夢のあとに
グサッと背中に何か貫かれるような強い痛みを感じた。それがなんなのかは辺古山も薄々気付いていた。
俯き、自分の腹を見てみれば複数もの刃が鳩尾から腹部にかけてピンク色の血を流し、貫いていた。こうなることはわかっていた。覚悟も当然決めていた。辺古山は自身が受ける罰に関してはさほどどうも思っていなかった。
ただ、唯一彼女が気に留めていたのは目の前で、目を凝らし涙している九頭龍のことだった。超高校級の極道である彼は滅多に泣き顔を見せるような男ではなかったし、尤も辺古山も九頭龍の泣き顔を生まれてから一度も目にしたことはなかった。
そんな、涙を一度たりとも見せることのなかった男が辺古山に見せた泣き顔は幼く、こんな状況下で不謹慎だが可愛いと思えてしまって不覚にも口元が緩んでしまった。
(こんな道具の為に涙を流すだなんて…勿体無いですよ、坊っちゃん)
道具でしかない自分の為に泣いてくれた九頭龍に申し訳なく思う反面、それでも人として扱い好いてくれた彼の気持ちが心底嬉しかった。
「ペ…コ、っ!!」
「ぼっ…ちゃ、ん…」
貴方の下にお使い出来て私は心から幸せでした。
そう口にしようとしたが息が思うように出来ず代わりにヒューヒューと呼吸が抜けていくばかりだった。
吐血と鳩尾の傷から大量に溢れていく血のせいで出血多量に陥り、段々と目眩がしてきた。視界が暗くなっていく。
「――――!!」
耳が遠のいていく中、何か言われた気がした。九頭龍が、何かを必死に叫んでいた気がした。
けれど意識が朦朧とした辺古山には彼が口にした言葉がなんだったのかわからないまま最期を迎えた。
俯き、自分の腹を見てみれば複数もの刃が鳩尾から腹部にかけてピンク色の血を流し、貫いていた。こうなることはわかっていた。覚悟も当然決めていた。辺古山は自身が受ける罰に関してはさほどどうも思っていなかった。
ただ、唯一彼女が気に留めていたのは目の前で、目を凝らし涙している九頭龍のことだった。超高校級の極道である彼は滅多に泣き顔を見せるような男ではなかったし、尤も辺古山も九頭龍の泣き顔を生まれてから一度も目にしたことはなかった。
そんな、涙を一度たりとも見せることのなかった男が辺古山に見せた泣き顔は幼く、こんな状況下で不謹慎だが可愛いと思えてしまって不覚にも口元が緩んでしまった。
(こんな道具の為に涙を流すだなんて…勿体無いですよ、坊っちゃん)
道具でしかない自分の為に泣いてくれた九頭龍に申し訳なく思う反面、それでも人として扱い好いてくれた彼の気持ちが心底嬉しかった。
「ペ…コ、っ!!」
「ぼっ…ちゃ、ん…」
貴方の下にお使い出来て私は心から幸せでした。
そう口にしようとしたが息が思うように出来ず代わりにヒューヒューと呼吸が抜けていくばかりだった。
吐血と鳩尾の傷から大量に溢れていく血のせいで出血多量に陥り、段々と目眩がしてきた。視界が暗くなっていく。
「――――!!」
耳が遠のいていく中、何か言われた気がした。九頭龍が、何かを必死に叫んでいた気がした。
けれど意識が朦朧とした辺古山には彼が口にした言葉がなんだったのかわからないまま最期を迎えた。