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綾瀬しずか
綾瀬しずか
novelistID. 52855
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とうまとあゆ~さまよう心~

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銃と細身の剣を自在に操り、不思議な力を持っている少女。その破壊力は悪魔的であるとさえ言われる。
が、そのすさまじい力に反して少女は優雅に長い黒髪をなびかせ、その動きはまるでprincesのようだといわれる。
その少女を守る少年。彼は時として青い鎧を身にまとい弓を自在に操ると言う。
彼はblue boyと言われた。
black princesとblue boy。
いつしか彼女達はその頭文字を取ってB.Bといわれた。
B.B。
いまや、数え切れない闇の組織の中でこの名前を知らないものは誰一人としていなかった。

征士とナスティ、迦遊羅は一緒に考え込んでいた。目の前には同じものが三つ。当麻が三人に手渡した発信機、盗聴機、無線がワンセットになったものである。
当麻の発明品である。コンパクトな割に高性能だ。
だが、そんなものが必要になる事態が起こっているとはにわかに信じがたい。
当麻と亜由美は今、この家にはいない。
ある時、突然、ナスティの別荘に行くと言ったのだ。
「ほとぼりが冷めるまで謹慎させておく」
それだけ言って当麻は亜由美を引きずっていったのだった。

red killer。
その言葉を当麻は苦々しく噛み潰した。
数ある闇の組織の中でも名だけが知られている暗殺集団。確実に狙った獲物は逃がさないという。そのターゲットが今や自分達だ。
「組織の中でも最大と言われる"黒い狼"が動いた。red killerに暗殺を依頼したらしい」
そう錦織が言ったのだ。
「まったく、こいつは自分の命を粗末にすることしか知らないのか?」
傍らで静かに寝息を立てて眠る亜由美の顔を苦々しく見る。
ここはナスティの別荘だ。皆を巻き込まないように二人でここに移った。
亜遊羅として覚醒したこの少女はその魂が永遠に生き続けるように術がかけられてある。
そしていわゆる悪というものから世の中を守る使命を持っている。彼女の一族が扱ってきたのは唖呪羅と言われる悪だが、総じて時の流れを見守る事になっている。
歴史と言う時が間違いなく動くように見守り、邪魔者が入ったときは手入れをしなくてはならない。
とてつもない運命を背負わされたこの少女は覚醒してからどことなく生きることを放棄しているようだった。
死んでも魂は生き続ける。死んだら皆と関わることがなくなって皆を巻き込まなくてすむ。
一石二鳥だ、とこの少女は言った。
亜由美がいない人生などいらない、と当麻は散々言っているが、効果はない。
死んだら、いずれ忘れるから心配ないというのが彼女の見解だ。自分などたいした価値はない。
そう思っているらしい。
忘れられるわけないだろう?
当麻は声なき声で語り掛ける。
俺はお前が好きなんだぞ。愛してさえいるのに。側にいると約束しただろう?
お前が死んだら俺も死ぬ。
そう脅してなんとか生き永らえさせているのが現実だ。
そう、と当麻は呟いた。
「お前が死んだら俺も生きては行けない」


 当麻の必死の対策にもかかわらず亜由美は囚われてしまった。当麻の目の前で連れ去られる。痛めつけられた当麻の姿が目に焼きついていた。それから目隠しをされて誘拐された。
来たのはどうやら海外の様だ。古い城を改造したところに亜由美はいた。交わされる会話からドイツの様だとわかった。
 ある部屋で男が詰め寄った。こいつがなにかたくらんでの誘拐劇らしい。亜由美はぎっとにらんだ。
「君も頑固だね。大事な恋人がどうなってもいいのかい?」
暗殺を頼まれたはずだがどうやら“黒い狼”は考えを変えたらしい。
「その力を私達に貸してくれさえすればいいのだよ。君のそのすばらしい力があれば私達は世界を征服できる」
「そんな馬鹿げたことに私が力を貸すとでも?」
人を小ばかにした様子で亜由美が言う。
いきなり男が力任せに亜由美の頬をたたく。いすに縛り付けられていたためふっとぶことはなかったがそうとうの力でたたかれ、亜由美の顔ははれあがった。それでも亜由美はぎっとにらみつけたままだった。
「いいのかい? 君の恋人を本当に殺してしまうよ? red killerは必ず君の恋人を殺すよ」
穏やかな、だが陰惨な響きを持って男がつげる。
「当麻は死なない。私が守ってみせる」
亜由美は断言した。
そうかい?、と男は面白そうに言う。
グラスのワインを口に含むと無理やり亜由美の口に含ませる。むせ返る花の香りが亜由美の意識を狂わせていく。
「black princes。これが私の家に伝わる悪魔のワインだ。恋人を殺すのは誰でもない。本当は君なんだよ」
男が楽しそうに呟いた。

「あゆ!」
当麻は部屋に駆け込んだ。男がゆっくり笑う。
「ようこそ。blue boy。待っていたよ。これから面白いショーがある。楽しんでいってくれると幸いだ」
「あゆはどこだ?!」
当麻が叫ぶ。
「おいで。私のblack princes」
男が手招きすると黒いドレスを身にまとった亜由美が現われる。
男は亜由美をかき抱くと当麻の目の前で唇を奪う。
当麻が歯をぎりぎりいわす。
「さぁ。あの少年を殺して、今度は私に仕えるんだ」
亜由美はふらふらと前に出ると剣を構えた。
「あゆ! 俺が分からないのか? 当麻だ。お前の許婚だ。忘れたのか?」
当麻が剣をかわしながら叫ぶ。
亜由美を相手に戦うわけには行かない。しかも意識がない。
俺はこいつを守るためにいるんであってこいつを傷つけるためにいるんじゃない。
ましてや殺すわけには行かない。
当麻はふっと動きを止めた。
「俺を殺すか? お前に殺されるなら本望だ」
当麻は告げた。いつかの日、告げた言葉だ。
「おやおや。自分から死んでしまうのかい? 君が死ねば彼女は私のものだよ」
男が面白そうに言う。当麻は耳を貸さない。
「俺はお前を愛している。お前に殺されるのなら文句もない」
亜由美の剣を持つ手が震えた。やはり、術に抗おうとしている。
そう。あゆはどんなときでも俺を殺さない。だから逆に殺せと言えば動揺する。それは亜由美を現実へ引き戻すきっかけにもなる。
「あゆ」
と当麻が名を呼ぶ。誰よりも深い思いを込めて。
「愛している。どうしようもないほど」
戻ってきてくれ。
言葉にならない思いを伝える。
その言葉に亜由美が反応した。
曇っていた瞳に光が宿って当麻を見つめる。
「と・・・うま?」
自分が何をしようかと気付いてあわてて剣を離そうとする。
が、思うように体が動かない。
男が小さく呪文を唱える。
亜由美の体がびくん、と動く。
瞳がまた光を失う。
剣が当麻の喉元につきつけられたかと思うと亜由美は自らの腹に剣をつきたてた。
「あゆ!」
当麻が驚き、とっさに剣を抜く。噴出した血がドレスをぬらす。
「大丈夫。ちょっとした傷だから・・・」
抱く当麻の腕の中で切れ切れに亜由美が言う。当麻を押しやって離れると、振りかえって亜由美は男に言う。
「あいにくさま。あなたの手に踊るような私じゃないわ。当麻は私が守ってみせる」
剣を拾った亜由美はそう言うとすばやい動きで男の動きを止めて剣をつきたてた。
だが、男はなおも面白そうに笑っている。
「この現代は便利でね。こういうものがあるんだよ」
男はゆっくり片手をあげると亜由美のこめかみに銃をあてた。