白雪物語(前編)
・・・・・・・・・・・・・・・
金色の髪と蒼い目の白雪姫。とても美しい姫がいました。
しかしこの娘の王妃は、自分が世界で一番美しいと信じており、
なんとこの女王は魔女だったのです。
「鏡よ鏡よ、世界で一番ムキムキなのは誰だ」
『それは、白雪姫です』
「さすが白雪姫だぜ!ケセセセ」
鏡に向かって自慢の弟が映るのを喜んでいるギルベルト。
「白雪姫、なんでそんな格好なんだよ。白雪姫だろ」
白雪姫の衣装ではなく、王子の衣装である。前回の赤ずきんの衣装がすさまじく
フェリシアーノが怯えていたのを考慮してくれたらしい。
鏡に向かってつぶやいていると、部屋に白雪姫が入ってきた。
「女王こそ、女王らしくない服じゃないかそれ、王様じゃないか」
こちらも細身とはいえ筋肉質、女王の衣装はそぐわないと
判断されたらしい。
「せめて王女様って言ってくれよ。何か俺老けたみたいじゃないか」
「俺の継母だろう。母さんと言ってもいい様な関係だぞ」
”母さん”と言われてギルベルトは眉間に皺を寄せる。
「俺にこんなでけぇ子供いねぇよ。人を年寄りみたいに言うな」
「話の上でだろう。兄さんは最近運動不足なだけだ。」
だいだいいつも・・・と口論が始まる。
大人しくしていた鏡がガタガタ震えだし、突然二人の間に飛び出して大声をあげる。
「ずっと待ってる俺の身にもなれよ!何だよ仲良くしやがって!うらやましくなんかないんだからな!」
アーサーがブリタニアエンジェルの格好で登場し、二人を凍りつかせた。
「あ・・・すまない。つい。それは鏡の本来の姿か・・・」
アーサーの衣装に動揺するルート。
「ああ、これは奇跡の天使の鏡・ブリタニアエンジェルの正式な衣装だ」
自身満々に星型のステッキをかざすアーサー。
「ブリタニアエンジェル。俺の奇跡を見せてやろう、ほあた★」
ボンっという煙とともにギルベルトが煙にまかれる。
風でルートの方にも煙が流れ、息を吸うと肺に入り咳き込む。
「な、何なんだお前は」
5歳児くらいに小さくなったギルベルトがそこにいた。
鏡を見ると、ルート自身も10歳くらいに縮んでいる。
「お前達がのろのろしてるからだ。俺がこの城を支配してやる」
にやりと不気味な笑みを浮かべ、黒いフードを被った服の集団が女王の部屋に一気に広がる。
松明を称え、奇妙な魔方陣を描き出す。響き渡るのは呪いの呪詛だろうか、背筋に寒気が走る。
「さあ、魔女より逃げるが良い。白雪姫」
冷たい空気が肌を触り、見えない動物の鳴き声と、笑い声が聞こえてくる。
ルートはギルベルトを担いで急いで城を出た。
自慢の筋力もこんなに小さくなってしまっては何も出来ない。
「さすがだじぇ!おれのむきむきー」
呑気にルートの背中で喜んでいる兄。
「何でいつも楽しそうなんだ兄さんは」
どんな現状でも楽しそうな兄の行動が理解できない。
「森に行こう、小人の伝説があるらしい」
白雪姫は魔女から逃れるように、お城の外にある森に身を潜めたのです。
暗い森の中は動物達の鳴き声が響き、ひたすら闇が続いている。
「白雪姫、俺を背負って疲れただろう。」
「いや、まだ大丈夫だ。このくらいなら・・・」
白雪姫は飲まず食わずで森の中を歩き続け、体力が限界に達した。
膝をつき、前に倒れこんだ。
王女はびっくりして、駆け寄った。
「おい、白雪姫!大丈夫!目をあけりょ」
舌足らずな子供の声で女王はひたすら白雪姫を呼び続けた。
「・・・兄さん・・・・・・」
にこりと笑い、意識が遠くなっていく。女王の叫ぶ声が遠くで聞こえた。
「大丈夫ですか?森で倒れていましたが」
目をあけると、ベットの上に寝かされ。まわりに小人がいた。小人というより子供達のようだ。
「ヴェー。白雪姫かわいいなぁ」
白雪姫を覗き込む小人は菊とフェリと名乗った。
「歩き回って疲れたみたいです。今、おかゆを用意しますからね」
菊という子供は黒髪で人形のようなかわいらしい顔をしている。
割烹着を着ているのがほほえましい。
「菊、悪いな」
「大丈夫ですか?だいぶお疲れのようですが」
隣で寝ていたギルベルトが目を覚ます。
「おー、目が覚めたか!俺たち3人で担いだんだぜ」
小さなギルがにっこり笑う。
「あなたも魔女の呪いにかかったのですか?」
「呪い?もしかしてお前らもか」
いぶかしい顔つきで菊の方を見る。
「そうなんです、私達は魔女の呪いで子供にされてしまったのです。魔女を倒さない限り元には・・・戻れません」
「ふははは!これでこの城はブリタニアエンジェルのものだ!
