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無自覚角度

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「それって、相手の身長じゃなく見上げる角度の問題デショ」

小学校の算数か理科でわかる話だし、中学の数学や高校の数学でだって角度にまつわる授業があったはずだ。
けれど、その言葉の意味をその場にいた三人は理解できなかったようで、だからといって月島にはわざわざ説明する義理も気力もなかった。
角度は、対象物との距離で決まる。同じ高さのものを見上げるとしても、その対象物との距離で見上げる角度が違う。
単純に、谷地は月島や山口と話すときと影山と話すときの距離が違うのだ。それも、互いに無自覚で。
日向は谷地と身長が近いため、最初から距離が近くてもあまり見上げることがなくて気づかなかったのだろう。
無意識に近い距離で話しているなんて女の子であればかわいい話だ。しかし、距離は二人の間に生じるもので一方が近づくだけでは縮まらない。
谷地と話す距離が近いということは影山がそれを許容していることに他ならない。意外にも、パーソナルスペースの広い影山が、だ。
みんなの輪から外れながらどこか嬉しそうな表情でボールに触れている影山を見て、月島は誰にも聞こえない小さな声で呟いた。


「あー、砂糖吐きそう」

作品名:無自覚角度 作家名:すずしろ