い。」
わからないふりをして「何が?」と答えると、帝人さんは一人で意識しているんだと思ったからか少し悲しげに「別に。」と答えた。

「観たい映画、なんだっけ。」
「最近話題の奴。んーと、洋画だから字幕と吹き替えあるけど、字幕でいい?」
そう聞かれて「もちろん。」と答える。そんな子供扱いはいらない。
映画はまぁまぁだった。洋画にありがちなちょっとしたラブシーンに『まずいっ』と顔して俺を見た帝人さんの顔が一番面白かった。
「今時、あれくらい小学生でも見るでしょ?子ども扱いしすぎーっ。」俺が頬を膨らませると、帝人さんは笑って「ごめん、弟とかいないし…。自分が中学生の時とか、忘れてるからさー。」と答える。

それは良かった。別に弟になりたいわけじゃないから。

14歳なんて一番性について貪欲な時だ、と。客観的にみて思う。
友人たちが借りられないアダルトビデオを誰の兄ちゃんがもってるだなんだで騒ぐのを、今まで白けてみてたけど、帝人さんに出会ってから俺もどうしようもなく興味が出た。

どんな顔で、どんな声で、どんな風に強請るんだろう。
一度妄想が始るともう止まらない。俺の中で帝人さんがどのエロビデオにも負けないくらいどろどろに汚れているのを帝人さんは知らない。

「お腹空いたねー。何食べよっか?」
綺麗に笑う帝人さんの瞳に、俺はいったいどう映っているんだろう。

**********

出会った瞬間から、警告音は鳴っていた。
俯いて震えていた肩が止まってゆっくりと顔を上げる、その動作が今でもスローモーションで思い出せる。
柔和に細められた目、弧を描く口元。
その綺麗さに目を奪われた、だから中学生の彼の「驕ります。」に僕は思わず「はい。」なんて答えちゃったんだ。

連れてこられたコンビニで彼があんぱんを持って「これで良いですか?」って言われて。
会計の時に小銭を出そうとわたわたする僕を後目に、彼はぴっと所謂電子マネーとかいうやつで払ってくれた。
そのあとは出会った公園で二人仲良くアンパンを食べた。
彼は思った通り中学生で、テストも終わって部活もない今日をどう過ごそうかと考えていたところらしく、情けない僕の姿を見て思わず噴き出してしまった、と話してくれた。
「なんでこんな遅い時間にお昼ご飯なんですか?しかもあんぱん。」
仕事の要領が悪く、今日も昼休憩のタイミングで仕事を押し付けられて昼食を逃し、外回りの僅かな時間にとりあえずカバンに入っていたあんぱんでも食べようとしていたことなんて言えなくて
ただ「ちょっとね。」と笑ってごまかした。
彼は帰る途中で、僕は仕事途中で、お互いにすぐに「じゃぁ。」という雰囲気になったけれど、彼が僕にスマートフォンを差し出した。
「教えてください、アドレス。」綺麗な少年に笑顔でそういわれて、僕に断る理由は無かった。

臨也くんに会うたび、警告音は大きくなっていく。
僕は自分が同性を好きになる人種であることはとっくに理解していた。
でも、好きなタイプはいつだって大人の男だったし、流されやすい自分を引っ張ってくれる人だった。
(ある意味臨也くんも引っ張るタイプだ。というか、振り回すタイプだ。)

少なくともこの感情は14歳少年にむけて良いものじゃない。

僕のような薄汚い大人に、そういう目で見られてると知ったらきっと臨也くんは僕を軽蔑する。
それが、少し怖い。


「みっかどさーん。」いつものように臨也くんが僕に飛びついた。
いつも通りじゃなかったのはその後だ。僕はバランスを崩しそのまま一緒に倒れこむ。
押し倒される形になったのに気が付いたのは僕の方だった。
「いてて、ごめんね帝人さん。勢いつけすぎた。」そう言って笑いながら謝る臨也くんのなんと近いこと。心臓の音が聞こえるんじゃないかと思うくらい僕の胸が鼓動している。
「だ、ぃじょぶ。」
どうにかそれだけ答えたのに、臨也くんはまだ僕の上からどく気はないらしい。