どれどれ、白雪姫達の様子を見てやろう」
鏡で白雪姫をさがす魔女。
―逃げるな!フェリ!まだ訓練は終わっておらんぞ!
―ヴェエエエ!!許してー!!!!!!
少年と走り回る子供達。
「何やってんだこいつら」
さらに鏡に見入る魔女。
ーそれでは、休憩に入る。
―フェリシアーノ君。おやつにしましょう。ピッツアですよ。
ーヴェーやった!俺嬉しいな。
ーお!俺様もいただくぜ!
鏡を見ながら碇にぶるぶる震える魔女。
「なんなんだ、あいつら仲良くしやがって!!!!」
*
ルートはギルベルトを担いで急いで城を出た。
自慢の筋力もこんなに小さくなってしまっては何も出来ない。
「さすがだじぇ!おれのむきむきー」
呑気にルートの背中で喜んでいる兄。
「何でいつも楽しそうなんだ兄さんは」
どんな現状でも楽しそうな兄の行動が理解できない。
「絶体絶命のピンチの中を切り抜けるのが楽しいんだぜ」
戦うために生まれただけあって根本に考え方が前向きだ。
ひとまず撤退し、打開策を考えねばと女王よりも自由の利く体で白雪姫は考える。
「森に行こう、小人の伝説があるらしい」
白雪姫は魔女から逃れるように、お城の外にある森に身を潜めたのです。
暗い森の中は動物達の鳴き声が響き、ひたすら闇が続いている。
足元には木の根が這い、ルートの疲れた足元を危ぶませる。
「白雪姫、俺を背負って疲れただろう。」
「いや、まだ大丈夫だ。このくらいなら・・・」
闇は深くなり、何も見えなくなる。風に揺れる葉の音以外は不気味な静けさが広がる。
白雪姫は飲まず食わずで森の中を歩き続け、開けた所に木の根に王女を下ろした。
体力が限界に達した。
膝をつき、前に倒れこんだ。腕があがらない。指先の感覚が痺れてわからない。
王女はびっくりして、駆け寄った。
「おい、白雪姫!大丈夫!目をあけりょ」
舌足らずな子供の声で女王はひたすら白雪姫を呼び続けた。
「・・・貴方は大丈夫か?」
「おう!俺は大丈夫だ。ちっこくなっても俺様は元気さ」
「そうか・・・それならいい・・・」
自分の着ているコートを女王にかけて、白雪姫は女王の手を握った。
「貴方だけでも生き延びて・・・くれ・・・」
にこりと笑い、意識が遠くなっていく。女王の叫ぶ声が遠くで聞こえた。
「おい!おい!」
少し冷えた体で、寝息をたてはじめる。
「寝るな!おい。こんなところで眠ると死ぬぞ!」
冷えていく体、唇の端が段々と青ざめていく。
「待ってろ!俺が小人達を見つけてやる」
*
「よし、こうなったら俺がじきじきに白雪姫と王女を殺してやる。」
魔女は怒りに燃え、不気味な笑いを浮かべている。
金色の髪と蒼い目の白雪姫。とても美しい姫がいました。
しかしこの娘の王妃は、自分が世界で一番美しいと信じており、
なんとこの女王は魔女だったのです。
「鏡よ鏡よ、世界で一番ムキムキなのは誰だ」
『それは、白雪姫です』
「さすが白雪姫だぜ!ケセセセ」
鏡に向かって自慢の弟が映るのを喜んでいるギルベルト。
「白雪姫、なんでそんな格好なんだよ。白雪姫だろ」
白雪姫の衣装ではなく、王子の衣装である。前回の赤ずきんの衣装がすさまじく
フェリシアーノが怯えていたのを考慮してくれたらしい。
鏡に向かってつぶやいていると、部屋に白雪姫が入ってきた。
「女王こそ、女王らしくない服じゃないかそれ、王様じゃないか」
こちらも細身とはいえ筋肉質、女王の衣装はそぐわないと
判断されたらしい。
「せめて王女様って言ってくれよ。何か俺老けたみたいじゃないか」
