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For the future !

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やがて、遙はゴールにタッチした。
頭を水中から出す。
聞こえてくる。
歓声。
そして。
「やった!」
仲間の声。
スタート台の近くで、先に泳いだ三人が肩を組んで喜びを弾けさせている。
三人は顔を輝かせたままその眼を遙に向け、近づいてくる。
だから、遙は彼らのいるほうへと上がっていった。



日付はまだ変わっていない、深夜。
今年の日本学生選手権水泳競技大会は終了した。遙が在籍している大学は今年もシード権を獲得した。
遙は試合後の打ち上げに参加したが、最後までは残らなかった。明日からアジア大会代表選手の合宿があるのを水泳部の者たちは知っているので、遙が言い出すまえに、退席を勧めてくれた。
東京で借りている部屋、遙にとっては現時点での家、の玄関のドアのまえまで来た。
鍵を出して、解錠し、ドアを開けて中に入る。
家の中は明るい。
灯りがついているのだ。
遙は鍵をかけてチェーンを落とし、それから靴を脱いで家の中へとあがっていく。
居間に凛がいる。
凛はその顔を遙に向け、軽く笑った。
「おかえり」
その手には本がある。
少し離れたところに立ったまま遙は言う。
「起きて待ってなくても良かったのに」
ボソッとした愛想の無い声だった。
「別に、俺は普通に起きてる時間だ」
気にしたふうもなく凛は言い、本をテーブルに置いた。
遙はふたたび歩き出す。
そして、凛のそばに腰をおろした。
「……ただいま」
照れくさい気がして、遙は凛のほうを見ずに告げた。
凛が腕を伸ばしてきた。
引き寄せられて、遙はあらがわず、凛の肩のほうへ首を傾けた。
少しのあいだ沈黙があって、それから言葉を発したのは凛だった。
「俺はやれるだけのことはやっといたぞ。荷造りはしたし、明日の朝の分の米は洗って早朝に炊きあがるように設定してある。おかずの用意もしてあるし、冷蔵庫に日持ちがしねぇもんが残ってねぇようにもした」
「……ありがとう」
嬉しい。しかし、その気持ちは遙の声にはかすかにしかあらわれなかった。
それでも、凛には伝わっただろう。
凛は遙のほうにやっている手の力を少し強めた。
「疲れてると思うが、おまえにはまだやることがあるだろ。まず、風呂に入ってこい」
「……ああ」
八月の初旬から、合宿、大会、合宿、大会と続いてきて、明日からまた合宿、それからまた大会だ。
世界の舞台で泳ぐ。それを高校三年の夏に、夢とした。今はその夢のまっただ中にいて、そのために頑張っている。そのために頑張れることはむしろ恵まれていると言えるだろう。
だが、凛が言ったとおり、疲れはやはりある。それに、これがまだしばらく続くことを思うと息がつまるような感覚も少しある。
けれども、今、その疲れが無くなったように、身体が軽くなったように感じた。










作品名:For the future ! 作家名:hujio