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機動戦士ガンダムRS 第44話 たましいの場所

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「それどころじゃないんだ。
これを見てくれ」
 シーサー少尉は、そういうとスティーブ少尉に雑誌を見せた。
それは、誕生日で占いを当てるという何とも嘘しか書かれていなさそうな雑誌だった。
当然スティーブ少尉は、見た瞬間に懐疑的になった。
「おいおい、どこを見てるんだよ。
ここだ、ここ。
俺の運命の相手のところだよ」
 シーサー少尉は、あきれ半分でスティーブ少尉に見せたいところを教えた。
「『あなたの結婚運は、最強です。
30代でセクシーブロンド系と電撃を結婚するでしょう』か」
 確かにシーサー少尉の興奮理由は、わからないでもない。
シーサー少尉は、20代後半である。
すなわちこれに書かれていることが事実ならばもう少しでセクシーブロンド系と電撃結婚できるかもしれないのだ。
「どうだ?
すごいだろ、スティーブ。
悔しいか?」
 興奮してるシーサー少尉とは、真逆でスティーブ少尉は冷静だった。
「いいんだぞ、素直に羨ましがっても」
 シーサー少尉は、勝ち誇ったようにスティーブ少尉に語る。
その時スティーブ少尉は、ある異変に気付いた。
「どうした?
驚きの結果に何も言えないのか?」
 シーサー少尉は、そんなことなど微塵も気づかずスティーブ少尉を心配した。
「あのさ、これ一段ずれてるんじゃないか?」
 スティーブ少尉は、冷静にシーサー少尉に指摘した。
そういわれてシーサー少尉は、覗き込むように改めて雑誌を見た。
「ほら、指でたどっていくとシーサー少尉は、こっちの数字が結果になるだろ」
 スティーブ少尉の言葉にシーサー少尉は、何も言えなかった。
「だから本当の結果は、この『60代のシルバーお見合いで燃えるような恋に出会うでしょう』だろ?」
 しばらくシーサー少尉は、思考が停止したように微動だにしなかった。
そしてリクリエーション全体にこだまするほどの大絶叫と共にシーサー少尉は、再起動を果たした。

       ※

 エターナルのモビルスーツデッキでは、フリーダムガンダムの修理が最優先で行われていた。
「シナプスが焼けるぞ。
蓄熱剤の交換急げ」
 整備兵たちは、猫の手がほしいほど忙しかった。
 アスラン中佐は、パイロット待機室のソファにキラを座らせた。
そしてヘルメットを脱いだ。
「キラ、大丈夫か?」
 アスランは、キラに大丈夫か確認した。
「うん、大丈夫。
でもごめん」
 キラは、大丈夫というが大丈夫ではないのは火を見るより明らかだった。
そんなキラの姿をアスランは、やりきれない思いで見ていた。
そこにラクスが来た。
「キラ」
 一瞬躊躇したがラクスは、パイロット待機室に入りキラの許へ来た。
「キラ」
 その姿がフレイに重なった。
「ごめん」
 一番迷惑をかけたという自責の念に襲われキラは、気絶した。
「キラ」
 アスランは、キラに呼びかけたが返事はなかった。

       ※

 フレイ少尉は、ラミアス艦長に呼び出されており艦長室前に来た。
「フレイ・アルスター少尉、入ります」
 フレイ少尉は、敬礼しながら名前を言って入室した。
「え?
そう分かったわ」
 ラミアス艦長は、電話中だった。
フレイ少尉は、外で待ってようとしたがラミアス艦長は中で待っているように椅子を指さした。
フレイ少尉は、指示通り椅子に座った。
「ええ、みんな疲れていると思うけど。
ええ。
そう、じゃあ願いね」
 ラミアス艦長は、電話を切った。
「キラ君が倒れたそうよ」
 その言葉にフレイ少尉は、驚いた。
「戦闘で負傷したわけではないということだけど」
 ラミアス艦長は、そういってフレイ少尉を安心させた。
「ごめんなさい。
本来ならあなたにも休んでほしいんだけど」
 ラミアス艦長は、本当に申し訳ないのか本題が言い出せなかった。
しかしフレイ少尉は、大体なぜ自分が呼び出されたのかわかっていたので自分から本題を言おうとした。
「私の祖父は、傲慢で横暴で疑り深くて私が幼い頃に死んだんですけどそんな印象しかありません」
 ラミアス艦長は、フレイ少尉の話をまっすぐ聞いていた。
「ですが信じられますか、こんなこと?
どうして・・・こんな・・・」
 フレイ少尉の頭の中であのパイロット言葉が脳裏に焼き付いていた。
フレイ少尉は、泣きそうな声になってまでも続けた。
「おまけに失敗作?
テロメアが短くて老化が早いって・・・何よ、それ」
 とうとうフレイ少尉は、泣き出してしまった。
「あなたのせいではないのよ、アルスター少尉」
 ラミアス艦長は、フレイ少尉を優しくなでた。
「あの人には、過去も未来ももしかしたら自分すらないんです」
 フレイ少尉は、敵パイロットを分析した。
(間もなく最後の扉が開く。
そしてこの世界は、終わる。
果てしなき欲望の世界は)
 フレイ少尉の脳裏にこびりついた言葉の中で一番印象深かったのは、この言葉だった。
「だから世界を道連れにすると?」
 ラミアス艦長は、敵パイロットの行動を分析した。
「本当は、私の役割だったんですけど」
 フレイ少尉は、敵パイロットを殺せなかったことに罪悪感を感じていた。
「誰が止めようと同じよ。
あなたがやるべきことだったのは、友軍を助けること。
あなたは、その役目を十分果たしたわ。
上出来よ」
 ラミアス艦長は、そういうとフレイ少尉を優しく抱きしめた。

      ※

 サウス中尉は、マーネリー軍曹に廊下で呼び止められた。
「もう少しでシグマン大尉の誕生日なのでプレゼントを贈りたいのですが男性は、どういうプレゼントを贈られるとうれしいのかよくわからなくて」
 マーネリー軍曹にシグマン大尉へのプレゼントを相談されたサウス中尉は、しばらく考えた。
「そうだな。
万年筆、腕時計やネクタイはどうかな?」
 サウス中尉は、シグマン大尉へのプレゼントを考えたが完全に今自分がほしいプレゼントを言ってしまった。
マーネリー軍曹は、サウス中尉が言った品をメモした。
「どうかな?」
 明らかに候補に挙がった品の種類が少なくサウス中尉は、大丈夫か不安だった。
「大丈夫です。
情報を教えていただきありがとうございます」
 マーネリー軍曹は、サウス中尉にお礼をいうと去って行った。


      ※

 エターナルの士官室で気絶したキラ大尉がベッドで寝ていた。
そこには、事態を聞きつけたカガリもいた。
キラが目を覚ました。
「キラ」
 ラクスがキラに呼びかけ顔を見た。
一瞬キラには、ラクスの姿が迫ってくるユーピテルツヴァイに見えて目をつむったが改めてみるとラクスだった。
カガリは、遠目からその姿を見た。
キラは、深呼吸すると体を起こそうとしたがラクスに止められた。
「ごめん、大丈夫」
 キラは、ラクスに感謝した。
「キラ」
 カガリもキラを心配するように呼んだ。
「ごめん、ありがとう」
 キラは、カガリに感謝したがキラが疲弊しているのは誰の目にも明らかだった。
それを見たアスランは、カガリを引っ張って部屋を出た。
「何するんだよ」
 カガリは、アスランの行動に文句を言った。
「今は、ちょっと待ってやれよ。
今のあいつは、ボロボロだ」
 アスランの言葉にカガリも納得した。

      ※