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Last/prologue

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「いえ…出来れば院に進みたいです。あともう一つ視野に入れてるのは留学で。」

「あぁ自分国際教養やもんな。英語はお得意やし。」

「もっと…世界でいろんなものを見れたらいいなって思うんですよ。」

「すごいなぁほんまに。」

「いえ………」

水野がそういったとき、
後方のドアが乱暴なまでに開けられる。
開けた人物は至極不遜な態度でこう言った。

「うわ、吉田が居る。」

「うわってななんやねん。」

「いや、めずらし過ぎだし。なに就職諦めた?」

「諦めとらんっちゅーねん。」

椎名と吉田は同級生だから、更に仲がいい。
久しぶりの会合に二人は毒舌混じるトークを展開していく。

「そういえばお前の言ってた奴に会ったぜ。最初はきづかなかったけど。」

「あぁ藤村に会うたん?」

その言葉が出た時水野がピクリと反応する。けれど回りは気付かない。

「中々面白かったぜ。あいつサッカー出来るみたいだからサッカー部に誘い込みたいんだけどよ。」

「サッカー部?」

「そ、水野も俺も高校までサッカーしてただろ。マサキもそうだし。
サッカー部無いから作ろうって話になってさ。そんなとき藤村とあってさ、
あいつサッカーのこと絶対好きだぜ。じゃなきゃあんな本読んでないね。」

「何読んでたん。」

「ドイツW杯の特集本。」

「そっかー…でもなー…んーー…あいつなー………無理やと思うで。」

「なんで。」

「あいつ実家が京都の老舗呉服屋やねん。あいつあんなんでも次期当主なんやて。
今政経におるんのも当主になる為に必要っちゅうことで親父さんがむりやり入れたらしいし
好きなことあっても、自由には出来へんのとちゃうかなー。
断らんかった?藤村。」

「いや、ばっさり振られたね。」

なぁ?と椎名がこっちを向く。
うなずく。確かにサッカーする気はないと言っていた。
しかしその裏にそんな理由があったなんて思いもしなかった。

断った理由がこれかどうかは不明だが
吉田によると老舗呉服屋の次期当主という事実だけは確かのようだ。
そんな堅苦しいところとは全く無縁に近い容姿をしているくせに。
わけわかんねぇよ。
女遊びしてまでしてるのは親父への反発か?
俺はそれに利用されたとでも言うのか?

心なしか、ムカつく。


「おい何勝手に話しとんねん。」

「?」


噂をすれば影。
振り返ったら奴が居た。
驚き100倍。怒り1000倍。

「藤村!なんでおんねん。」

思わずノリックが突っ込む。

「まぁ…なんとなくやな。お前が居ると思うたし」

椎名とサッカー部ことも話とらんさかいに。
と藤村は続けた。

「何?やる気になってくれた?今の吉田の話だとお家事情がかなり厳しいみたいだけど。」

「あほ親父は京都におるんやで。プロになるとかならともかく部活程度でばれるかい。
単純にめんどかっただけや。やけど………」

藤村が朝と同じ服で歩いてくる。しかも水野に向かって。
それが感じられて思わず後ずさった。
あんなことをしたなんてここに居る奴らにはばれたくない。
絶対に守り抜かなければならない秘密だ。

「水野」

「……なんだよ。」

「お前ポジション何処やねん」

「……MF」

「高校どこ?」

「武蔵森」

ふーんと藤村がつぶやく。
雑誌にそこそこ取材はされる程度には、武蔵森は全国レベルだった。
だからもし藤村がサッカー雑誌をまめに読んでいるとしたら
目にしないわけでもない。知っているのだろうか。こいつは。

「姫さん、コイツとサッカーやって、おもろかったらサッカー部作るの協力したってもえぇで。
俺に就職活動はないし。」

「…水野、できる?」

「無理」

即答した。
思わず視線で睨みつける。
お前…昨日自分が何したか覚えてないなんて言わせないぞ…
こんな状態でサッカーだと?
出来なくは無いだろうがやりたくないのが本音だ。


「なに?柔なボンにはあんなんでも辛かったん?それとも何か?怖いん?」

「…!!!」

吉田の中で一つ疑問が浮かぶ。
藤村は昨日女と寝ていたはずだ。会話がそう物語っていた。
けれど………もしこれが水野だったら?
この会話が、成り立つ。

「1対1で俺からボールとってみぃ。そしたらお前の勝ちや。」

「……後で吠え面かくんじゃねぇぞ。」

自分は強豪武蔵森で1年の時から10番を努めてたんだ。
お前がどんなに強かろうとそんな簡単には負けない。

「ほなグラウンドへいこか。」

吉田は何故か確信に近いものを得て笑う。
そうか、藤村に出来たのか。執着すべきものが。
ここに来たのだって、自分が居るからやない。水野君が居ると思ったからや。

「俺らも行こか。皆で観戦しよ。」

「そうだな。マサキも呼ぶか。」

椎名が携帯を手にした。
騒ぎを見ているだけだった外野もその雰囲気につられて教室を出る。


俺は、怒り1000倍なんだ。


かくして推理小説研究会は本日お休みになったのである。







作品名:Last/prologue 作家名:神颯@1110