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炬善(ごぜん)
炬善(ごぜん)
novelistID. 41661
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アジャニの炎

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 広き荒野に、その二人はいた。
 荒れ果てた、野原に。岩肌と化した大地に。

 太陽は、血なまぐさい陰影の曇天に隠されて、この戦乱の痕を浮かび上がらせていた。
 雲は動き、太陽から漏れ出す光は、形を変えていく。

 その淡い光が、二者の一人を捉えた。

 動きやすい鎧。肩から腹部にかけて鮮血が染み付いた、白い体毛で覆われた筋骨隆々の肉体。
 そして――人のものではない、獅子の顔面。
 白い毛並みを有する肉体に、獰猛な肉食獣の頭部を有していたのだ。

 この者は、黄金のたてがみのアジャニ。
 レオニンと呼ばれる、獅子の頭に、人の身体をそなえる種族。
 仲間を癒し、その強き魂を引き出す、白の魔法の使い手。

 そして……多元宇宙を渡る、プレインズウォーカーであった。 

 今やアジャニは、傷つき、項垂れていた。
 その傍らには、上下に刃の備え付けられた斧。彼の獲物だったが、それもまた、血塗られていた。

 アジャニを照らしていた陽光は、移ろい、離れていく。彼の身体が、薄い影に飲まれる。
 それは、彼の目の前の、隆起した岩肌をゆっくりと登っていった。
 
 このレオニンは、その光を追いかけるように、見上げた。
 陽光が照らし出す――仁王立ちした、その男を。

作品名:アジャニの炎 作家名:炬善(ごぜん)