Restart
◇ ◇ ◇ ◇
同年代ばかりの大会の中でも静かに目立つ男がいる。七瀬遙はギャラリーの中から手を振る仲間に視線で返事をして、凪いだ湖面に浮かぶ木の葉のように、また視線をどこへともなく漂わせた。静かでもないがうるさすぎるわけでもない、試合の空気がモチベーションを引き上げる。すぐそばにある水が自分を呼ぶ。あっという間の邂逅を。
その孤独で神聖な集中を途切れさせて、目が覚めるように顔を上げた。
「山崎!」
珍しい名前でもないのに、なぜだか気になって目を向ける。視線の先で健やかな肩をゆっくり回していた男が振り返る。
山崎宗介。間違いなかった。黙ったまま、視線が絡み合う。そして男は口角を釣り上げて不敵に笑った。
「そうか……」
男と同じように口元をゆるめて、すぐにまた遙は自分と水の世界に集中していった。