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Last/prologue

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最終話「Last/prologue」









サッカー部設立の許可が下りた数日後、H大サッカー部、FCH大は始動した。
11月30日の事だった。

思惑通り部活棟横のグラウンドをもらうことができ、
部室として部活棟の1階の一番右端の部屋を与えられた。
そこは使えなくなった体育用具置き場となっており、
部活初日、サッカー部の面々はそこを掃除するはめになった。

「ったくもう。埃くさすぎやで。」

「文句言うなら教務課の人間にいいなよね。大体そんなこと言ってる暇があったら手を動かせっての。」

椎名が不燃用ゴミ袋にぺしゃんこにつぶれたサッカーボールを放り投げる。
ほかにも今にも切れそうな綱や、へし折れたバーなどがあった。


「そないなこといってもここ掃くん大変なんやで椎名。埃で視界が悪いわ。」

「そうね…たしかにちょっとやばいかも。」


藤村の言葉に、小島が口ぞえする。
二人は砂と埃だらけの床と壁を掃いていた。

窓は全開にしてあるが、それでも追いつかないほどに埃と砂がすごいのだ。
げほげほ、と椎名が咳き込む。

「大丈夫ですか?椎名さん!」

「椎名じゃなくて翼!!いつなったら覚えるんだ将。」

「あ、すいません翼さん…。」

風祭と不破は掃かれた床にぬれ雑巾をかけている。
不破は完全防備マスク着用だが、ほかははタオルで口をふさぐか
なにもしてない状態だ。

「だーっ!!!もう!!埒があかねぇ!!」

「ちゅうか、水野は?」

「水野は教授から呼び出しだってよ。もうそろそろ来るんじゃねぇの?ってかさ。」

椎名がまたボールをバスっと袋に放り込む。

「何でお前らまだ苗字で呼び合ったままなんだ?」

とっくに事件は解決してんだろ?
水野の記憶は戻ったし、二人のあいだにあった誤解もわだかまりも解けて
真実が明らかになった。
なら昔どおり名前で呼び合ったっていいじゃないか。

「いやなぁ…水野はともかく、俺が忘れてもうたからなぁ。あいつをなんて呼んでたか。」

「なら水野だけでも名前で呼べばいいじゃねぇか。あの時みたいに。」

ーーシゲーーと。

「それは恥ずかしいからいややねんて。」

藤村が苦笑する。
その顔にはどうしようもないなぁという雰囲気があふれていた。

「…………ふーん。」

納得した、とは言いがたい椎名の声だったがこればかりは仕方ない。
本人が拒否するのだから。

その時

「悪い!遅くなった!!ってうわ!?」

走ってきたのかいきなりドアを開けて水野が驚く。
目の前に広がる埃と砂の世界に思わず口をふさいだ。

「……これ、何?」

「……掃除の結果。」

シゲがつぶやいた。








その後、ぶちきれた椎名が全員にまず廃棄するものと保管するものの仕分けをするように言い渡した。
壁や床の掃除はやらない。もういやだ。
じゃぁ、どうする?

ーーーー水をぶっかける。

部屋の中にあった多くのものを廃棄し、残ったボール籠やボールを外へ出す。
バケツの中に水を組んで、部屋の中に撒き散らした。

「うわ!」

「そんなところにいると水ぶっ掛けるからね!」

椎名がどんどん水をかけていく。
部屋自体はコンクリートなので問題ないのだが、明らかに椎名は人を狙っていた。
シゲ、水野、風祭。
紙一重でさけるものの飛沫が服にしみを作る。
11月終わりのこの寒さにそれが少しだけ堪えた。

「もうやめろって椎名!」

たまらず水野が叫ぶ。

「そうだな。あらかたぬらしたし…全員デッキブラシ装備。磨くぞ。」

水のおかげで誇りはだいぶ収まった。
けれどにごった水が床に水溜りを作る。

そして面々は、その後デッキブラシを手に床や壁を磨くことに従事した。
再び水をかけ洗い流す。
途中バケツに嫌気が差したのか椎名がとこからかホースを持ってきて
部室に水を撒き散らした。


「これでまぁ…なんとかなったかな。」


「乾くまでどないすんねん。」


「そんなの決まってるだろ?」


椎名がまだ使えるサッカーボールを手にし、笑う。
かくしてFCH大サッカー部の3on3が始まった。


風祭、不破、椎名VS小島、藤村、水野

ゴールキーパーはなし。
コートを半分だけ使ったバスケの真似事3on3



「藤村!!」

水野が中央からパスを出す。
絶妙なタイミングでシゲがそれに反応した。

「一点ゲットや姫さん!!」

「それはどうかな藤村!」

藤村のシュートに、椎名は反応しなかった。その後ろで待っていたのは不破。
不破が右足でボールをクリアーする。

「甘いな。」

「っちセンセーがおったか。」

「しっかし水野いいパスだすな。伊達に武蔵森の元10番ってわけじゃないか。」

「藤村の反応がいいからだよ。」

水野がわらう。
周囲は、それが水野の謙遜だと思ったのだがそれは違う。
本当に藤村とそれ以外のやつだとパスの通りが違うのだ。

中学でも高校でも、それなりに強いメンバーとやってきた。
けれどこんなに痛快にパスが通る人物は藤村しかいない。

サッカーが出来て幸せだと思った。
あのころと同じようにボールを必死に追う自分。

今度は、仲間と一緒に…………






作品名:Last/prologue 作家名:神颯@1110