あゆと当麻~Memory~
その言葉に亜由美は驚く。なんとなくきょろきょろ見渡してから恥ずかしそうに頷く。
当麻が顔を上げさせ、羽が触れるように軽く唇を重ねる。
そしてゆっくり離す。
亜由美のまぶたがゆるゆると開いたかと思うと当麻の首に手を絡ませていた。
「そんな子供だましのキスで満足する気? それとも子猫ちゃんは襲う気になれない?」
二人きりの秘密の会話が話に出てきて当麻がはっとする。
「おまっ・・・。思い出したのか?」
良く見ると亜由美の表情が違う。どこか繊細で華奢な感じがいつものどこか不敵なそれでいてどこか無邪気なアンバランスな感じに戻っている。
「今のキスでね。王子様のキスでお姫様は目覚めるのよ」
がくー、と当麻が脱力する。
キスひとつで元に戻るなら、とっととすればよかった、と一人ごちる。
「で、それで本当に満足なの?」
もう一度亜由美が問う。
いや、と不敵な笑みを浮かべて当麻は答えた。
「俺を悩ませてくれた借りはきちんと返してもらう」
当麻は頤に手をかけると熱のこもったキスを何度も繰り返した。
FIN
作品名:あゆと当麻~Memory~ 作家名:綾瀬しずか