【再投稿】 渡り歩く理由は
「俺のために死ぬ覚悟があるなら、一度だけ抱かせてやってもいいですけど」
こうなったときの決まり文句だった。この台詞を花宮に言わせるほどの相手は、この言葉で引くような相手ではない。
「―――」
目の前の男は満面の笑みで肯定どころか本望だと言わんばかりの言葉を吐き出して花宮を抱き締める。
花宮は名前もよく覚えていない男の腕のなかで、大人しく、けれど嘲るように笑った。
そうして、よく知らない、なんの感情も抱けない男に好きなようにされる。けれど、その翌日から、決まってその男からの連絡は途絶えるのだった。
作品名:【再投稿】 渡り歩く理由は 作家名:すずしろ