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敵中横断二九六千光年2 ゴルディオンの結び目

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通路をクルーが行き交っている。大声で呼び合いながら荷物を抱え駆け回っているのは、緑や黄色のコードを付けた航海要員や生活要員の者達だった。なるほどどこにおにぎりいくつ持っていけなんて声もする。

機関科員や砲雷科員ばかりが戦闘員じゃない。船の誰もが今は戦闘要員ということなのだろう。戦うと決まれば戦う。そのときは、余計なことは考えない。たとえわずかであろうとも、人々を救うチャンスに賭ける――やはりこいつはそういう船だ。そういう人間だけが乗ってる。たぶん、かつての〈大和〉もまた、そんな船だったのだろう。

あらためてそれを実感した。ここでおれが逃げようなんて言っても誰も聞かないんだ。おにぎり食って腹くくるしかないんだろうな。

兵員室に入ろうとしたそのときに、スピーカーがガリガリという音を鳴らした。マイクのスイッチが入った音だろう。そして声が響き出した。

『〈ヤマト〉全乗組員に告げる。わしは艦長の沖田である』

クルーがみな足を止めた。