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機動戦士ガンダムRS 第44話 たましいの場所

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 サオトメは、ドゴス・ギアの展望台の窓からサラミスを見ていた。
その船体には、何機かのユーピテルツヴァイがワイヤーで固定されていた。
その機体は、マゼランの艦載機だった。
母艦を失ったため止む負えずサラミスの船体にワイヤーで固定して仮着艦した。
それを見ながら旗艦を失った艦隊に戦略的に意味をなさない補給艦の撃沈命令を出さなかった自分に「これでよかったのか」という答えのない自問自答を繰り返していた。
通商破壊とは、通商物資や人を乗せた商船を攻撃することによって海運による物資の輸送を妨害することだ。
補給艦だけを沈めても国力で上回る地球軍には、あまり効果的な攻撃ではない。
しかし艦船を沈めるという意味では、有効である。
そんな思いがサオトメの中で葛藤していた。
(どうすればよかったのかな)
 サオトメは、大きくうなだれてため息をついた。
「ごろにゃーーーーん」
 そんな言葉が背後から聞こえたと思ったら背中にいきなり抱きつかれたというより衝突した衝撃が襲ってきた。
「え?
ごろにゃん?」
 サオトメは、何が起こったのかわからず半分パニックになった。
「にゃんにゃん」
 その声にサオトメは、聞き覚えがあった。
「え?
アイリス?」
 サオトメは、パニックから少し平常心に戻れた。
「何をしてるですか?」
 アイリス曹長は、先のサオトメの葛藤などつい知らず無邪気に聞いた。
「な、何をしてるってアイリスこそ何してるんだ?」
 サオトメは、アイリスに質問で質問をかえしてしまった。
少し平常心に戻ったものの平常心に戻った故に背中に感じる女性の感触にサオトメは、再びパニックになってしまった。
「にゃんにゃん攻撃だにゃん」
 アイリス曹長は、サオトメの気持ちなどつい知らず体を更に密着させ答えた。
(だ、誰もいなくてよかった)
 サオトメは、展望台に誰もなかったことに心から感謝していた。
「参ったか?
にゃんにゃーん」
 アイリス曹長は、勝ち誇ったようにサオトメに質問した。
「参りました」
 サオトメも男性である。
このままこの感触を味わっていたら自分が何をしでかすかわからない。
そのため早くこの天国のような地獄を終わらせたかった。
「驚きました?」
 アイリス曹長は、サオトメから離れると少し申し訳なさそうに質問した。
「お、驚いたよ」
 サオトメは、先のことでどっと疲れてしまいそれを言うだけでも結構なエネルギーが必要だった。
「しかし一体どうしたんだ、いきなり抱きつくなんて?」
 サオトメがアイリス曹長に質問した。
いきなりアイリス曹長に抱き着かれる理由なんて何1つなかったからだ。
「構ってほしいオーラが出ていたんです。
隊長が窓から外を見ながら答えの出ない悩み事に襲われているように見えたので構いたくなったんです」
 アイリス曹長の答えにサオトメは、驚いた。
サオトメの悩みなど気付かない鈍感だと思っていたら実は、わかっておりその悩みを払しょくすべく取った行動だったからだ。
「子供が悩んでいるとお母さんが抱きしめるじゃないですか」
 アイリス曹長は、サオトメに得意げに言った。
(俺は、悩んでる子供なのか)
 サオトメは、その言葉に内心傷ついた。
「隊長の後ろ姿を見たら抱きつきがいがありそうだなと思いました」
 アイリス曹長は、サオトメの背中を思い出したのか頬を赤く染めた。
「だ、抱きつきがいがあるのか」
 残念ながらアイリス曹長にとってとても魅力のある背中は、サオトメには見えない。
「大きい背中って頼りがいががあって体を預けたくなるんです」
 その言葉は、なんとなくサオトメもわかる。
おぼろげに覚えている両親の背中にサオトメは、安心感を感じていた。
「それでついにゃんにゃん攻撃をしてみました」
 アイリス曹長は、そこで無邪気に結論づけた。
「にゃんにゃん攻撃は、いいが人前ではやらないでほしい」
 サオトメは、照れながらアイリス曹長にお願いした。
「大丈夫です。
人前では、絶対にしませんから」
 アイリス曹長は、サオトメに自信満々に約束した。
「でもあんまり隙だらけで艦内をウロウロしないでくださいね。
いつ我慢できずに抱き着いちゃうかわからないので」
 アイリス曹長は、サオトメにくぎを刺した。
「それでいったい何を見てあんなに悩んでいたんすか?」
 アイリス曹長は、サオトメに悩みの種を聞いた。
「護衛しているサラミスだ」
 サオトメは、サラミスを指さした。
途端にアイリス曹長は、表情を曇らせた。
「でもアイリスが抱きしめてくれてうれしかったよ。
おかげで悩みが吹き飛んだ」
 そんなアイリス曹長に気付いたサオトメがフォローに入った。
「そうですか」
 打って変わってアイリス曹長の表情は、晴れた。

      ※

 ミサキ中尉は、リクリエーションルームでクーパー中尉と会話をしていた。
「どうしてミサキ中尉は、軍に入隊したんだ?」
 ふとクーパー中尉は、ミサキ中尉にそんなことを質問した。
「本当は、トリマーになりたかったんです」
 ミサキ中尉は、なぜか少し表情を暗くして答えた。
「トリマー?」
 クーパー中尉は、ミサキ中尉の「トリマー」という職業がいまいちわからなかった。
「はい、犬や猫の手入れのお手伝いをしたりするんです」
 そんなクーパー中尉にミサキ中尉は、トリマーについて簡単に説明した。
「なるほど」
 ミサキ中尉の説明のおかげでクーパー中尉は、トリマーを軽く理解できた。
「大きい犬の毛を刈ってあげたりしたかったんだ」
 クーパー中尉は、幼少の時に戻ったかのように目を輝かせながら語った。
「どうしてトリマーの夢を諦めたんだ?」
 クーパー中尉は、そんな魅力ある職業を諦める理由がわからなかった。
「病気になった動物を見てられないから」
 ミサキ中尉は、情けなく答えた。
クーパー中尉は、ミサキ中尉の言っている意味がわからなかった。
「トリマーは、別に見た目だけを気にしていればいいんじゃなくて動物たちの健康面とかにも気を配らなければならないんです」
 ミサキ中尉は、トリマーの現実を語った。
「外面を健康に保つには、内面から健康に保つのが必要だからな」
 クーパー中尉は、感覚的に理解できた。
「具合が悪い犬を一度見たことがあるんですが悲しくて泣いちゃったんです。
それで『何でこんなになるまで放っておいたの、バカ』って暴言を吐いちゃったんです」
 ミサキ中尉は、恥ずかしそうに告白した。
そこでクーパー中尉は、理解できた。
いちいち体調の悪い動物が来るたび泣いて暴言を言う人材など不必要である。
だから自分から夢を諦めたんだ。
「そんなことがあたのか?」
 クーパー中尉は、ミサキ中尉が職業訓練か何かでそんなことがあったのかと思った。
「テレビのトリマー特集です」
 ミサキ中尉が何でそんなことがあったのか答えた。
クーパー中尉は、予想外の答えに少し驚いた。
「それを見て諦めようと思ったんです。
動物の辛そうなところを見たくないから。
情けないですよね」
 ミサキ中尉は、その時の場面を思い出したのか目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「いっそ獣医になって病気の動物たちを治すっていう位じゃないと駄目なんです」