機動戦士ガンダムSEED⇔ 第一話 「ヘリオポリスのアスラン
ガンダムSEED⇔ phase1「ヘリオポリスのアスラン」
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1月25日
『戦争が始まってから11ヶ月が経過した……。
父と決別してから2年になるだろうか。
ヘリオポリスに来てからの日々は楽しいが、ただ父のことだけが気がかりだ。
オーブ本国に近い、カオシュンが落ちたらしい、父は、プラントは一体いつまで戦争を続けるつもりなのか……。
……そう言えばイザークがフレイに手紙をもらったらしい。
珍しくイザークがからかわれていた。 』
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人工陽のあたるキャンパスのベンチで、アスランは・ザラはタブレットPCのキーを叩いていた。
中立国オーブのコロニーである、ここヘリオポリスに来てからというもの、
日記を書くことは彼の習慣となっていた。
『15で成人を迎えるプラントと比較すれば、
今でも学生をやっている事は不思議なものがある。
だが、今でも父の元にいればザフトで人殺しをやっていたかもしれない……』
アスランはふと手を止めて、 タブレットの画面に、テレビウィンドウを表示させた。
画面にニュース番組が映し出され、
キャスターがオーブ本土に近い、東アジア連邦領カオシュンでの戦闘の様子を伝えていた。
『一応は中立国ということにはなっているが、オーブも結局のところ地球連合の各国と安全保障条約を結んでいる。 勿論、プラントと不戦条約も結んでいるのだが……いざとなればどうなるかはわからない……』
アスランはニュースを見ながら、日記を追記した。
そして、戦争の影を感じさせる重いニュースに、アスランは思わずため息をついた。
そんな時、彼の脳裏に嫌でも浮かんでくるのは、自分の家族のことであった。
『俺の母は…双方の和睦のために活動していた。 ……しかし、母はナチュラルに撃たれた。
そのころから遺伝子至上主義者として知られていた父を凶弾からかばって…死んだのだった』
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アスランの母は3年前に死んでいる。
反コーディネイターの人々の集まりであるブルーコスモスの活動が激しくなり、プラントと地球との間に激しい抗争が起きたときだった。
「マンデルブロー号事件」といわれる一連の騒動は、後にプラントの軍事化、プラントと地球との急速な関係悪化を招くことになる。
アスランの母はこの事件が原因で死んだ。
アスランの母はその時、プラントと地球の間を取り持つ、穏健派の立場をとっていた。
しかしながら、彼の夫、パトリック・ディノは、遺伝子の優劣こそが人間の価値を決めるという遺伝子至上主義者として知られ、その後に事実上のプラント国軍であるザフトを創立をした一人でもあった。
アスランの母、レノア・ディノは、パトリックをテロリストの凶弾から守る為に死んだ。
マンデルブロー事件の沈着化の為に、彼らが地球に降りたときであった。
その時は今のような本格的な戦争には至らなかった。
しかし、レノアの死によって地球、プラント双方に決定的な楔が打たれたのは確かだった。
それは、勿論、アスランの父、パトリックにも。
その日からアスランの父は変わった。
プラント――コーディネイター達の住むコロニーの有力議員であったパトリックは、
ナチュラルである人々――地球に住む遺伝子改良を受けてない人々と
徹底抗戦する体制を作り上げたのである。
その頃はまだ14歳の、幼さが残る少年であったアスランだが、
コーディネイターにとっては兵士となれる歳であった。
当然、彼も亡き母の仇を討つために父と共に戦うことを求められた。
――しかし、アスランは父に従いきることが出来なかった。戦うことが正しいことと信じられなかったのである。
そして、『アスラン』は『アスラン』となった。
母の旧姓、ザラを名乗り、本名である『アレックス・ディノ』を捨て――アスラン・ザラとなったのである。
作品名:機動戦士ガンダムSEED⇔ 第一話 「ヘリオポリスのアスラン 作家名:内山ワークス