うたをうたう 1
ああ、やべぇ。
脳味噌が動くよりも先に身体が動いて腕を伸ばして赤いチャイナ服からのぞく白くてほそっこい腕を掴んで引き寄せて抱き締めて、そんな彼女の手から傘がばらんと落ちた。
ああ、やべぇ。
覚悟を作る前に触れて抱き締めたその身体は小さくて柔らかくて壊れなくて脆くなくてでもちょっとだけ震えていた。
ああ、やべぇ。
自分の心臓の音を聞くのに必死すぎて余裕が無くて胸が痛くてそしたら背中も痛くて嗚呼抱き締め返されたのだと気付いた瞬間はようやく訪れる。
ああ、やべぇ。
本当に、心臓爆発するかも。
世界じゃそれを愛と呼ぶんだぜ!