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綾瀬しずか
綾瀬しずか
novelistID. 52855
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あゆと当麻~真夏のファントム後編~

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「古今和歌集か?」
当麻が出典を明らかにしてしまう。
ばれた亜由美の顔は真っ赤になっている。
「ナスティ。どういう意味だかわかる?」
伸が問う。
ええ、とナスティがうれしそうに答える。
「あなたのことを深く思うけれど、私の身は二つに分けることができないので、目には見えない心だけを、連れ添わせていっしょに行かせることであるよ。という意味なの。私のことを心から心配してくれたのね。ありがとう」
まともにばれてしまってばつが悪くなった亜由美は照れ隠しにふん、とそっぽを向く。
「へぇ。心をねぇー。いいなぁ。僕もそのお守り欲しい」
伸がいう。
「何? それなら俺が先だ」
当麻が優先権を明らかにして言う。
「当麻と伸が持っていて私にくれないと言うことはないだろうな」
征士も言う。
「必要性がないから作りませんっ」
きっぱり断られて男三人が抗議の声をあげる。
「作らないと言ったら作りませんっ」
ぷぅっと頬を膨らませた亜由美の頬を当麻がつつく。
「この間、ソフトおごってやったよなぁ。二つも。しかもナスティに心を添わせて、この俺にないのはどういうことかなぁ?」
亜由美の顔がひきつる。
「何よっ。脅迫する気?」
当麻と伸、征士が亜由美をじぃぃぃっと見る。
「わかった。わかりました。つくればいいんでしょう? 作ればっ。効果のほどは知りませんからねっ」
根負けした亜由美が半ば叫ぶように答えると、三人はにやっと笑いあった。中身はとっくに知れていたのだ。
ナスティから聞き出した三人が計ったのだとすぐにわかった。

うっ。はめられたっ。
思うも後の祭であった。

新幹線はちゃくちゃくと東京に向かっていた。