ガンダム 月の翅
ジブラルタル海峡海底域のさらに下、そこに砂漠化から逃れ住み着く人々がいた。彼らは自らを『ドロノタミ』と名乗り、海と陸の境にあるバイストン・ウェルを求めた。
時間は少し遡る。メイたちのアドネスクはアドラス艇に連れられ海底を地底を進みジブラルタル海峡にたどり着いた。
「そろそろ上に出たいなぁ」
「こっちが先でしょ」
ジブラルタルの陸壁にアドラス艇がすっぽり入れるであろうほど巨大な蓋のような人工物があった。
「開けてもらいましょう。」
「壊せばいいんじゃないですか?」
「戦いに来たのではありません。気づいてくれるといいのですが・・・」
セナがアドラスから音波信号を出した。しばらくすると蓋が重々しい唸りを上げてスライドし、アドラス艇は栓を抜いた浴槽の水のごとく吸い込まれた。その先にはまた厳重な扉があり、今くぐった蓋が再び栓をすると開いた。その先にも第二第三とブロックがあり、さらに第四第五ブロックを通過すると地底空洞に出た。そこには彼らを出迎えるように8体の人型の機体が待ち構えていた。
「アラクネみたいなのがいる!」
人型の中に二回りも小さい蟲と人の形を合わせたような機体が3体いた。
『あの機体…やはり…』
マニが蟲型の機体を見ていると突如攻撃態勢になり、こちらに銃口を向けてきた。
「戦いに来たのではありません!」
セナが白旗をアドラスに掲げると彼らは銃口を突きつけたまま態勢を解いた。しばらくすると「私たちのような鎧はあるか?」と返ってきた。
「鎧とはなんでしょうか?」「私たちが纏っているコレだ。これを着て降りてこい」
メイとアキラはベルポッドに、アラウダとシルルはゲドラフに、マニはセルムの機体に、カントはセナの機体の掌に乗り彼らの元へ向かった。彼らは足元のふたを開け、来訪者を招き入れた。その下には広大な空洞があり、彼らのコロニーが広がっていた。
降り立つと小さい蟲型の機体の腹部が開き、半裸に恐ろしげな面をつけた筋骨隆々の男が現れ、しきりに合図をしていた。
「降りても大丈夫なようです。」
セルムの呼びかけに応え、外へ出ようとハッチを開けると辺りは明かりのない深い闇で何も見えなかった。自動処理されたディスプレイ越しで見ていたために気づかなかったのだ。メイはベルポッドのツインアイライトを点けようと前のめりになった。汗の匂いがアキラの鼻孔をかすめた。
ライトが付くと男は慌てて腕で面を覆った。アキラは咄嗟にスイッチを切った。セルムが「すみませんでした。」と謝罪すると面の男は「少し待っていろ」と残し闇の中に消えた。
しばらくして男が戻ってくると手には面をいくつか持ち「これをつけろ」と言うように掲げた。セナは機体の掌を地面まで下ろしカントを差し出した。男がカントに面を被せると『ピピッ』という音とともに起動した。カントが無事なことを確認するとメイたちも男の下に行き、面を被った。