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ゆち@更新稀
ゆち@更新稀
novelistID. 3328
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うたをうたう 1

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花冷えの嵐が散らかした雲と桜が、空に散らばり、地面に散らばる。
足元の水溜りに咲く満開を、ぱしゃん、と乱暴に別れ別れにさせた。

――意地悪ね、十四郎さん

「土方さん」
「あ?」
「差し入れでさァ」

――あら、そーちゃん。口の周りにお弁当がついてるわ

「差し入れって、弁当の空箱か」
「いいえ、その袋に入ってる紅しょうがです」
「トシィ!総悟!」

――近藤さん、顔が腫れてるわ。どうしたのかしら

「アンタも大概学習しねぇな・・・・」
「何を言うんだトシ!嫌よ嫌よも好きの内だろ?」
「「いや、だから嫌なんだろ(でしょう)」」

ひらりひらり、音もなくゆっくりと踊りながら落ちてきた花弁が、黒の隊服に飾りをつけた。

「もうすっかり春だなぁ。そうだ、花見は何時にしようか」
「気が早ェよ。まだ五分咲きだ」
「別に桜なんてどうでもいいですぜィ。酒が飲めりゃ、それで」
「お妙さんが居れば、それで」
「てめェらに花見をする資格はねぇ」

口に咥えた煙草を離して、紫煙を空に吸い込ませる。
じゃりじゃりと靴底を地面に擦り付けた。

――煙草のポイ捨ては駄目よ?おまわりさん

「おら、屯所に戻んぞ」

――いってらっしゃい、頑張ってね


さよなら ただただ 愛しき日々よ


作品名:うたをうたう 1 作家名:ゆち@更新稀