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男性死神協会の悲劇

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季節は冬。
尸魂界では、暦の上で冬となったことを記念して開催される『立冬祭』の準備に追われていた。
この『立冬祭』は団体参加が必須であるが、参加者の階級を問わないために一般隊士たちからの絶大なる支持を得ている。彼らにとってこの祭は一種の自己アピールとなるのだ。
だが、それだけには収まらず、この祭に団体
の命運を賭ける者達もいた--

七番隊隊舎 応接室
「えー、これよりィ、男性死神協会の定例会を始める!」
「「「押忍!」」」
七番隊副隊長改め、男性死神協会会長の射場鉄左衛門の声が響き渡る。
この日は協会員のうち、吉良イヅル・阿散井恋次・檜佐木修兵の三名が参加していた。
「…………」
例によって会を進行しようとしない射場に代わって檜佐木が司会進行を買って出た。
「本日の議題は、きたる『立冬祭』についてです……じゃけえ」
「使えもせんのに広島弁使うな、ボケ!」
檜佐木は非情にも、射場に殴られた。
見かねた吉良が続ける。
「尸魂界ではもうすぐ立冬祭が開催されます。そこで、これを契機に男性死神協会の知名度を上げて会員を増やし、女性死神協会を見返してやろう、と射場さ……コホン、会長はお考えなのです。」
恋次が言った。
「へぇ……要するに、立冬祭でオレたちが出し物をするってことか。」
「簡単に言うとそういうことだね。」
「だからか……」
恋次は持ってきた書類を見ながらウンウンうなずいた。
「阿散井くん、それは?」
「ああ、これは……」
「おお!阿散井、ようやった!」
恋次が答える前に射場が飛びついた。
「これでワシらも出場できる……女性死神協会なんぞ相手やのうなるんじゃ……これからは大手を振って外を歩けるんじゃ……!!」
射場は恋次から書類をひったくると、しきりにつぶやいた。
「あの……射場、さん…?」
事情が飲み込めないが、射場の異様な雰囲気に圧された吉良が恐る恐る尋ねた。
「それは一体……」
「六番隊から七番隊への臨時寄付書だ。」
射場の横暴な制裁から復活した檜佐木が代わりに答えた。
「寄付書?」
「六番隊の隊費の一部を七番隊に寄付するっていう書類だよ。要は立冬祭資金だ。」
「はあ……でも、なんで寄付なんか……」
「立冬祭に出るということは諸々資金が必要だろう?これに向けた積み立てや隊からの助成金が出る一般隊士とは違って、オレたちは積み立てもなければ、非公認団体ってことで助成金もおりないし、全額自腹でやらなきゃいけないんだよ。」
「ぜ、全額自腹!?」
吉良は驚いて言った。
「当然そんな金はない。だからといって諦めるわけにもいかない。だから射場さんは朽木隊長に泣きついたんだ。ほら、あの人会計係だしな。」
「ま、実際にお願いしたのはオレだけどな。」
恋次も説明した。
「正確に言うと、ウチの隊の金じゃなくて隊長のポケットマネーなんだけどな。『このような催しに公費は使えない』って言って、立冬祭資金分を朽木家から出して、それを六番隊隊費に計上してから回してもらったんだ。ギリギリだったけど、どうにか間に合ったぜ。」
「…………」
吉良は頭を抱えた。
(四大貴族の私有金を『隊費』に計上する方がよっぽどマズイんじゃ……というか、そもそもこんなことに使っていいのか……?)
そんな吉良をよそに射場が言う。
「これで何の心配もいらん!あとはワシらの『漢』を存分に見せつけるだけじゃあ!!」
「「押忍!」」
檜佐木と恋次があとに続く。
「あ、そうだ。」
ふと恋次が言った。
「場所とり、やった方がよくないっスか?ブースって先着順だったはずですし。」
「ほうじゃのう……誰かおらんかのう?」
沈黙が流れる。
おもむろに恋次が拳を差し出した。
「じゃあ、ここは現世にならって『アレ』でいきましょう。」
「オウ!」
「「押忍!」」
『じゃーんけーん……ぽん!!』


「ったく、ツイてねえなあ……」
恋次は毒づきながら参加証片手に荷物を運んでいた。定例会最後のジャンケンで『セオリー通り』一人負けした彼は、立冬祭当日までの場所とりを任されたのだ。
「しっかし……空いてる場所なんてあんのかよ?」
恋次は会場を見渡して言った。
会場は隊士たちで溢れ、それぞれ獲得した場所に参加証を貼り付けて準備に追われている。
(そりゃそうだよな。立冬祭まであと2日……今更こんな時期から場所とりをする奴なんていな……)
「ん?」
恋次の目にひとつのブースが飛び込んできた。そのブースは無人で、中央にボロボロの座布団が置かれているだけだったのだ。
恋次はそのブースに入り、座布団を手にすると言った。
「これで場所とりしたつもりかよ……てか参加証も貼ってねえし。」
恋次は迷うことなくその場に荷物を置き、参加証を貼ると、持ってきた椅子に腰かけた。
「あーあ、暇だぜ……ったく……」
恋次は大きな欠伸をした。

立冬祭当日
男性死神協会の面々は、恋次がおさえたブースで準備をしていた。
射場が感心して言う。
「ようこんな場所がとれたのう……」
恋次は頬を掻きながら言った。
「ええ、まあ。ここだけ空いてたんで、ちょちょいっと滑り込ん……」

『あーー、ちょっと!!!』

突然、大声が響いた。
一同が驚いていると、そこに松本乱菊と伊勢七緒の二人が駆けてきた。少し後方に砕蜂が荷物を運んでいるのが確認できる。
声の主、乱菊が側にいた檜佐木の胸ぐらを掴んで言った。
「ちょっと、何してんのよ!ここはウチ(女性死神協会)の会長がおさえたブースよ!?」
「え!?い、いや、オレに言われても……」
困惑しつつ檜佐木が言う。
慌てて恋次が言った。
「オレが一昨日ここをおさえた時には草鹿はいなかったっスよ!?それから今日まではオレがずっとここにいましたし……」
すると、横にいた七緒が反撃に出た。
「会長は確か座布団を置いてここを陣取られていたばすです!それが無いということは、それを押し退けて陣取ったんですねッ!非常識ですッ!」
「ちょっと待ってください。」
吉良が言った。
「阿散井くん。君がここをとった時、参加証は貼られていたかい?」
「い、いや。無かったぜ。だからここをとれたんだ。」
吉良は恋次の言葉を聞くと、乱菊たちに言った。
「ということは、あなた方は参加証も貼らず、荷物も置かなければ当日までの待機も行わないで今日を迎えた、ということですよね?」
二人は苦い顔をした。
吉良が続ける。
「こちらは二日前から参加証を貼って陣取り、当日まで待機して今日こうして準備しています。このブースの使用権利はこちらにある。使わせてもらいますよ。」
「くっ……!」
二人の悔しそうな顔を尻目に吉良は準備に戻ろうとした。

「--縛道の四、這縄--」

吉良の足は止められた。
放ったのは、七緒だった。
「渡しません……この場所は、会長をなだめすかして五日前から取ってたんです……この日のために理事長も協力してくださったんです……ムダにはしませんよ……!」
「ちょ、ちょっと待っ……!」
作品名:男性死神協会の悲劇 作家名:りさやん