アジャニの炎
広き荒野に、その二人はいた。
荒れ果てた、野原に。岩肌と化した大地に。
太陽は、血なまぐさい陰影の曇天に隠されて、この戦乱の痕を浮かび上がらせていた。
雲は動き、太陽から漏れ出す光は、形を変えていく。
その淡い光が、二者の一人を捉えた。
動きやすい鎧。肩から腹部にかけて鮮血が染み付いた、白い体毛で覆われた筋骨隆々の肉体。
そして――人のものではない、獅子の顔面。
白い毛並みを有する肉体に、獰猛な肉食獣の頭部を有していたのだ。
この者は、黄金のたてがみのアジャニ。
レオニンと呼ばれる、獅子の頭に、人の身体をそなえる種族。
仲間を癒し、その強き魂を引き出す、白の魔法の使い手。
そして……多元宇宙を渡る、プレインズウォーカーであった。
今やアジャニは、傷つき、項垂れていた。
その傍らには、上下に刃の備え付けられた斧。彼の獲物だったが、それもまた、血塗られていた。
アジャニを照らしていた陽光は、移ろい、離れていく。彼の身体が、薄い影に飲まれる。
それは、彼の目の前の、隆起した岩肌をゆっくりと登っていった。
このレオニンは、その光を追いかけるように、見上げた。
陽光が照らし出す――仁王立ちした、その男を。