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いつき りゅう
いつき りゅう
novelistID. 4366
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悪魔の国のアリスティル

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      * 悪魔の国のアリスティル *

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「もうすぐ11月かぁ…」

溜まっていた日めくりカレンダーを一気にちぎった時に、そんな事を小さく呟いていた覚えがある。
あの時特に気にしなかった事、僕は今少しだけ後悔してた。



出かけるよと、ほぼ無理やりに彼に連れ出された僕は、着いた場所に用意されていた僕のモノらしき衣装に袖を通した。
白いカッターシャツに黒の燕尾服。
胸元のポケットにはハンカチーフの代わりに銀の懐中時計。
子山羊の手袋に…何故、付け耳?
真っ白で長い付け耳は多分ウサギを模したモノ。
若干抵抗はあるものの、これが間違いなく本当に僕用に用意されたんだとしたら、全部身に着けないと確実に彼は怒るのだろう。

無邪気で朗らか。
明るく社交的な彼は茶目っ気も持ち合わせてるものだから、時たまこういった突拍子もない破天荒な事に他人を巻き込む。
意に沿わなかったと言って声を荒げる事はないけれど、怒るのだ。にっこりと笑って。
怒鳴るでもなく、手を上げるでもない。
ただ笑顔で相対しているのに、空気が重くなり背筋に寒気が走る気がする。
そしてさり気なく、けれど明確に言動に毒が混ぜられ、決して視認できない何かが的確に胸を突いて来るのだ。

…それに比べたら、一時の恥がどれほどの物だろう。

しつらえられた全てを身に着け、姿見で確認する。
首から下は至極まともな正装姿なのに、全体を見るとどうしても頭のウサ耳が異彩を放つ。

ウサギ、懐中時計、燕尾服。
これはもしかして、『時計ウサギ』というモノの格好なのではないだろうか?
何故、『不思議の国のアリス』?

10/31はハロウィン。それ位は知っている。
仮装パーティーの様な事を匂わせていたけれど、ハロウィンの仮装というのはモンスターやゴーストの類ではなかっただろうか?
何でまたこんなポピュラーでメルヘンなモノを僕の衣装にしたのやら…と、詳細を話す事なく強引に付き合わせた彼、山田真吾への軽い愚痴を胸の内で呟き、更衣室を出る。

「よぉっ。ダニエル」

控え室に足を踏み入れた僕に声をかけた相手はソファーに腰掛け、
いとも優雅な仕種でカップの中に注がれた紅茶を味わっていた。

「メフィスト二世?お前も来てたのか?」

一万年に一人と言われる救世主。
『悪魔くん』と呼ばれるその存在が何の因果か、この同時代に三人も存在している。
そんな異例の事態にも関わらず、それぞれの悪魔くんは従者である僕らが肩透かしを食らう程にお互い友好的な関係を築いている。
どちらかと言えば反りが合わない僕と彼、メフィスト二世が反目しあうのを本来対立してもおかしくない悪魔くん達に仲裁されたりすると、どうにも調子が狂う。

「君がここにいるって事は…埋れ木も共謀者か?」

彼が自分の掲げるメシア、埋れ木真吾を放って置くとは考えられなかった。
ほぼ確信をもって問うた僕に視線を向けず、一度頷くだけで彼はまた紅茶を口に含んだ。

そんな彼はというと、シルクハットにタキシードにマントと、一見しただけでは普段と同じ出で立ちの様に見える。
それでも蝶ネクタイがチェックの柄だったり、シルクハットに『$10』と書かれた値札がついていたりと、細かな違いがある所を見ると、あれが彼に割り当てられた役柄の衣装だろう。

「『いかれ帽子屋』か?」

「いかにも、兎君」

芝居掛かった口調で返して、また紅茶を一口。
三月ウサギ達もいないのに、一人でお茶会とはね。


「…で、今回の首謀者達はどこに?」

問い掛けたそのタイミングを見計らう様に、僕らの背後の更衣室へと続くカーテンがシャッと軽い音を立てて開いた。

「お待たせー」

楽しげな悪魔くんの声に振り向く僕らは、あまりの驚きに目を剥いて絶句した。

更衣室から出て来た二人。
髪色と同じ、背中まである茶色の長いカツラに大きなリボン、白いタイツにエプロンドレスと、スタンダードなアリスの扮装をしているのが埋れ木。
慣れぬ格好に恥じらって俯きがちになっている彼とは対照的に、さも楽しそうな笑みを浮かべて埋もれ木に寄り添いながら僕らを見ているのが僕の悪魔くん、山田真吾。
カツラは無いものの、頭のリボンにフリルの白いエプロンに加えてパフスリーブの袖はまさしくアリスの扮装。
なのに。

「…なっ…ぁ…っ!?」

捻った身体から覗く背面は大きく開いてその白い背中を惜しげもなくさらけ出し。
エプロンに隠れたスカートは、傍らの埋もれ木の膝下丈のスカートよりももっと短いミニフレア。
スカートを膨らませるフリルの中からスラリと伸びた足を覆うニーソックスを吊り上げ留める、ガーターベルトに手首にはカフス。

あ、ア、アリスーーっ!?
な!何だこの露出度っ!?
幼さよりも色気を強調される様な悪魔くんの衣装は、隣りの正統派アリスと比べるとなおさら全く印象が違っていて。
あまりの驚きに固まりつつも、思わず赤面する僕らの視線はお互い自分の悪魔くんに釘付け。

「どう?可愛いでしょ?ほら。真吾君やっぱり似合うって」

なんて、余裕の表情を浮かべる悪魔くんと違って、傍らの埋れ木はスカートを抑え所在無さげにしている。
特に、注いでいた紅茶を零した事にも気付かない程に凝視している僕の背後の二世の視線が耐えられない様で、居心地悪そうに彼から視線をずらしていた埋もれ木の目にはだんだん涙が浮かび始め、顔を真っ赤にして肩を震わせている。

「あ…悪魔く…」

おずおずとかける言葉を模索して言い淀み、メフィスト二世が埋れ木へと手を伸ばしかけると。

「うっ、ひぅっ!!」

ピィ〜ヒョロロロォ〜ッ!

二世の指先が届く寸前に、弾かれた様にどこからともなく取り出したソロモンの笛を高々と吹き鳴らす埋れ木。
悪魔を支配するソロモンの笛の音に、この場にいるただ一人の悪魔メフィスト二世は絶叫を上げてのけぞり、床へと倒れこんだ。
苦悶の表情を浮かべてもんどりうつそれにすら背を向けて、踵を返す勢いになびくカツラが外れなかったことが不思議なくらいの勢いで脱兎の如く駆け出す埋れ木。

「あ〜ぁ…真吾くん逃げちゃった。どーしてくれるの?
 責任持ってちゃんと連れておいでよ、Jr.?」

「おっ!俺のせいかーっ!?」

俺が何したってんだよ、とダメージの残る身体を起こした二世が抗議の声をあげる。

…馬鹿だ。
お前が今反論したのが誰か分ってるのか?
案の定、僕の前に泰然として立つアリスは、それはそれは冷たい目で床の上の彼をねめつけた。
その視線に縫いとめられた様に動きを止める二世は、さながら蛇に睨まれた蛙状態。
いや、ハートのクイーンに睨まれたトランプの兵隊か?

「何言ってんの?自分がどんな目で真吾君見てたか分かってないわけ?
 鼻の下伸ばして舐め回すように凝視しちゃってさぁ…いやらしい」

侮蔑も露わに悪魔くんに言われた事は二世にも思い当たる節が無い訳ではないので、うっ!と口を噤んで言葉を詰まらせた。