二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
novelistID. 26082
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

鎧武外伝 仮面ライダー神武

INDEX|9ページ/26ページ|

次のページ前のページ
 

「それは、ゲネシスコアの事か?」
 間髪入れずに知記は聞いた。
 ゲネシスコアとは、ゲネシスドライバーのパーツの一部で、それを戦極ドライバーに装着することで、戦極ドライバーでもエナジーロックシードを使用することが可能になるアイテムだ。
 どうやらそれが凌馬の元から消えたらしい。
「よく分かったね…と、ああ、知記じゃないか。久しぶりだね。」
「ああ、あの時は悪かったな。」
 知記が謝っているのは、約九ヶ月前のことだ。知記はユグドラシルから脱走し、その際に戦極ドライバーを強奪していた。
「全く、一本君に渡そうと思っていたのだが、まさか勝手に持って行くとは思っていなくてね、少し驚いたよ。」
「そうかい。結果オーライみたいなものじゃないか。」
 知記はそっけなく返す。そして心の内でこうも思う。
―心にもないことを…。
 続けて知記は訊いた。
「そんで、俺の戦極ドライバーが無かったんだが。」
「ああ、そのことなんだが…。」
 凌馬は少し言葉を濁す。そして、机の上を指差した。
 知記はその場所を見る。
 そこには、壊れた戦極ドライバーがあった。
「…やっぱりか。シドとやり合った時に壊れたか。」
「シドにはきつく釘を刺しておいたよ。これ以上壊されると困るってね。しかし、君は初瀬君とは違い、力には固執しないのか。」
 凌馬の言うように、今の知記は冷静さを保っていた。
 知記は、無駄に目つきの悪い目をさらに尖らせて言う。
「俺は大きな力には興味ない。この手で、俺が守りたいモノが守れるだけの力があれば、それでいい。」
「あくまで、身の丈にあった力さえあればいいと。」
 知記は黙って首を縦に振る。
「まあそんな知記だからこそ、安心できるんだけどね。」
「どういうことだ。」
「ああ、それでだ。」
 凌馬はあるものを取り出し、机の上に置いた。それは赤いベルトのバックルと、本体がパールグリーンのエナジーロックシードらしきものだった。
「ゲネシスドライバー…。」
 それは、シグルドも使っていた新型のベルト、ゲネシスドライバー。戦極ドライバーと同じく、ロックシードの生成やそこからの養分の補給という能力を持ちながら、さらにエナジーロックシードという通常のロックシードよりも強力なクラスSに相当するそれを使用してより強力なアーマードライダーへと変身することの出来るベルトだ。
「それと、エナジーロックシードで最初に生成されたプロトタイプ、アップルエナジーロックシードだ。」
 アップルエナジーロックシード。そう呼ばれた錠前のキャストパッドは、左右で赤と緑に色が分かれた林檎が描かれていた。その中央部分には、<ELS-00>と刻印されている。またプロトタイプ故に、他のエナジーロックシードとは違いボディの色がパールグリーンをしている。そんなロックシードであった。
「これでどうしろと?」
 知記は怪訝そうに訊いた。
「君の戦極ドライバーを修理するまでの間、これを貸しておこう。その代わりにだ。」
 凌馬は身を乗り出し、知記に言う。
「ゲネシスコアを持ち出した人間を探して欲しい。その性能を見てみたいから、取り返さなくてもいいが、ともかく誰かだけ探してほしい。」
「なるほど。悪い話ではないな。」
「協力してくれるかい?」
「期待に添えるかは分からないがな。」
「よろしく頼むよ。」
 知記は、渡されたベルトとロックシードを手にすると、耀子を一瞥してその部屋を出た。
「帰りは、人工クラックを使わせてもらうぞ。」
「ああ、計らっておこう。」
 そして、知記は扉を閉じた。
「よろしいのですか、プロフェッサー凌馬。」
 一部始終を見ていた耀子は、凌馬に訊く。
「ああ。彼はまだ利用できる。それに、気になることはまだあるからね。」
「…彼の記憶に関する事ですか?」
「ああ。」
 凌馬のその顔は、何かを考えているような、そんな顔だった。



 ユグドラシルタワー地下、人工クラック前。
 知記はそこで、シドを発見した。
「知記。」
「よぉ、シド。葛葉達に逃げられたんだって?」
 知記は、未だ生きている自身のコードを使い、幹部に報告されたレポートを見ていた。それは、少し管理室に寄った時のことだ。貴虎と少し話をしようとしたが、その貴虎がいなかったため、そうしたのだ。
「その上、貴虎に報告し損ねていた光実の事もばれたと。」
「し損ねたんじゃない。貴虎が報告書を読まなかっただけだ。」
「まあ、貴虎らしいといえばそれまでだが。」
 機材に据え付けられた椅子に座るシドは、クラックへと向かう知記に顔だけ向け、話しかける。
「戦極ドライバーを失ったお前に、一体何が出来るって言うんだ。お前も、果実を食ってインベスにでもなるか?」
 与えられた問いに、知記は背中を向けて答える。
「その必要はない。凌馬が修理してくれるとよ。」
 シドはおもむろに立ち上がり、知記を見据える。
「それじゃ、どうするんだ?戦極ドライバーが直るまで身を潜めるとでも?」
「そんなはずないだろ。」
 知記は振り返り、そしてあるものを取り出す。それを掲げてシドを睨む。
「ゲネシスドライバー…。」
「ああ。期限付きだが、これがあれば俺も戦える。」
 シドはぐっと唇を噛み締める。
「まあ、ここでお前とやり合うつもりはないし、お前もそれは本意じゃないだろ。」
「…ああ、そうだな。」
 知記はクラックへ向き直り、歩を進める。クラックを通して、知記はヘルヘイムの森へと消えていった。



 数日経ったある日。
 知記は、あることを耳にした。葛葉紘太が、試作品を持っている、ということを。
 発信源はシドだ。
 どうやら、凌馬から同じような事を言い付けられているらしい。
 その情報を元に、知記は紘太に話を聞いた。すると、紘太はこう言った。
―このロックシードとパーツは、サガラからもらったんだ。
―ユグドラシルに捕まった時にさ。
―…ああ、脱出するために用意してくれたのもサガラだ。
―…さあ、なんでだろうな。
―俺にもあいつが俺達に手を貸す理由が分からねぇ。
―まあ、使い勝手はいいし、困ってないよ。
 この話を見る限り、サガラが葛葉達の脱出を手引きし、同時に盗品を手渡したということだ。
 その話を聞き、知記はこう思った。
―サガラがあれを盗み出したのか。
―…まあ、あいつならまだ利用できるし。
―もう少しこのままにしておくか。
 そして知記は、その事実をユグドラシル側には秘密にしておくことにした。
「そういやさ、お前も沢芽生まれなのか?」
「えっ?」
 それは、突然だった。唐突に紘太に聞かれた質問に、知記は答えることが出来なかった。
 かろうじて搾り出した答えは、紘太を納得させることが出来なかった。
「…わからない。」
「は?わからないって…。」
 知記は余り顔に表情を出さずに答えた。
「記憶喪失…らしい。ああ、らしいっていうのは、実感がないってことだ。」
「どういうことだよ。」
「…いまでこそこんなだけど、最初に見つけられた時…サガラに拾われたんだけど…その時には、言葉すらままならない、ただ自分自身が何物なのかすら分からなかったんだ。」

 それは、数年前に遡る。
 現在よりも、もっとクラックが開く頻度が少なかった頃。