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敵中横断二九六千光年2 ゴルディオンの結び目

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真っ赤なスカーフか、と思った。窓の外に動くものを見つけて古代はそちらに眼をやった。煙突――いや、対空ミサイル発射台に船外服を着たクルーが取り付いている。向こうもこちらに気づいたらしい。古代が手を振ってやると相手も振り返してきた。

見れば、船体のあちこちで、何十人ものクルーが船外作業をしていた。戦闘前の整備だろう。主砲にも、対空砲にも、レーダー、センサーの類にもクルーが取り付き磁力ブーツの足で歩き、命綱をたぐって宙を泳いでいる。砲やアンテナ、姿勢制御ノズルを調べ、ウロコのように船体を覆う装甲板を叩いていた。

そしてまた、〈ゼロ〉のカタパルト――やはり何人ものクルーが、船外服でまわりに付いて離着艦台を動かしたり、着艦アームを点検しているのが見えた。あればかりは、おれのためにやってくれているのだと思った。このおれを送り、船に戻るのを迎えるために仕事をしてくれている。がんもどきのおれのために――そんな者達がちゃんといるのだ。

赤く光る棒状の標識灯を手にして振る者がいる。道路工事の現場でクルマを誘導するのに使うようなやつだ。暗い宇宙で残像の尾を引くそれは、古代の眼にはまさに真っ赤なスカーフに見えた。

いいや、と思う。それだけじゃない。タイタンでダメにした〈ゼロ〉の翼を交換し、機の整備をしてくれている者達がいる。おれは今すぐ行ってそいつに付き合わなけりゃいけないのだ。パイロットがいなければできない作業もあるのだから。

こんなところで油を売っていてはいけない。加藤などは会議が終わるとだからサッサと艦底に降りていってしまったのだろう。あいつはプロだ。それに比べて、おれなんか、やっぱりてんで失格の人間なんだろうなと古代は思った。地球人類の運命――とてもそんなもの、背負って戦うなんてできない。

そうだ。森が言ったように、何かロマンのかけらのような。悲愴な決意なんかじゃなく、ただおれを想ってくれる人のために――そんな誰かがどこかにいてくれるとでも思わなければ、とても戦えそうにない。

小展望室を出ながら、ほんのひとかけらでいいから希望が欲しいものだと思った。もう一度振り向くと、〈ヤマト〉船体のあちらこちらで〈赤いスカーフ〉が振られていた。