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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 20

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 ヒナは目に熱くこみ上げてくるものを感じた。
「誰もヒナさんを責めるなんてしませんわ。私達に、デュラハンを倒すための力を授けてくださったのですから」
「オレはどうやら七年は子供を作れないみたいですが、気にしませんよ。どうせ当分そんな相手なんていませんから。それよりも、オレは自身に宿る力を物にしたい。自在に操れるようになって、イリスとシバを必ず救い出したい。もちろん、世界をデュラハンなんかの好きにはさせない……!」
 メアリィの優しい言葉、そしてロビンの決意に満ちた言葉に、ヒナはついに堪えきれず、目に熱くこみ上げる涙を流した。
「……みんな、お人好しよ……」
 ヒナは涙声で呟く。
「……そのためにはヒナさん、あなたの力も欠かす事はできません。どうかこれからも、オレ達みんなに力を貸してください!」
 ロビンはヒナに向け、手を差し伸べた。決意のこもった碧い瞳をしながらも、表情は笑顔である。
 ヒナは装束の袖で涙を拭き、鼻をすすってその手を握りしめた。
「ありがとう、ロビン、みんな……。あたしも、妹を救いたい……。今はもう、リョウカじゃないけど、イリスは、シンと同じように大切に育ててきたわ。そんな大切な家族を、どこの馬の骨とも知らない悪魔ごときに、絶対に渡さない……!」
 涙で赤くなった目に、ロビンのようにヒナも、決意を込めるのだった。
    ※※※
 ジパン島北部、エゾ島。
 全てが滅んだこの島にて行われた、シンとジャスミンの激しい修行により、島はほぼ焦土と化していた。
 二人の修行もついに佳境に差し掛かり、同時にデュラハンら、世界を滅ぼさんとする計画も実行段階になろうとしている。
 そんなある夜、シンとジャスミンは塒とした洞窟で休んでいた。
 焚き火は先ほど消し、一切の光ささない洞窟は、まさに手探りでなければ何も出来ないほどに暗い。洞窟の奥側にジャスミンが、出口付近にシンが寝ていた。
 もしも魔物に寝込みを襲われたときに、真っ先にシンが狙われるようにして、ジャスミンを守る、というシンなりの厚意による配置であった。
 しかし、これはジャスミンにとっては少し厄介な心遣いであった。まさに一寸先は闇という空間では、おちおち外に出る事も難しい。シンをうっかり踏んでしまう危険があったからである。
 そして、この夜更けに外に出る用事など決まっていた。
 ジャスミンは体を起こし、足先で足下を、手元は手探りで洞窟から出ようとした。
「あいたっ!」
「ああ、ごめんなさい、シン」
 うっかりシンの足首を踏んでしまった。ジャスミンは外の魔物に気付かれることのないように、声を抑えて詫びる。
「何だ、ジャスミン、小便か? あんまり遠くまで行くなよ……」
 シンはそれだけ言うと、すぐに寝入ってしまった。
「……もうっ! デリカシーがないんだから……」
 年頃の少女に向かってこの言い草は、ジャスミンには腹立たしいやら、恥ずかしいやら、ごちゃごちゃな気持ちにさせるものだった。
 ジャスミンは外に出ると、手頃な岩陰を探し、そっと用を足した。
ーーあれ、そう言えば……ーー
 ジャスミンは終えると、そそくさと下着を履きながらふと、思い出し、履きかけの下着に目を凝らす。
 さすがに、薄い汚れはあるものの、時がきていればそこには、血の跡があるはずであるが、見当たらない。
ーー最後に来たの、いつだったっけ?ーー
 先月までであれば、このくらいの日には、もうとっくに終わっていてもおかしくないことがあった。
 月経が来ないのである。
 日々の厳しい修行のため、体がおかしくなっても仕方がない、そう思うジャスミンであったが、それにしても、と気になってしまった。
 ジャスミンが普段から食している、シンからもらった忍者食が原因であるとは、知る由もなかった。シンがジャスミンに与えた携帯食は、不妊の丸薬そのものであったのだ
 ジャスミンは魔物の気配を感じながら、それらに気付かれぬよう、そっと塒へと戻っていくのだった。