鎧武外伝 仮面ライダー神武
男はロックシードを片手に戦極ドライバーを腰に持ってきた。すると戦極ドライバーから銀色のフォールディングバンドが現れ、腰に装着された。刹那、ライダーインジゲータに描かれていたはずの武神鎧武の横顔が消え、別のアーマードライダーの横顔が現れた。
「変身。」
男はロックシードを再び解錠し、呟く。
『フィフティーン』
人骨のようなクラックが男の頭上に開き、中から髑髏が出現した。
男がロックシードを手放すと、ロックシードがまるで生きているかのように戦極ドライバーに装着された。
そして錠を締め、カッティングブレードで斬る。
ロック風の切断音と共に変身音が鳴り響く。
その瞬間髑髏が男に覆いかぶさり、アーマーを形成した。その姿は、骸骨を意表とした不気味なものだった。
「…貴様、何物だ。」
「仮面ライダーフィフティーン。」
フィフティーンと名乗ったアーマードライダーは、地面に人骨に似たクラックを作り出した。
「何をするつもりだ。」
「俺にも準備は必要なのでな。今日は戦極ドライバーを手に入れるために来たまでだ。」
フィフティーンは手に持つ剣を知記へ向け、さらに告げた。
「待っていろ。近く、地下帝国バダンがお前達の世界に攻め入る。それを怯えて待っていろ。」
フィフティーンは、クラックに吸い込まれた。刹那、クラックは閉じ、そこには最初から何もなかったかのように静寂だけが残った。
「…地下帝国バダン…仮面ライダーフィフティーン…。」
知記は、この事態を甘く見ていた。故に、この後に起こる仮面ライダー達の戦いを傍観することとなる。
それから一ヶ月程度。
知記はゲネシスドライバーを片手にインベス駆除を中心に戦っていた。今もその最中だ。
「クソッ、数が多すぎる。」
敵はセイリュウインベス一体を中心に、全部で十体程度。数が多すぎた。一体ずつ切り伏せても次が襲ってくる。
「…あまり褒められたやり方ではないが、やってみるか。」
知記はあるロックシードを取り出す。それは先日サガラから受領したロックシードだった。
神武・仙はそれを解錠し、ソニックアローに装着した。
『メロンエナジー』
『ロックオン』
加えてゲネシスドライバーのシーボルコンプレッサーを二回絞り込んだ。
『ソーダァ アップルエナジースパーキング』
そしてソニックアローを上に向けて引き絞り、放った。
『メロンエナジー』
創世弓から放たれたものは、メロンと二種類のリンゴの形をしたエネルギー。その三つのエネルギー球から大量の矢が排出され、初級インベスを駆逐した。
しかしセイリュウインベスだけは残った。
知記はもう一度ソニックアローを引き絞り、セイリュウインベスを射抜こうとする。しかしそれは叶わなかった。
セイリュウインベスが、自分達が現れたクラックから侵食してきたヘルヘイムの植物になった実を見つけ、それを喰らったからだ。
「しまった!」
その体は見る内に大きくなり、空を飛ぶ中華風の龍の姿になった。
「…仕方ない。これこそもっと褒められていないが、迷っている場合ではないか。」
知記はロックシードを取り出し、それを解錠した。
『スイカ』
そしてゲネシスドライバーにそれを装着し、シーボルコンプレッサーを絞り込んだ。
『リキッド スイカアームズ 大玉・ビッグバン』
それによりベルトのロックシードのキャストパッドが展開された。すると神武・仙の頭上に大きなスイカが現れた。神武・仙がその中に入ると、スイカが変形し始めた。
『ジャイロモード』
それはプロペラ飛行物体となり、セイリュウインベスを追った。
「待て!」
両側に設置されたバルカンを撃ち、インベスの制止を試みる。だが後一歩届かない。
「だったら、加速だ。」
両側に伸びる翼の裏側にあるタービンを全力回転させ、インベスを追う。すぐにインベスに追いつき、神武・仙は身に纏う鎧を変形させた。
『ヨロイモード』
鎧はロボのような姿に変形し、インベスを掴んだ。
「逃がさねーよ」
ロボの右手には、スイカ双刃刀と呼ばれるランサー状の刀が現れた。それを振り回し、インベスを切り裂く。
「止めだ。」
神武・仙はシーボルコンプレッサーを一回絞り込み、必殺技を発動させる。
『リキッド スイカスカッシュ』
するとスイカ双刃刀が真ん中で二つに割れ、二本の刀となった。スイカのロボはそれを振り回し、インベスを切り裂いていく。
尾から頭まで順に巡った時、インベスはばらばらに分離され、爆発した。
それと同時に神武・仙のスイカアームズが解除され、アップルエナジーアームズに戻ってしまった。
「ちょっ、落ちる…!」。
突然のことに驚いたが、知記はすぐにダンデライナーを解錠し、それに乗り込んだ。
「あぶねぇ…。」
そしてそれは、突然の事だった。
『無茶をするねぇ、知記。』
突然、耳に凌馬の声が聞こえた。ゲネシスドライバーに仕込んである通信機を介してだ。
「なんだ?覗き趣味でもあるのか?」
『いや、君に連絡があったから君を探していたんだよ。そうしたらたまたま君が戦闘を行っていたということだ。お陰でいいデータを取らせてもらったよ。ありがとう。』
既にその手元では、<ゲネシスドライバーによる通常のロックシードの使用について>という名前でデータが作成されていた。ちなみにこれには知記がメロンエナジーロックシードを使用した痕跡は残されておらず、それがばれることはなかった。
「御託はいい。用件はなんだ。」
『ツレないねぇ。まあ、知記らしいけど。』
そして凌馬は、間を明けずに告げた。
「君の戦極ドライバーの修復が完了した。またいつでも取りに来てくれ。」
それを聞いた知記は変身を解除して、そのままユグドラシルタワーへと向かった。
その時だ。
知記は一台のダンデライナーとすれ違った。それに乗っていたのは鎧武らしきアーマードライダーだったが、それは見たことの無いアームズを身に纏っていた。後で知ることだが、それは鎧武の新しい形態、カチドキアームズという姿だった。
作品名:鎧武外伝 仮面ライダー神武 作家名:無未河 大智/TTjr