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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 20

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 この声音に、イワンが一番反応した。紛うことはない、これは、イワンにとって大切な人の声。
「まさか、でも、本当に……?」
 空間に光の粒が、一カ所に集まっていく。そしてそれは次第に人の形を成していく。
 だんだんはっきりしていく姿は、紫の髪を後ろで大きな三つ編みに纏め、髪と同じ色の瞳を持ち、薄汚れているが白い服を着た女だった。
「……お久しぶりです、皆さん」
 現れたのは、約一ヶ月前、死したと思われていたイワンの姉。
「ハモ姉さん……!?」
 少しやつれてしまっていたが、イワンの実の姉、ハモに相違なかった。
「本当に、ハモ様だ……!」
「ハモ様!? でも、確かにレムリアで見た人は……」
 ロビンやメアリィが一様に驚く中、ハモという人物を知らぬヒナは、突然現れた者にまだ疑念を抱いていた。
「ハモ、ですって? あたしの知る限りじゃ、その名前は魚の……」
 ふざけているのか、それとも真面目なのか。理解に苦しむ発言であったが、誰もヒナの相手はしなかった。
「姉さん、生きているのならなぜ……!?」
 これまで一切の連絡をしなかなったのか。イワンは詰め寄った。
 ハモやイワン等、特にもハモのような強い風のエナジストには、離れていても、思う人と意思疎通ができる能力がある。
 生きていたのなら、すぐにでもイワンに無事を伝えるのは、ハモにとって容易なことのはずだった。
「……心配をかけたわね、イワン。でも、私もあなた達に、無事を伝えるのは難しかったのよ……」
 ハモはこれまで、何故無事を知らせることができなかったのか。その理由を静かに話し始めた。
 あの日、デュラハンがウェイアード中に瘴気を放ち、世界全体に闇をもたらした日。
 デュラハンの根城、アネモス神殿にほど近いギアナ村は、強力な毒性のある瘴気に当てられたせいで、ウェイアードのどの場所よりも早くに暗黒の世界と化してしまった。
 次々に倒れていく村人達を後に、神官達はハモだけでも助けようとした。
「……彼らのあの顔は、最早忘れたくても忘れられません……。私だけでも生きて、と願い、次々に事切れていきました……」
 ハモは自らを庇うように死んでいった神官達を思いだし、頬に涙を伝わらせた。
「あっ、ごめんなさい……。あの悲劇を思い出すとつい……。ぐすっ……、私なんかの為に、彼らは……」
 頬を伝う涙は、溢れんばかりであった。ハモの悲しみは、あまりにも大きすぎたのだ。
「ハモ姉さん……」
 死んだと思われていた姉の無事を知り、イワンも泣きたかったが、目に涙を溜めて、必死に姉を励まそうとイワンは堪えていた。
「ごめんなさいね、イワン……。私がこんなじゃ、いけないよね……」
 ハモは指先で涙を払い、その後どうしていたのか、話の続きをした。
 ハモは瘴気に汚されつつも、気を失わずに、何よりここまで命を繋いでくれた神官達の思いを無駄にすまいと、ぼろぼろの精神状態で『テレポート』を使い、ヘスペリアの地へと飛び立った。
 飛び立った先、山岳地帯に囲まれたシャーマン村には、高山に囲まれているおかげか、瘴気の影響は非常に少なかった。
 しかし、今のギアナ村を破滅させた強力な瘴気に少なからず当てられた上、無念の内に散っていった神官への思いが、ハモのエナジーを阻害してしまった。
 あの日、シャーマン村にたどり着いた時に、ハモはすぐに倒れてしまった。
 しかし運良く、シャーマン族の民に発見してもらえたおかげで、大事に至ることはなかった。
 ハモはシャーマン族の長、モアパに保護され、三日三晩昏睡状態となった。
 それからハモは何とか意識を取り戻し、病み上がりの体を押してまでデュラハン達の動向を探ったのだ。
 そして、デュラハンらの動きが本格的となってきた今、彼らの目的を伝えんと、ハモはヘスペリアからここまでやって来たのだった。
「私は、ロビンやイワン、いえ、みんなならきっとデュラハンという強敵を前にしても諦めたりしない。そう思い、彼に対抗するための策を見出すため、『プリディクト』を使って彼らを調べました」
「あいつらを調べたのか? それならきっと楽に勝てる方法は見つかったよな!?」
 ジェラルドが言うが、ハモはやはりというべきか、首を横に振った。
「調べたと言っても、私にできたことは、彼らの目的、そしてそれに必要なものを暴くことだけでした……。ごめんなさい……」
 突然に詫びられ、ジェラルドは思わず悪いことをした気分になってしまう。
「い、いやいいんだよ! そうだよな、そんな簡単に奴らを打ち負かせる事なんかできるわけないよな。忘れてくれ、ハモさん」
「ありがとう、ジェラルド。気遣ってくれて……。でも、デュラハンの目的、魔王になることだったかしら? それを挫ける確実な手段なら得られました」
 ハモに、ロビン達の驚きの視線が集中する。
「それは一体何なんですか、ハモ様!?」
 ロビンは目を見開き、訊ねた。ただ修行を行うことしかできなかった中での、デュラハンへと近づける有力な手がかりである。興奮せずにはいられなかった。
「……それは、……っく!」
 ハモは額を押さえ、地面に膝を突いた。
「ハモ姉さん!」
 イワンは屈み、ハモの背に手を回す。
「ごめんなさい、目眩が……」
 ハモの体調異変は仕方のないことだった。
 ヘスペリアへ逃れ、どうにか悪魔の瘴気をかわしたが、その後、シャーマン村での生活はとても楽なものではなかった。
 高山に囲まれ、瘴気の影響は小さくてすんだとはいえ、全く影響を受けていないわけではなく、シャーマン村は食糧難に襲われていた。
 シャーマン村へ行く為には、高山を越えるか、もしくは自然のトンネルと化した洞窟を進むかのいずれかの手段を必要とした。
 シャーマン村の食糧自給は狩り、または洞窟を越えた先の湖にて魚を捕るものであった。
 しかし、デュラハンによって発せられた瘴気の影響により、湖は汚染されて魚が死に、狩りに出ようにも山は、瘴気によって活性化した強力な魔物が蔓延ってしまったのである。
 こうした事から、村長であるモアパは少ない蓄えから、村人へ平等に食料が行き渡るようにした。しかし、その量は大人ならいざ知らず、育ち盛りの子供にはとても、十分なものではなかった。
 そんな食糧難の時にも、ハモはデュラハンに対抗すべき策を見出すため、ろくな食事も睡眠もとらずに予期のエナジーを使い続けてきたのだった。
 そして今、ハモは体力尽き、倒れてしまった。
「メアリィ、姉さんを回復してください!」
 イワンの嘆願に、メアリィは目を伏せた。
「イワン、エナジーでは、傷や病は治せても、体力はあまり回復できません……。見た所、ハモ様の様態は、栄養失調です。栄養のあるものを食べなければ、すぐにまた倒れてしまいますわ……」
「そんな!」
 早急にハモに、滋養のある物を与える必要があった。しかし、食料の蓄えはない。イワン達はこれまで、日々の食事は、その都度河原の魚を捕ってまかなっていた。
「これは、ちょっとまずいわね……」
 ヒナはハモへと歩み寄り、屈んで彼女の腕を取った。
「……脈がだいぶ弱いわ、それに体温も低い。ハモ、だったわね? これを……」