「俺の継母だろう。母さんと言ってもいい様な関係だぞ」
”母さん”と言われてギルベルトは眉間に皺を寄せる。
「俺にこんなでけぇ子供いねぇよ。人を年寄りみたいに言うな」
「話の上でだろう。兄さんは最近運動不足なだけだ。」
だいだいいつも・・・と口論が始まる。
大人しくしていた鏡がガタガタ震えだし、突然二人の間に飛び出して大声をあげる。
「ずっと待ってる俺の身にもなれよ!何だよ仲良くしやがって!うらやましくなんかないんだからな!」
アーサーがブリタニアエンジェルの格好で登場し、二人を凍りつかせた。
「あ・・・すまない。つい。それは鏡の本来の姿か・・・」
アーサーの衣装に動揺するルート。
「ああ、これは奇跡の天使の鏡・ブリタニアエンジェルの正式な衣装だ」
自身満々に星型のステッキをかざすアーサー。
「ブリタニアエンジェル。俺の奇跡を見せてやろう、ほあた★」
ボンっという煙とともにギルベルトが煙にまかれる。
風でルートの方にも煙が流れ、息を吸うと肺に入り咳き込む。
「な、何なんだお前は」
5歳児くらいに小さくなったギルベルトがそこにいた。
鏡を見ると、ルート自身も10歳くらいに縮んでいる。
「お前達がのろのろしてるからだ。俺がこの城を支配してやる」
にやりと不気味な笑みを浮かべ、黒いフードを被った服の集団が女王の部屋に一気に広がる。
松明を称え、奇妙な魔方陣を描き出す。響き渡るのは呪いの呪詛だろうか、背筋に寒気が走る。
「さあ、魔女より逃げるが良い。白雪姫」
冷たい空気が肌を触り、見えない動物の鳴き声と、笑い声が聞こえてくる。
ルートはギルベルトを担いで急いで城を出た。
自慢の筋力もこんなに小さくなってしまっては何も出来ない。
「さすがだじぇ!おれのむきむきー」
呑気にルートの背中で喜んでいる兄。
「何でいつも楽しそうなんだ兄さんは」
どんな現状でも楽しそうな兄の行動が理解できない。
「森に行こう、小人の伝説があるらしい」
白雪姫は魔女から逃れるように、お城の外にある森に身を潜めたのです。
暗い森の中は動物達の鳴き声が響き、ひたすら闇が続いている。
「白雪姫、俺を背負って疲れただろう。」
「いや、まだ大丈夫だ。このくらいなら・・・」
白雪姫は飲まず食わずで森の中を歩き続け、体力が限界に達した。
膝をつき、前に倒れこんだ。
王女はびっくりして、駆け寄った。
「おい、白雪姫!大丈夫!目をあけりょ」
舌足らずな子供の声で女王はひたすら白雪姫を呼び続けた。
「・・・兄さん・・・・・・」
にこりと笑い、意識が遠くなっていく。女王の叫ぶ声が遠くで聞こえた。
「大丈夫ですか?森で倒れていましたが」
目をあけると、ベットの上に寝かされ。まわりに小人がいた。小人というより子供達のようだ。
「ヴェー。白雪姫かわいいなぁ」
白雪姫を覗き込む小人は菊とフェリと名乗った。
「歩き回って疲れたみたいです。今、おかゆを用意しますからね」
菊という子供は黒髪で人形のようなかわいらしい顔をしている。
割烹着を着ているのがほほえましい。
「菊、悪いな」
「大丈夫ですか?だいぶお疲れのようですが」
隣で寝ていたギルベルトが目を覚ます。
「おー、目が覚めたか!俺たち3人で担いだんだぜ」
小さなギルがにっこり笑う。
「あなたも魔女の呪いにかかったのですか?」
「呪い?もしかしてお前らもか」
いぶかしい顔つきで菊の方を見る。
「そうなんです、私達は魔女の呪いで子供にされてしまったのです。魔女を倒さない限り元には・・・戻れません」
「ふははは!これでこの城はブリタニアエンジェルのものだ!
