ガンダム 月の翅
インダストリア、北アメリア東海岸部のメトロポリス中心部に本社を構える国際企業である。元は国際技術革新機構、通称WTOとして国際連合により設立された国連機関だったが、地球外惑星への移住が可能となり300年余りが経過した今では地球一国の企業組織となっていた。天に向かって伸びゆく螺旋状の円錐形と言うメタボリズム的デザインをしたバベルの塔を彷彿とさせる。
その一室であるやり取りが行われていた。
「こちらをご覧ください」
「これは?」
「衛星で捉えた永久保護区域ギアナ地区の一部分を拡大した物です。ここ2ヶ月あまりを早回ししています」
「ギアナ高地か、何だこいつらは」
「ここ2ヶ月住み着いているようです。消息を絶っていた遊牧民族エブリオではないかと」
「消息を絶っていた?対象ではなかったのか?」
「特に目立った動きもないので数年程前に対象から外れていました」
「これがどうした?」
星間貿易部長官ドルドレイ・トルストイが空気中に投影された映像を間違い探しのように眺めながら訊いた。
「ここに映っている男をご覧ください」そう言いながら秘書のアンナは映像をズームさせ、別ウインドウに行方不明者リストを映し出した。
「なるほど…ん?」行方不明者の誰かが映っているのだろうと映像の男をよく見ると、もはやリストを見る必要はなくなった。
「久しぶりだな、クロード・・・」
「お知り合いで?」
「かつての同僚さ…。開発部に連絡を、せっかくの機会だ、実験も兼ねて今の内に芽を摘んでおこうそういえば」
秘書に滝のごとく命じながらあることを思い出した。
「アレに進展はあったか?」
「いえ、太陽系外の物質「もういい何回目だ全くなんなんだ3年も経っているのにこの体たらく‥‥‥しかしアレは、あの形はどう見ても伝説の‥‥なんだったかな?」
秘書は既に部屋を出ていた。