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ぐらにる ディナー

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「遅れてすまない、我が姫。・・・・仕事で抜けられなかった。」
 恭しく、バカは頭を下げて、ニールの手にキスをする。家のクローゼットにあるものではないから、職場で営業用に使っているスーツなのだろう。金髪に碧眼の男には、よく似合うのが腹立たしい。
「仕事ならしょうがないさ。・・・てか、ジョシュアに案内させなくてもいいんじゃないか? わざわざ、俺の携帯端末まで取上げてさ。」
 ジョシュアは、ニールの携帯端末を拉致の証拠品として預かっていった。どこにも連絡がつけられない状態での船旅で、ニールは呆れたのだ。
「きみを攫う悪魔の機械など隠すのが必然だ。あれは、後日、お返しする。」
「当たり前だ。・・・てか、アナコンダはやめとけ。一チームでも捕獲は難しい。だいたい、幻すぎるだろ? せめて、ニシキヘビにしてやれよ。遭難すっぞ? 」
「ニールを拉致できなければ、ジョシュアに命じようと思っていたんだが、それほど幻なのか? 」
「無理じゃないか? 俺でも、アナコンダなんて最近、食ったという情報も耳にしていないぞ。」
「なるほど・・・さて、何をご所望かな? 我が姫は。」
「そうだなあ。シャンパンベースの軽いのがいい。・・・ここは、フランス料理か? 」
「いや、地中海料理だそうだ。たまには変わったものがいいと用意してくれた。」
 バカは、バトラーにカクテルを用意させると、カウンターに案内する。腰に手を回してエスコートしているのだか、手が熱い。おそらくは本社で何事かのアクシデントに対処して、終わったら急いでやってきたのだろう。今回は、長い休暇を用意できなかった。

 カチンとグラスを合わせて飲む。
「おめでとう、グラハム。・・・て、言われてもなあ。はははは」
「なんの、姫からの寿ぎの言葉ほど嬉しいものはない。・・・きみと巡りあった奇跡に感謝する。今回は遅れてしまった。・・・すまない。きみの貴重な時間を無駄にした。」
「いや、それほどでもない。のんびり船旅を満喫させてもらった。思わず、アナコンダの調理方法を考案してたよ。材料が豊富だと、いろんなものが作れて楽しそうだ。でも、食材がなあ。・・・・あれは無理そうだから、コブラでもいいな。コブラサンドは美味いぜ? グラハム。」
「・・・姫? そのようなゲテモノは、私の好みではないのだが? 」
「いや、東南アジアだと露店で売ってるぜ? 食べたことがないのか? 」
「スープやフライは経験があるが、サンドイッチはない。」
「そのうち味見させてやりたいけど、現地で捌いてフライにしなきゃなんないからなあ。出張で行ったら試してこい。」
「東南アジアか・・・・わが社のプラントはあるが視察する場所ではないな。」
「そりゃ残念。」
 誰も聞いていないからいいのだが、一般人が聞いたら卒倒しそうなメニューについて話していた。かなり格式の高い店なのか、準備が出来るまで、そこで軽いものを飲む。ニールは、マイスターと呼ばれるほどの実力のあるフードコーディネーターで世界を飛び廻って食材を確保する。対して、グラハムは、ニールの所属する会社のライバル会社の役員だ。おかしな縁で、おかしなことになって、うっかりニールが流されて夫夫になってしまった。だから、二人で、ゆっくり食事するのも普段は難しい擦れ違いな夫夫だ。とりあえず、グラハムの誕生日だけは、ふたりして食事をするという決まりを作ったので、どちらも、その日だけは休むことにしている。


 個室に案内されて、ほおっとニールは目を瞠った。海岸線に近いところを航行しているから、岸の灯りが目に入る。それは幻想的で美しい。グラハムのほうが、ワインリストから適当なものを選んで注文する。
「とにかく、連絡がつかない場所というのを考えたら、こうなった。ここなら、無理に呼び出しもできない。明後日、寄港先から飛行機で戻ればいい。」
「はいはい、それでいいよ。・・・あ、それなら携帯返してくれ。出社が遅れるって連絡しとかないと。」
「すでに連絡してある。・・・きみは、これから閉じ込めてしまう。私以外の人には触れられない。」
「それは、今夜から明日丸一日は爛れたことをやりたいってことか? 」
「そう希望する。もちろん、食事は用意させるが部屋からは出さないので覚悟したまえ、眠り姫。」
「はいはい。もう好きにしてくれ。あんたのお祝いが俺でいいなら安いもんだ。」
 前菜が運ばれて来た。コンソメゼリーで寄せられたシーフードやらマリネされたホタテやらが載った可愛い感じのものだ。まずは、シャンパンから、と、ふたりしてカチンとグラスを合わせる。

「愛しいきみと祝える幸せに感謝を。」
「年取っても、暴れん坊な亭主にお祝いを。」

 クスッと笑って、飲み干して、さあ食うぞ、と、ニールはナイフとフォークを手にする。グラハムは、それを鑑賞しつつ二杯目に口をつける。
作品名:ぐらにる ディナー 作家名:篠義