どれどれ、白雪姫達の様子を見てやろう」
鏡で白雪姫をさがす魔女。
―逃げるな!フェリ!まだ訓練は終わっておらんぞ!
―ヴェエエエ!!許してー!!!!!!
少年と走り回る子供達。
「何やってんだこいつら」
さらに鏡に見入る魔女。
ーそれでは、休憩に入る。
―フェリシアーノ君。おやつにしましょう。ピッツアですよ。
ーヴェーやった!俺嬉しいな。
ーお!俺様もいただくぜ!
鏡を見ながら碇にぶるぶる震える魔女。
「なんなんだ、あいつら仲良くしやがって!!!!」
*
ルートはギルベルトを担いで急いで城を出た。
自慢の筋力もこんなに小さくなってしまっては何も出来ない。
「さすがだじぇ!おれのむきむきー」
呑気にルートの背中で喜んでいる兄。
「何でいつも楽しそうなんだ兄さんは」
どんな現状でも楽しそうな兄の行動が理解できない。
「絶体絶命のピンチの中を切り抜けるのが楽しいんだぜ」
戦うために生まれただけあって根本に考え方が前向きだ。
ひとまず撤退し、打開策を考えねばと女王よりも自由の利く体で白雪姫は考える。
「森に行こう、小人の伝説があるらしい」
白雪姫は魔女から逃れるように、お城の外にある森に身を潜めたのです。
暗い森の中は動物達の鳴き声が響き、ひたすら闇が続いている。
足元には木の根が這い、ルートの疲れた足元を危ぶませる。
「白雪姫、俺を背負って疲れただろう。」
「いや、まだ大丈夫だ。このくらいなら・・・」
闇は深くなり、何も見えなくなる。風に揺れる葉の音以外は不気味な静けさが広がる。
白雪姫は飲まず食わずで森の中を歩き続け、開けた所に木の根に王女を下ろした。
体力が限界に達した。
膝をつき、前に倒れこんだ。腕があがらない。指先の感覚が痺れてわからない。
王女はびっくりして、駆け寄った。
「おい、白雪姫!大丈夫!目をあけりょ」
舌足らずな子供の声で女王はひたすら白雪姫を呼び続けた。
「・・・貴方は大丈夫か?」
「おう!俺は大丈夫だ。ちっこくなっても俺様は元気さ」
「そうか・・・それならいい・・・」
自分の着ているコートを女王にかけて、白雪姫は女王の手を握った。
「貴方だけでも生き延びて・・・くれ・・・」
にこりと笑い、意識が遠くなっていく。女王の叫ぶ声が遠くで聞こえた。
「おい!おい!」
少し冷えた体で、寝息をたてはじめる。
「寝るな!おい。こんなところで眠ると死ぬぞ!」
冷えていく体、唇の端が段々と青ざめていく。
「待ってろ!俺が小人達を見つけてやる」
*
「よし、こうなったら俺がじきじきに白雪姫と王女を殺してやる。」
魔女は怒りに燃え、不気味な笑いを浮かべている。