敵中横断二九六千光年2 ゴルディオンの結び目
「砲がどこにあろうとも、必ず死角は生じるものだ。何しろ、星は丸いのだからな。冥王星の片面が百年ずっと白夜なら、反対側はずっと夜だ。夜の面は基本的にビームの死角と考えてよかろう」
言ってから、違っていたらどうする、と思った。やつらがまさに〈裏〉をかいているとしたら……しかしまさか。基地を白夜に置くのなら、ビーム砲はその圏を護るように配置しなければ無意味。〈きりしま型〉や〈いそかぜ型〉の船の突っ込みを許してしまったときにアウトだ。逆の面を護るよう砲を造るバカがいるなど考えられん。だから死角に戦艦を送り、〈ヤマト〉を囲み込もうとする――。
この考えに間違いなんてあるだろうか。いいや、まさかとしか思えなかった。『〈メ号作戦〉でもし地球に敗けていたら』とやつらが考えぬわけもないのだ。ひとつの砲が星の半球を護るなら、その裏側は死角のはずだ。だって、星は丸いのだから。そうだろう。これがどうにもなるはずがあるか。
「ゆえに〈ヤマト〉は予想される敵ビームの射程外にワープして、航空隊を送り出す。迎える敵となるべく交戦せず逃げながら、砲台の位置を見極めるのだ。固定され移動できない砲ならば、位置を突き止めてしまえばやりようはあるはずだ。〈ヤマト〉の主砲で撃ち返すなり、魚雷ミサイルを送るなり……では、砲台をどう見つけるかだが……」
真田はここで言葉を切った。この先を話すのは勇気がいる。しかしやらねばならなかった。一同を見て真田は言った。
「ビーム砲でわざと〈ヤマト〉を狙い撃たすのだ。それ以外に砲台の位置を突き止める方法はない」
作品名:敵中横断二九六千光年2 ゴルディオンの結び目 作家名:島田信之