恋より痛い愛より切ない
ほろほろ解れた赤毛が一筋額にかかるのを、指で絡めたくなったが小十郎はまた堪えた。堪えるべきなのかどうかはよく解らなかったが堪えた。衝動を何処へやったものか見当がつかなかった。佐助が痛々しい顔をしているのが信じられないほどに苛立った。そんな顔をする権利がおまえにあると思っているのかと怒鳴ってやりたかった。
言葉を噛み殺し、黙り込む。
佐助もおんなじように黙り込んでいる。
如何ともしがたい袋小路のような閉塞感に、衝動ばかりが腹の底で渦巻いた。
作品名:恋より痛い愛より切ない 作家名:そらそら